アートインプレッション

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「陶酔のパリ・モンマルトル1880-1910」講演会記録

2011-04-21 19:29:53 | 陶酔のパリ・モンマルトル
「モンマルトルのエスプリ:ユーモア、キャバレー、前衛」講演会記録

4月17日に伊丹市立美術館にて、「陶酔のパリ・モンマルトル1880-1910」展に関連した講演会が開かれました!


本展監修者フィリップ・デニス・ケイト氏による講演会の様子
写真提供、弊社スタッフ木村はるか


講師はニュージャージー州立大学付属ジェーン・ヴーヒーズ・ジマーリ美術館名誉館長を勤めるフィリップ・デニス・ケイト(Phillip Dennis Cate)氏。本展覧会の監修者です。
ケイト氏にはたくさんのスライドとともに、モンマルトルで沸き起こった前衛芸術や、「シャ・ノワール」に集まった芸術家たちの交友関係について語っていただきました。今回は、その中の一部をご紹介します。

そもそもモンマルトルに芸術家が集まるようになったのは、1860年にモンマルトルがパリ市に組みこまれたことがきっかけです。安い溜り場を求めて若い芸術家たちが定期的に集まり、カフェやキャバレーを賑わすようになりました。そんな中、ひときわ目立っていたのが「イドロパット」と呼ばれる前衛芸術家集団です。イドロパットは「フュミズム(冗談好き、不真面目の意)」を活動のコンセプトに掲げつつ、当時の社会への痛烈な風刺をこめた雑誌を隔月で発行していました。
そのリーダーであるエミール・グドーと後の「シャ・ノワール」のオーナーで、当時売れない画家であったロドルフ・サリスが意気投合したことから、イドロ・パッドの面々が続々と左岸からモンマルトルへ移り、「シャ・ノワール」開店にこぎつけたのです。

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ケイト氏講演会のスライドより、「シャ・ノワール」店内の様子
写真提供、弊社スタッフ木村はるか


ロートレックやスタンランをはじめ、新進気鋭の芸術家たちの溜り場として連夜賑わった「シャ・ノワール」。その中でも特に大きな人気を誇ったのが影絵芝居でした。

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ケイト氏講演会のスライドより、影絵芝居の舞台裏。右の写真は画家アンリ・リヴィエール
写真提供、弊社スタッフ木村はるか


影絵芝居はやがて「シャ・ノワール」以外にも「作品座」や「芸術劇場」など、パリ各地に広まって芸術家の腕の見せ所となっていきます。こうした芸術家がやがてボナールやゴーガンに代表されるナビ派を形成し、あるいはシュルレアリスムへと繋がり、後の芸術の大きな礎を築いていったのでした。

講演会を聴講して、この時代が喧噪の渦の中から新しい芸術が続々と生まれては消えていった時代であることを改めて実感しました。影絵劇場の再現コーナーや上映資料、機関誌の展示など、当時の大衆芸術を横断的に捉える様々な作品を通して、皆さまも是非当時の新たな側面を発見してみて下さい。


伊丹市立美術館では、6月5日(日)まで、陶酔のパリ・モンマルトル1880-1910展を開催しています。