「悪夢の現実と対峙する想像力」という副題のついた評論です。
アカデミックな論文の体裁は一切無視して、自分の興味のあるフィクション(小説、映画、アニメ、コミックスなど)をアトランダムにあげてそれに対する私見を列挙しているだけなので、ディストピア・フィクションに対するまとまった論考を求めている読者は肩透かしを食うことになります。
あとがきでは大半は描き下ろしと称していますが、実際はいろいろな媒体に書き散らした文章をまとめたものにすぎず、再構成する上での工夫もほとんど見られません。
だいたいディストピア(ユートピアの反対語で、社会的な問題を抱えた未来世界や仮想世界をSFやファンタジーの手法で描かれることが多い)に対する筆者なりの定義もしていないので、「これが、ディストピア・フィクション」と疑問を感じさせられる作品も多数含まれています。
これを読んでも、読者の方もまとまった論考はできないので、この本に出てくる私が興味を持っている作品をリストアップするだけにしておきます。
小説:トーマス・M・ディッシュ「プリズナー」、ジョージ・オーウェル「1984年」「動物農場」「華氏451度」、伊坂幸太郎の小説群、ゴールディング「蠅の王」、木村裕一「あらしのよるに」、スティーブン・キング「キャリー」、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」、多和田葉子「献灯使」、村田彩也香「コンビニ人間」(その記事を参照してください)、村上春樹「1Q84」
映画:「シンゴジラ」(その記事を参照してください)、「キングコング」、「ブレードランナー」(その記事を参照してください)、「ブレードランナー2049」(その記事を参照してください)、「ゴジラ」、「地獄の黙示録」
アニメ:「ズートピア」(その記事を参照してください)、「風の谷のナウシカ」、「進撃の巨人」(その記事を参照してください)、「鉄腕アトム」
コミックス:「進撃の巨人」、「鉄腕アトム」
テレビ:「プリズナーNo.6」、「あまちゃん」