今回の稽古は台風と縁があるみたいで、昨日は稽古2日目。
前回はキャスティングをしたので数ページだけだったけど、今回はとりあえずの箇所も含めた台本を役者さんにお渡しし、まだ全貌は見えないので戸惑っておられたけど、たぶん半分を過ぎたくらいだろうか。そこまでの読みあわせ。とにかく最後まで進まなくては。
皆さんの反応も気になりつつ、休憩時間にジュースを買おうと外へ出たら、煙草を吸う役者さん二人が嵐の中、暗闇で煙草を吸っていた。
どうして暗闇なのかというと、稽古をしている建物から少し離れた場所にいたので、室内の光が届いていなかったからだ。
稽古場は住宅街にあって周りには外灯もない。顔が見えないほど辺りは暗く、煙草の先の小さな炎だけが灯っては消える。
「建物の屋根の下で吸えば?」と聞くと、「敷地内では煙草を吸わないでくださいと書いてあったので、建物から少し離れてみた」と、傘をおさえる。
煙草を吸うくせに律儀だ。
「煙草を吸うくせに」というと誤解があるかも知れないけれど、私の中で煙草を吸うことは不良とか、悪いこと、というイメージが恥ずかしながら未だにある。
子供の頃、ウチでは誰も、父親も煙草を吸わなかったし、そのことをたぶん無意識で誇らしく思っていたのだと思う。子供の頃は今より、大人の男の人はみんなもっと煙草を吸っていた。
だけどあるお正月、夜中にトイレに起きたら両親が二人でテレビを見ていて、父親が煙草を吸っていた。
吸うというよりくゆらすと言う感じで、部屋に煙がフワーっと漂っていた。
父は煙草は吸わないけれど、煙草の煙のにおいが好きなのだそうだ。
私はただ驚いて、見てはいけないものを見た気がして、何か優しい言葉をかけられたけれど、逃げる様にベッドに戻った。
父がいつもと違う人に見えた気がした。
こんな事を思い出すのは、いま久しぶりに家族の話を書いているからかも知れない。
だけど暴風雨の暗闇の中で、世間話をするのはおもしろい体験だった。結局ジュースを買うことを忘れてしまった。