庭のカタクリが、可憐な花を咲かせました。
うつむく花びらのたたずまいに、その気品ある紫の色合いに 心が惹かれてしまいます。太陽に向かって花開くタンポポやヒマワリも大好きですが、うつむきながら咲く 清楚な あの姿に、この上なく魅了されてしまいます。
カタクリは 群落をつくって咲く花で、一面に咲きそろうと 紫のじゅうたんのように見えます。林の中の木々が新緑のときを迎える前に、降り注ぐ陽光を一身に浴びて咲く姿は、太陽がこぼれ落ちて 紫の光を放っているようにさえ見えます。ここにも そこにも 目をやれば、いろんな場所で 群れをなして 咲いているのですから。
それなのに、なぜか その中の一輪の花に 心を奪われてしまいます。ひとつがみんなで みんながひとつなのか…… 。群れて咲きながら、一つ一つのたたずまいに目が向いてしまうからでしょうか。
同じ花なのに 一つ一つが異なって見えてしまうのです。人間という言葉でくくることのできない 一人ひとりの個性や命の輝き、その存在の重さを感じるのと同じような 感覚を抱くからでしょうか。
その色ではなく うつむいて咲く その姿に、愛しさを感じるからでしょうか。
春という季節を体感しながら 目の前の一輪のカタクリに 見とれてしまいます。