駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

分かった気持は

2014年04月15日 | 小考

                

 四月半ば、例年より少し遅れて咲いた桜も葉桜になった。「あっという間ですね」と患者さんと言い合っている。     

 やがて新緑の季節になるのだが、新緑を見ると中学校の恩師が「新緑を見ると猛烈に勉強したくなる」とおっしゃっていたのを思い出す。物理の先生で冗談の好きな楽しい先生だった。  

 春は若い生命が溢れてくる季節で、人間が自分も頑張ろうと感じるのは自然のようだが、実は精神に異常を来す人が多い季節でもある。

 物事は簡単ではない。 テレビの医学情報は前線医には脅威でみのもんたが居なくなってほっとしたのだが、まともそうなNHKのためしてガッテンも実はいろいろ問題がある。というのは医学、特に臨床医学では簡単にガッテンとはいかない現象事情が多いからだ。

 昨日も「私のフェリチンは大丈夫でしょうか」と高血圧で掛かられている中年女性に聞かれてびっくりしたのだが、特に症状も無く降圧剤を飲んでいるだけの患者さんでフェリチンが問題になることは極めて希だ。昔はゼアゼルテンと言って叱られはしないが退けられた答えだ。それにフェリチンを測定するには高血圧症以外の嘘の病名が必要になる。そうしたことはどの医者も少しはやっているが、やむを得ずで本当はやりたくない。  

 どうもためしてガッテンでフェリチンのことが放送されたらしい。フェリチンについては鉄の動態の研究から詳しく調べられ、かなりのことが解明されている。恐らく4/10程度のことが分かってきていると思う。十年もすれば41/100くらいのことが分かってくるだろう。二十年もすれば420/1000位のことが分かるだろう。鉄欠乏があるとフェリチンは低値となるが、いろいろ組み合わせて病態は解釈しなければならない。それに足りないからといって、鉄分の補給もほどほどにしないと多ければ良いというものではない。    

 人間は分かりたい動物のようで、ガッテンが好きだけれども、そうは問屋が卸さない。ガッテン分かったは分かった気がするというのが大部分だろう。誤解を恐れず言えば、科学は誰もが分かるほど易しくない。それに分かるとは何かと言い出せば分厚い本が書ける。残念ながらたぶんそれを読んでもよく分からないだろう。    

 ためしてガッテンのガッテンはより知識経験のある人複数に聞いて再調整して戴きたい。   

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