第二次世界大戦に出征する前日の、24歳の若者の一日を描いています。
好きな本を読み、母親の手料理を食べ、一緒に出征する友人を家に呼び、10歳の妹を学校へ迎えに行き、父親の第一次大戦に出征した時の想い出話を批判し、みんなで食事をし、友人とダブルデートに出かけ、深夜に自分の部屋にはいない妹へ自分の願いを一人で語り、最後にそれまで隠していた出征を母親が感づいていたことを知ります。
当時の日本とは出征通知の仕組みが違っているのか、本人以外は自分で言わない限りわからないようです(あるいは、志願兵なのかもしれません)。
戦争を思い出話にする父親を柔らかに批判し、取り乱すと思って隠していた母親が彼の帰還を固く信じて平静でいるのを知って幸福な気持ちになる所に、いかにも平和主義者ながらリアリストのサリンジャーの特長が良く表れています。
また、随所に「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(その記事を参照してください)の構想が、ここでもすでに現れています(主人公と妹の関係はホールデンとその妹フィービーとの関係に似ていますし、友人はホールデンの兄のようです(名字がコールフィールドで、作家です))。
サリンジャー選集(2) 若者たち〈短編集1〉 | |
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