先々週、北米のリーディングサイヤーの歴史を眺めながら、いかにサンデーサイレンスという血脈が偉大なのかを、改めて思い知ったワタクシでした。そして、その偉大なサンデーサイレンスの血が殆ど存在しない北米競馬の今後は、本来あるべき歴史からズレた歴史を歩むのだろうな・・と、想像力を膨らますワタクシでもありました。
先々週の復習をいたしますと、北米リーディングサイヤーの歴史を眺めていると、4つのスピード血脈が繰り返し、繰り返し、北米のスピード競馬を支配してきたことが判ります。4つのスピード血脈とは、
①ナスルーラー ⇒ ボールドルーラー血脈
②ノーザンダンサーから多岐に広がる血脈
③ネイティブダンサー ⇒ レイズアネイティブ血脈
④ターントゥ ⇒ ヘイルトゥリーズン血脈
でありました。そのうち、④のターントゥ ⇒ ヘイルトゥリーズンの血脈だけが北米で弱まっていること、そしてそれはサンデーサイレンスが北米に残らなかったことが原因、というお話をさせて頂きました。
本日の主役は、そのサンデーサイレンスではなく、ネアルコであります。
ネアルコとは、1935年にイタリアで生まれた牡馬で、かの名伯楽フェデリコ・テシオが生産した名馬であります。その頃のイタリアは、主たる競馬の生産地とはほど遠く、競馬に関しては2等国・3等国の位置づけでありました。サラブレッドの生産頭数でも、イギリスやフランス、アイルランドといった競馬先進国とは雲泥の差でありましたが、天才テシオは、当時の競馬の中心地である英国の最強・最高の血統を取り入れることに余念がなく、高額な種付料もなんのその、積極的に最高のサラブレッドを創ることに注力したのです。
ネアルコの生産について、テシオは当初、英国の名種牡馬フェアウェイを配合しようとしたらしいですが、これが叶わず、全兄のファロスを選択。しかし、これが功を奏して、絶対的スピードに長けたファロスの血がネアルコによって開花します。ネアルコは現役時代14戦14勝で、イタリアダービーのほか、パリ大賞典、ミラノ大賞典の国際レースの勝利があります。
しかし、ネアルコの名声を高めたのは、現役時代の戦績以上に、種牡馬としてサイヤーラインを世界各国に伸ばし続けたこと。前述の北米の4つのスピード血脈で見ても、①のナスルーラーはネアルコの直子、②のノーザンダンサーと④のターントゥは直系の孫、③のネイティブダンサー ⇒ レイズアネイティブ血脈だけがネアルコの直系ではありませんが、この血脈のメインストリームであるミスタープロスペクターの母方は、ネアルコ⇒ナスルーラー⇒ナシュアという血脈でありますので、ネアルコがいなければ、この北米4大スピード血脈は生まれていなかったと言ってよいと思います。
この20世紀の北米4大スピード血脈が生まれていなかったということは、現在の世界の競馬は全く異なった姿であったということ。ネアルコがいかに偉大なサラブレッドであるかが、よくお判りになったと思います。(続く)