写真はスタバで出会った犬、特に内容とは関係ありません。
朝にお皿を洗っていて、指を切ってしまった。
皿にヒビが入っていることに気づかずに、泡立てたスポンジで、ゴシゴシ洗ってしまったのだ。
大ざっぱな私は、ちょっとチンするだけならと、耐熱容器ではないお皿でも気にせず電子レンジに入れる。
「いけない」と聞いていたけど、ホントに割れるなんて知らなかった。
泡だった手元で、割れた感覚と鈍い痛み。「これはマズイ」と思ってすぐに洗剤を洗い流すと、案の定、流水が赤く染まる。
急いでキッチンペーパーでくるんだ。
切り口が思ったより大きく、「もしかして、病院で縫う感じのやつかも」と思う。
どうしよう…午後から朗読劇を撮影する企画の撮影下見に出かけるつもりだったのに。何より、病院へ行くのは面倒。
なんだか全てが嫌になり、心から落胆した。
とりあえず血を止めなくちゃとソファーに寝転がり、傷口を強く抑えて、胸より高く掲げる。
痛い箇所は心臓の位置より高くあげるようにと、6歳の頃に習った。
その時は、お友達のみほちゃんに押されて床へ手をつき、その拍子に手首にヒビが入った。
病院でシップ薬を貼ってもらったけど、まだ痛いと言うとギプスをしてくれた。
その夜は、珍しく父も早く帰ってきて、泣いてる私を抱きかかえて、痛い方の腕を支えてくれた。「痛いところを心臓より上にあげるといいよ」。
末っ子で甘えてばかりだった私は、ここぞとばかりに泣いた。痛さからか、心配する父へ甘えることを許可されたと思ったのか。
翌日、学校へ行った私は、ギプスを皆に注目され嬉しいような恥ずかしいような気持ちだった。
だけどみほちゃんはとても申し訳なさそうにしていた。
6歳の子供が、友達をケガさせてしまった時って、どんな気持ちなんだろう。
みほちゃんの気持ちを考えたことは、今まで一度もなかった。
ソファーに寝転びながら、みほちゃんと父のことを思い出した。
そんな父とも大人になるにつれ、あまり話さなくなった。あの時のことをかわいい父娘のエピソードみたいに思い浮かべるなんて私は都合がいい。
父はとっくに亡くなったし、もうこれくらいのことで私は泣かない。
少し、泣きたくはなったけど。
ようやく血が止まったので起き上がると、床には赤く染まったキッチンペーパーが散乱し、洗い掛けのコップや割れたお皿が洗い場に溜まっていて、ひどい状態だった。
ため息と同時に、急に「負けてはいられない」と思い、片手で洗って、片手でお化粧をして、病院ではなく撮影の下見に出かけた。自分の行動がシンプル過ぎてちょっと笑えた。
帰りに薬局で勧めてもらった万能な絆創膏を貼っていたら、切り傷は3日くらいで気にならなくなった。
あまりケガなどしないので知らなかったけど、医薬品ってすごく進化しているんだな。
病院へ行かなくてよかった。
そして、これからは電子レンジに入れる時は必ず耐熱容器を使おうと心に誓った。