11月10日からの公演に向けて稽古をしている。
久しぶりの新作公演。
タイトルは「柔らかな澄んだ水ふかく」。
今回の作品のテーマは性暴力被害について。
10年以上前にも、同じテーマで作品を作ったことがあった。
それは女性被害者のコミュニティーについての物語で、楽しい…だけではない作品だった。
観客からも演者からもさまざまな感想をいただいた。
「見られてよかった」との意見もあれば、「辛くなった」と言う方も。
出演者の一人は「辛い物語を見たい人は少ないのでは?」と言っていたし、脚本を読んだ演劇関係者の中には、「演劇は娯楽であり意見の押し付けではない」というような感想もいただいた。
作品自体は賞をもらうことができたので、それなりに意義があったのかもしれないけれど、私はいろいろ考えた。
人を傷つける作品だったのかもしれないと感じ、演劇とは何だろうと考え、もっと楽しい作品を作るべきではないかと思い、それ以降、性暴力被害について書かなかった。
何より作品に気持ちを込めても、何も変わらないのだと感じた。
あれから10年がたった。
性暴力被害について社会の見方はずいぶん変わったと思う。
女性が声を上げ始めたMeToo運動、YouTube等で個人が自由に発信できるようになり、性暴力被害についても、以前より公に語られるようになった。
最近では自衛隊や芸能界での被害も問題になっている。
語られることはいいことだと思う。
語ることは考えること。
考えないと人は変わらない。
人が変わらないと社会も変わらない。
性暴力などない社会になればいいと思う。
性犯罪ほど加害者にリスクがなく、被害者に大きなダメージを与え、日常的で、誰しもが簡単に被害者に、加害者になり得てしまう犯罪は他にはないと思うからだ。
それほど身近な危険なのに、誰も語りたがらない、語れない、本当に特殊な犯罪。それは刑法改正に110年もかかったことにも表れていると思う。
だけど変わらなかった刑法が、2017年に改訂された。
弱者とされる多くの人々の声が届いたことは大きいことだと思う。
もしかして変わることができるのかもしれない。そんな思いでもう一度、性暴力についての物語を書こうと思った。
書くなら真正面から向き合わないと。
ドラマや映画で、犯罪の動機や結果などの一要素として、性暴力が安易に描かれることに違和感を感じていた。
結果とてもストレートな作品になったと思う。
そして、頼もしい俳優さんたちが集まってくださった。
性暴力被害のことなど普段ほとんど考えないだろうけど、「とても大切なことだし、きちんと伝えたい」と言って貰った。
でも不安は変わらない。10年前のさまざまな意見が頭によぎる。
だけど語ることはいいことなのだと、自分を奮い立たせている。
何も変わらなくても、自分が変われる作品を書きたいと思う。今回書けたかどうかわからないけど、一人のお客様でも、何かを受け取ってもらえたら嬉しいと思っている。
役者さんは皆さん頼もしくステキな方たちばかり。
おかげで大切な作品になったと思っています。
よろしければ足をお運びいただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
B.LET’S第20回公演
「柔らかな澄んだ水ふかく」
作・演出 滝本祥生
■出演
大田康太郎(B.LET’S)
いいづか康彦
石本径代
佐藤友佳子
末廣和也
田中涼
■日程 2022年11月10日(木)~13日(日)
10(木)15:00
11(金)14:00/ 19:00
12(土)14:00/18:00
13(日)14:00
■会場 studio ZAP!
(新宿区市谷台町4-2大鷹ビルB1F)
■料金
前売3800円
当日4000円
https://www.quartet-online.net/ticket/blets20
配信2800円
https://blets.stores.jp/items/6326ef82852d442125595666
■【ストーリー】
小さな動画制作会社に勤める仲本朝陽は、動画を作っては配信する毎日に疲弊していた。
いつものように話題に困り、近所の小さな公共ホールへ向かった彼女は、そこで行われていた「DVや虐待、性暴力に関する女性のためのシンポジウム」を取材する。そこで知り合った内藤という男性が語りだしたのは、自身が受けた幼少期の性被害について。明るみに出にくい子供の、そして男性の性被害の動画を作りたいと、朝陽は内藤に取材を申し入れるが――。2017年に110年ぶりに改訂された刑法性犯罪、身近な犯罪が被害者の、子供たちの心にどんな影響を及ぼすか考えて行きます。
■お問合せ
B.LET’S 090-1907-8034
blets1234567@gmail.com