あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

演劇「王女メディア」を観て

2016-02-07 18:07:33 | 日記
平 幹二朗 主演の演劇「王女メディア」を観てきました。
王女役をどう演じるのか、楽しみにしていたのですが、期待に違わず迫力ある情念に満ちた
王女メディアを演じていました。
平さんは、調べてみると1933年11月21日生まれということですから、もう83歳に
なられるのですが、さすが名優ですね。
38年前の初演以来、今も「身体の中に王女メディアが棲みついている」と語るほど、怪しく
猛々しく感情が揺れ動く魔女のような 存在感のあるメディアでした。
よく通る声とその演技からは、年齢や性別を越えた迫力とパワーも感じ取ることができました。

あらすじをパンフレットから引用して紹介します。

コリントスのある屋敷から聞こえてくる女の嘆く声。
かって黒海沿岸の国ヨルキスの王女メディアは、ギリシアのイオルコスからやってきたイアーソンと
恋に落ちた。イアーソンが金羊毛を手に入れるために力を貸したメディアは父を棄て、故郷を棄て、
共にイオルコスへ向かったのだった。そして、イアーソンから王位を奪った領主を殺害し、コリント
スへと逃れてきたのだった。
けれども、今イアーソンは保身のため、コリントスの国王クレオンの娘を妻に迎えることを決めてし
まった。クレオンは、メディアとその二人の息子に国を出て行くよう命令を下す。不実をなじるメデ
ィアにイアーソンは、子どもたちの将来のためを思って新しい縁組を承知したと言い張るのだった。
メディアは、自らの運命を嘆き、呪い、復讐を決意する。

このメディアの絶望と怨念に満ちた狂気のような心の内がひしひしと伝わってきました。
父や故郷を棄て愛する夫を支えてきたのに、その夫が自らの保身のために、妻である自分と二人の
息子を棄てようとしているのですから。
迷いながらも夫の仕打ちに対する激しい怒りが勝り、復讐を果たす(クレオンとその娘の命を奪う)こと
になるのですが、二人の息子を手にかける場面では母としての痛々しい苦悩も伝わってきました。
夫の裏切りに対する復讐の結果が、自らが背負う心の痛みともなってしまったのです。

守ってくれると約束した隣国の大守のもとへメディアは一人で旅立つことになるのですが、果たして
その痛みを抱えて幸せになれるのでしょうか。
心の内にある暗黒の部分を垣間見たような 人間の抱える業の深さや激しさを感じさせる演劇でした。

最後の登場人物のセリフが、心に残ります。

この世の中の出来事は、ことごとく大空の神々がたに司られてある。神々がたのなしたまうみわざは
人間の慮(おもわんばか)りを越えている。思うことは成しとげられず、思わぬことがかえってかなう。
ここに見てきたてんまつこそ、いちばんよい例しではあるまいか。

人間の心の内に陰と陽の世界があるとするなら、「王女メディア」は陰を象徴し、映画「オデッセイ」は
陽を象徴する作品なのかもしれません。
陰があるからこそ 陽の輝きは増し、救いとなって心の内を照らすのかもしれないと思います。

コメント
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