フォレスタ 流浪の民 HD
53年前、私は京都の高校から金沢の高校に移った。
そこは金石という古い港町で、同級生の「たっち
ゃん」がいた。
たっちゃんの家は材木を商っていた。
台所に「掘り抜き」といって、水が絶えず湧いていた。
叔母さんの付き合いでたっちゃんの家へよく遊びに行
った。
高校は合唱の名門校で、なかで「たっちゃん」は美しい
声の持ち主で、ソプラノだった。
いま、BS日テレでFORESTAが「流浪の民」を歌
っている。
「ぶなの森の葉がくれにー」
シューマンが作った曲で、歌の内容が
古い日本語だが、描写が素晴らしい。何人かのソプラ
ノが歌い継ぐ。トップにたっちゃんが歌っていた。
この曲を聞くとたっちゃんが出てくる。
たっちゃんは10年ほど前に亡くなった。
北国の冬は長く厳しい。びゅうびゅう鳴る風とどしんと
海岸をたたく波。その中に、たっちゃんが歌っている。
「めぐし(愛)おとーめ(乙女)まい(舞)いいで
つ…」
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