観葉植物を買ってきては、枯らしてきた。
なぜ枯れるのか分からなかった。
たっぷりと水はあげている。
植え替えた方がいいと聞き、大きめの鉢にも移した。
土が悪いのかもと、少し高価な土を選んだ。
全て花屋さんの言う通りに。
育て方は簡単、水をあげればいいだけだと聞いたのにダメだった。なぜか分からない。
私には植物を育てる才能はないのだと思い、買うのをやめては…やっぱり緑が欲しいと、思い出した頃にまた買ってきて、枯らした。
植物好きな祖父の影響からか、母も叔母も上手に植物を育てていた。
特に叔母は、祖父が育てた庭を改良して、イングリッシュガーデンを作り、京都の桂でカフェを開いた。
私はそこをしばらく手伝っていた時期があって、毎日植物に水をあげた。
季節ごとに変わる花と日差しが美しく、忘れられない時間。芝居にも書いたほど。
ある日、また枯らしてしまった植物をゴミ袋に入れようとして、根本の土がカラカラに乾いていることに気づいた。たっぷり水をあげているのに。
で、ようやく気づいた。
私はいつも、コップに水を汲んで鉢植えにあげていたけど、土の中まで水が染み込んでいなかったんだ。土の表面だけ濡らした水は、植木鉢の内側を伝って、下の穴から外へ流れていた。目にはじゅうぶん湿っているように見えていたのに。
こんなことに気づくのに、おそらく10年近くかかったと思う。
あの時、ハッとした瞬間を今でも覚えている。
もう枯らしたくないからと、検索サイトで調べた「鉢植えの育て方」には、「たっぷり水をあげる」としか書いていない。
「一見したところ、水をあげた風に見えるけど、中まで水分が染み込んでいるか、きちんと確認すること。植木鉢が小さければ小さいほど、水分が行き渡っているように見えます」とは、書いてない。
思い込みとはこわい。
水はあげている。植物を育てるのが苦手。
そんな思い込みで、ただ「水が染みてない」ことに気づくのに、10年かかったのだから。
知っていることと、理解することは全然違うんだなと、私はまた思い知る。
今では、鉢植えひとつひとつにたっぷりと水が行き渡るよう、少しずつゆっくりと水をあげるようにしている。「しとしと雨が降りそそぐ森」をイメージして。
で、最近ではこまごまと鉢植えが増えてしまった。
どうしよう。植え替えが大変。悩みの種だ。
だけどたっぷりと水をあげることを理解した私は、もう植物を枯らさない。