1978年11月に刊行された、作者が自分の幼少期(あとがきによると、二、三歳から五歳まで、1928年前後)をふり返って書いた自伝的な作品です。
そういう意味では、その二年前に書かれた「流れのほとり」(その記事を参照してください)と同じ系列の作品です。
幼い主人公が、ばあやと「いないいないばあ」の遊びを繰り返すうちに、いるとか、いないとかというのはどういうことかに思い至り、怖くなる様子を通して、幼児の世界の恐れや不安を日常の生活や遊びの中に描き出しています。
幼児が主人公で、児童文学の体裁で出版されていますが、描き方も文体も当時五十代であった作者のレベルに合わせて書かれていて、完全な純文学だと思われます。
刊行当時はいざ知らず、現在の子どもたちの読書力では手に余ると思いますが、幼児体験や児童文学に関心のある大人の読者にとっては、今も古びることなく読める作品です。
いないいないばあや (岩波少年少女の本) | |
クリエーター情報なし | |
岩波書店 |