昔からそうだったのではない気がするが、この数年私の手はこの時期に冷たくなる。患者さんを触診する時、冷たくて申し訳ありませんと断らねばならない。
「いいえ」と普通の患者さんは良いのだが、「こら、冷たい」と撥ね除ける認知症の婆さんの場合は苦労する。はっきり言って診察にならない。
実は家内の手も冷たいので、最近は滅多に握ることもないのだが余り困らない。出会った頃はお互い温かい手をしていたような気がする。年を取って血流が悪くなったのであろうか。この分だと脳の方の血流も大分悪くなっていそうだ。
この頃、植物男子というか異性との接触に興味のない若い男性が増えているようなことが書いてある。元若者の私には理解出来ない感覚だが、なんだか淋しい世界のような気がする。触れあう指先に電気が走るなどという現象は昔の物語になりつつあるのだろうか。悩まされた情動だが、それはあらゆるものを生み出す力でもあったと思う。
夕方のニュースで、少子化対策に凍結卵子と報道されていた。老兵は何だか違うと呟きたくなる。