駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

灰色に映る真実

2022年11月25日 | 小考

              

 あと数日で師走、朝夕寒くなったが日中は日差しがあるとまだ暖かい。今朝の空は青く、歩道には黄色い銀杏の葉が散らばっていた。秋を味わう暇もなく冬がやってくる。

 この頃、夜明けに小便に起きるようになった。ああそれ普通ですよと、患者さんにいう言葉を自分に返さねばならない。有難いことに、小便に起きてもまたすぐ眠れる。

 絵を描くせいでもないだろうが、灰色の大切さというか重要さを感じている。グラデイションの背後には灰色がある。真実は間にあるという恩師の言葉を思い出す。聞いた時はそんなものかなという程度で、あまりよくわからなかったが、年を取ってだんだんその言葉の重みが理解できてきた。

 二十一世紀になり二十年、ますます情報が溢れ、表層の変化も目まぐるしくなった。残念ながら人間の脳味噌は科学技術の進歩についてゆけない。とにかく分かりたい人達はすぐ脈絡なく飛躍した黒白の結論に飛びついてしまう。脳の働きが複雑な事態に対応できず短絡してしまうのだ。絵を描いているとよく分かるのだが、テーブルに置かれた柿一個、林檎一個がいかに陰影に富んでいることか、黒白だけにしたら味わいどころか真実も消えてしまう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする