B.LET'S 

「滝本Bログ」滝本祥生のブログです。B.LET'SのHP→http://blets.jimdo.com/

元禄光琳模様 2

2007-01-28 01:19:23 | Weblog
石本さんの芝居を見に行った。「元禄光琳模様」。
楽屋から出てきた、久しぶりに会う石本さんに、少し恥ずかしくなって「輝いていたよ……」と中年のおじさんみたいなことを言ってしまった。
でも本当に、舞台上での石本さんは大きく見えるし、役者さんは皆輝いて見える。そりゃ、たくさんライトがあたっているし、きれいな衣装を着ているからかもしれないけど、きっと何かが体から出ているのだ。アドレナリンとか? 流行のオーラとか?
そしてその中の一握りの人しか真ん中に立つことを許されないのだから、ダイレクトに厳しい世界だ。もちろん私のやっていることも同じで、ロビーに並ぶ大きな花輪の数々を前に、「いつか私達も……」なんて石本さんと苦笑した。
でも、このあいだ見た映画「リトル・ミス・サンシャイン」の中で、「負け犬とは挑戦できるのにしない人のことだ」というセリフがあってちょっと救われたし……救われている場合じゃないけど、そんな映画や芝居の中のセリフで癒されることもある。R.S.Cの「マクベス」を見た時もそうだった。「カイロ紫のバラ」の主人公が映画を見て微笑むラストシーンみたいに。映画やお芝居が現実の問題解決に向って背中を押してくれることもある。
そんなお芝居が書きたくて、シナリオをやっている、はずだ。

でもそれが、ホントに難しいことなんだナァ。

最初の授業

2007-01-26 00:57:43 | Weblog
今日からシナリオの学校が始まった。
今まで独学で書いてきて、今更学校へ通うことは果たして前向きなことなのだろうか……と考えつつ、でも足がかりとしては悪くないかも?と思い直して申し込んだ。
シナリオ学校なんて誰が行くねん!と思われるかも知れないが、扉を開けると100人近い大人たちが座っていた。それが三ヶ月に一回のペースで開講されている。やはり現実は厳しい。でもその中でシナリオを書いたことのある人は4,5人だった。多くの人々はちょっとした興味で集まったのかもしれない。しかし、みんな真剣そのものだ。
話を聞いてみるとやっぱり面白い!受けたくて受ける授業とはこんなにワクワクするのだろうか……学生時代いろんな授業を受けたし、子供の頃は連日習い事の過密スケジュールをこなしていたけど、全て挫折。唯一続いたのが自分で始めた演劇だった。
表現なんて、根本的には人に習う物ではないと思うけど、やはり一人では出来ないし、誰かに評価してもらえることはとてもありがたい。これからの授業もとても楽しみになった。
「学問に王道なし……つまり、コツコツということです」と講師の先生が言っていた。急に飛び上がれない私にも出来るスタイルかもしれない。


本当は今頃…

2007-01-20 23:24:40 | Weblog
私も忘れていたけれど半年前の予定では、昨日、今日、明日の三日間B.LET’Sの公演を行っているはずだった。前回公演を見てくださった方からの問い合わせの電話があり、思い出した。何とも嬉しく、申し訳ない気持ちになった。早く次の作品を見てもらいたいと改めて思う。
できればもっと多くの人に。
今頃になって、時々朝起きたらどこにいるのかわからなくなる。頭の中の断片的な景色と、目の前の景色が繋がらなくて一瞬混乱する。私は今どこにいるのだろう……?
今回の選択が正しかったのかどうかまだわからないけど、良かったことがあるとすれば、私自身前よりもずいぶん焦っているということだ。
すぐのんびりしてしまう私にとってこれは結構良い傾向だと思っている。

未完成交響曲

2007-01-16 15:31:17 | Weblog
「未完成ってわかりますか?」
居酒屋さんのカウンターで隣り合わせたおじいさんが聞いてきた。
シューベルトの第八番ロ短調の別称「未完成交響曲」。
「この曲終わらざる如く、我が恋もまだ終わらざるべし」
その中の詩だそうだ。シューベルトが亡くなる直前、第二章までしか書かれなかったため、この名前がついたらしい。

皆から「先生」と呼ばれるそのおじいさんは、たぶん80歳は過ぎているだろうか? 上品なグレーのコートにエンジのマフラー、グレーのニット帽をかぶり、焼酎のお湯割りをぐいぐい飲んでいた。
話していると、所々英語が交じるので「英語の先生ですか?」と聞くと、アジアの歴史の「先生」だそうだ。
突然店から出て行くと、森永のキャラメルを二箱買ってきてカウンターのお客さんに配りだした。私も三つ分けてもらった。「不二家」のキャラメルはやめておいたという。
伝票の切れ端に先生の名前を書いてもらうともの凄く達筆で、聞くところによると先生の本気の「字」は100万円くらいで売れるらしい。
私がキャラメルの包み紙を折り紙にして遊んでいると、隣の先生も真似して何か折りはじめた。でも手先が震えて思う様に小さな紙は形にならない。
諦めた先生の代わりに私が「鶴」を折ってあげると、大事そうに眼鏡ケースの中にしまった。
「人間も未完成な方がいい」小さな目をしょぼしょぼさせながら、先生はそうも言っていた。




元禄光琳模様

2007-01-13 01:56:38 | Weblog
数日前から石本さんが泊まりに来ている。
前回、前々回の公演にも出演してくれた京都を拠点に活躍中の女優さんで、今は「元禄光琳模様」というお芝居の稽古為に東京に滞在している。
かとうかず子さんや、太川陽介さん、岩崎良美さんらも出演する、大きな舞台だ。
寝起きを共にしてわかったけど、石本さんはあまりご飯を食べない。稽古が始まる前、東京へ来たばかりの頃は、「不安でご飯を食べられない」と言っていたし、稽古が始まってからは「ぼんやりしていて今日一日、ご飯を食べるのを忘れていた」と言う……私なんて、朝ごはんの後は昼ごはん、その後はすぐに晩ごはんのことを考えているのに。
私の半分も食べない上に、背中も私の半分くらい。
最近は、毎朝石本さんと一緒に出勤していた。
石本さんは稽古場へ、私は職場へ。
稽古初日、仕事へ向う私が、「今から稽古なんて羨ましい」と言うと、「そうですよね、幸せなことですよね……そう思わないと」と小さな背中で心細げに言っていた。
その稽古も明日で終わり。どうやら稽古は順調に進んでいるようで、日増しに表情も明るくなっている。「最初は捨て犬みたいな顔をしてた」と私が言うと、他人事みたいに笑い飛ばした。
本番が楽しみ。そして、また一緒にお芝居ができるといいな。


次回は新作を

2007-01-12 00:30:12 | Weblog
新しいシナリオを書いた。
まだ第二稿目だけど外枠は何とかなったはずで、ここまでできたらいろいろ思い付きをを足せばいいので、これからは楽しいはず。
でも〆切には間に合わなかった。
今までの作品の改訂版はすでに郵送したので安心し、新作の完成を諦めてしまった。そのことが悔しくて、情けなくて、机に向っていたら気付けば「おしまい」まで書いていた。
私は本当に集中力がなく、これはもう何をやるにも致命的じゃないかと思うくらい注意散漫だけど、そんな人間にも数時間で30ページ書く位の集中力はあるらしい、ただ、本気になるのがいつも遅い。
何を言っても私の甘さの言い訳にはならないけど。
とにかく、まだ完成しきってないとしても新作が書けた。何度も書き直し長くこの作品と付き合って行って、次の応募〆切には必ずこの作品を出そうと思う。


幸せな食卓

2007-01-05 01:34:35 | Weblog
今年の新年は山梨の親戚の家で迎えた。
一つ前の富士山の写真は、このお家の窓から撮ったものだ。
親戚といっても兄のお嫁さんのご実家で、私には直接的な「血の繋がり」みたいなものは無い。というか、私なんてかなり関係が無い存在かもしれない。
なのにお父さんは、名前を呼ぶときみんな同じ様に呼び捨てにする。
娘も、息子も、息子の嫁も、娘婿も、その妹も、みんな同じ。その距離感がとても心地いい。私もお父さんの事を「おじさん」ではなく「お父さん」と呼ぶ。
ひっきりなしに動き回るお母さんの隣で、皆にお酒を勧めるお父さん。テレビでは小林幸子が歌っている。食卓にはお母さんのお惣菜と、子供達それぞれが持ち寄った、それぞれの地方のご馳走が並んで、久しぶりに賑やかな食卓を囲んだ。ここ数年、自分の部屋で元旦を迎えていた私にとって、あんなお正月はもう何年ぶりだろう? 
そう……確か去年は実家へ帰らず木村さん(B.LET’Sの看板女優)と「ハリーポッター」を見に行ったのだ。しかも木村さんは前半で寝ていた。
まぁ、そんなことはどうでもいい。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
帰りのバスの時間が迫り、お母さんがバス停まで私を車で送ってくれた。慣れない東京生活へ戻る不安をポツリポツリ洩らす私に、
「外は柔らかく、でもココは強く。」そう言ったお母さんは、まっすぐ前を向いたまま、自分の胸をドンと叩いた。