駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

痩せ肥満問題、政治家のような返事では

2016年10月03日 | 小考

              

  今日は十月三日というのに、雨模様で蒸し暑い。台風18号が沖縄から本土に向かう予想が出ている。一昨日来いと言いたい。

 今やメタボは人口に膾炙し、患者の方が医者の機先を制して反省言い訳に使うようになっている。わかりやすい内容覚えやすい表現で一般人に浸透したので、メタボリックシンドロームという病態の把握は有効有用であったと思われる。唯、コマーシャリズムによる健康志向ブームに利用されている側面も大きく、地道で継続する生活習慣の改善はまだまだ不十分と感ずる。それに学問の常だがいわゆるメタボも解析研究が進むと細分化され内容にも変化が生じ十羽一絡げとはいかなくなり、ちょいデブもその内容が問われ始めている。

 臨床の最前線では肥満と同じように羸痩(痩せ)も大きな問題で、高齢者やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の痩せの対応に難渋している。実は痩せている人よりも平均から僅かに太り気味の人の方が長生きで、還暦過ぎての痩せっぽちが良いとは言えない(これは統計的な話で、なぜ少し太り気味が良いかはまだ十分にわかっていない)。残念ながらこの痩せに対する治療法はまだまだ不十分で、良い処方箋がない。我慢するよりも無理に食べる方が難しいのだ。

 先日、肥満学会の中堅医師と話をする機会があったので、前線の臨床では肥満だけでなく羸痩も大きな問題なんですと苦情?を言ったところ、羸痩は栄養学会ですね、肥満学会と栄養学会は仲が良くないんです、ハハハと話を逸らされてしまい、憮然としたことがある。

 どうも肥満と痩せは、素人にもわかりやすく?、百家争鳴に商売が絡んで地道な本筋が見えにくくなってしまう。正直なところ学者も研究費が取りやすいように、素人受け(厚労省向け)するように脚色している節もある。 

 ちょいと飛躍するが、富の再配分は不可能でもカロリーの再配分は可能な気がする。日本の巷でどれだけ多くの食べ残しが捨てられていることだろう。核廃絶を唱えてノーベル平和賞が貰えるなら、カロリー再配分を推し進めればノーベル健康賞が肥満大国と飢餓に苦しむ国から貰えるだろう。

コメント
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