1994年に出版された、転校してしまった四年三組のクラスメイトだった二人の男の子の思い出を語る話ですが、実際はいつものように保育園の時に脳腫瘍で早逝してしまった姉への思いを綴っています。
作者は1970年代にデビューしたころは、小学校のころの体験に基づいた「きみもサヨナラ族か」(その記事を参照してください)や「花をくわえてどこへいく」(その記事を参照してください)などで、そのころ子どもたちの間でも一般化しつつあった現代的不幸(生きていくことのリアリティの希薄さ、アイデンティティの喪失など)を先取りした作品で注目されました。
早熟だった作者は、自身の小学校時代である1950年代にそれらを実感していたのでしょう。
その後、作品の時代設定を執筆時現在にした作品を苦労して書いていましたが、あまりうまくいきませんでした。
そのため、開き直って、またこの作品のように自分の小学校時代の頃のことを書くようになります。
しかし、さすがにそのころは時代のギャップが大きかったようです。
この作品に登場する、テレビ西部劇の「ローン・レンジャー」、西部劇映画の「ほこりたかき男」、シスターボーイの丸山明弘(今の美輪明弘のことで女性的な美少年で有名でした)などは、出版当時でも読者にはチンプンカンプンでしたでしょう。
90年代に入って、どの本もほとんど売れなくなったのにまだ本が出ていたのは、各出版社に熱狂的な森ファンがいたからで、彼らは(実は私自身もそうなのですが)こういった作品でも作者の作品は大好きなのです。
その頃児童書の編集者をしていた私の友人もそんな一人で、1997年に「グリーン・アイズ」という本を担当して、あとがきに作者が彼女宛の謝辞を述べています。
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ローン・レンジャーの思い出 (ぶんけい童話館) |
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