ウクライナ東部のロシア軍占領地区で起きていること。占領下のウクライナ人が、非常に辛い選択を迫られているとのニュースが、NHKが報じています。その選択とは、
「ロシア軍の兵士として戦うか? それとも死を選ぶか?」
ウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」は、自ら独立を宣言して、ロシアもそれを承認した地域ですから、ロシアからすれば、ウクライナの圧政から解放した地域であり、そこに住む国民に対して、ロシア軍に加わるよう促すのは、自然な流れであります。もともと、ロシアに開放を願っていたロシア系市民であれば抵抗がない話ではありますが、そうではない、普通のウクライナ人にとっては、敵側の兵隊となって、同胞と殺し合いをしなけれればならないという、究極の悲劇であります。もし、拒絶すれば、反逆者として処刑すると言われれば、皆さんだったら、どちらを選択するでしょうか?
実は、こうした事態は、過去の戦争の歴史を振り返ると、けして珍しいことではなく、特に欧州では当たり前に発生していた悲劇でした。ナチスドイツに併合されたオーストリア人も当然ながら、ナチスの軍服を着てナチス軍として戦わされました。ナチスに占領されたポーランド、チェコ、ブルガリア、そしてウクライナの人々も、ナチスに徴兵されてナチス軍としてロシア軍と戦い、ロシア兵と殺し合いをさせられたのです。
それと同じ悲劇が、今またウクライナ東部で発生したのです。
ところで、先日、山東昭子参議院議長が「ウクライナの人々の戦う勇気に感動している」と述べたことに、多くのタレントやコメンテーターが批判をぶつけていました。自分は、個々人のイデオロギーに対して批判をする意志はありませんが、もし、我が国が他国から理不尽な攻撃を受けて、相手から占領される事態に陥った場合、「同様の悲劇が起こることを想定しなければならない」ことだけは、皆さんにお伝えしたいと思います。
すなわち、もしA国が突然攻めてきて、まず沖縄・九州が占領された場合、そこに住む日本人はA国に徴兵されて、四国・中国・関西を攻める時の最前線兵力とされてしまうということ。日本を攻めるのに、日本人の兵隊を最前線に配置して、日本人同士が殺し合う状態にされることになります。
そうなった時、「最初に攻められた時、ちゃんとA国と戦っておけばよかった‥」と思っても、後の祭りであるということ。
欧州の人々は、そうした悲劇を何百年と繰り返しているため、まず闘う意志を明確にします。最初に抵抗せずに占領されてしまえば、そのあとには、もっと酷い悲劇が待っていることを熟知しているので、最初から戦う覚悟が出来るのです。
欧州各国は、ウクライナ侵攻が起こる前に、あまりにノホホンと構えていた日本のことを「アメリカにしか占領されたことがない幸せな国」として、「占領下の真の悲劇」を頭の中で想像できない国、連想できない国と呆れていたことを思い出します。
少なくとも、山東昭子議長に対して批判を浴びせていたタレントやコメンテーターには、このような想像力が欠如していることは確かだと思います。