現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

容疑者Xの献身

2022-06-05 11:48:21 | 映画

 2008年公開の日本映画です。

 東野圭吾のベストセラー(直木賞をはじめとしてミステリー関係の賞など五冠を受賞しています)の映画化であるとともに、東野の短編をテレビドラマ化したガリレオ・シリーズの映画版でもあります。

 そのため、テレビで人気だった福山雅治や柴咲コウなどのキャストはそのまま使われています。

 しかし、彼ら事件の捜査側はそれほど前面には出ず、容疑者を演じた堤真一や彼がかばうことになる女性を演じた松雪泰子の物語(原作もそうなのですが)の方がクローズアップされます。

 特に、松雪は薄幸の美人役をやらせてたら天下一品なので、この映画でも一番印象に残ります。

 堤真一も、普段と違う暗い役柄を熱演しています。

 ストーリー自体は、こうした原作物にありがちなのですが、かなり端折った感じは否めず、原作の淡々とトリックを積み上げていく感じは、かなり薄まっています。

 

 

 

 

 

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東野圭吾「カッコウの卵は誰のもの」

2022-06-05 11:22:51 | 参考文献

 一読して思い浮かんだ言葉は、「剛腕」でした。
 「剛腕」といえば、野球でとてつもない剛速球を投げるピッチャー(すごく古い例で恐縮ですが、東映の尾崎行夫(ニックネームは怪童)や西鉄の稲尾和久(ニックネームは鉄腕)といった選手のイメージです。投球のスピードが表示されるようになってからは日本ではそのような神話はなくなってしまいましたので、メジャーリーグの例でいうとノーラン・ライアン(これも古いですが)やランディ・ジョンソンになります)とか、競馬でゴール前の追い比べにおいて力づくで馬を勝たせてしまうジョッキー(そう呼ばれていたのは郷原洋行ですが(これも古すぎますね)今なら岩田康誠でしょうか)につけられるニックネームですが、この作品の東野圭吾もそう呼びたいと思います。
 あらすじは述べませんが、とにかく荒唐無稽な設定を、偶然、登場人物たちのモノローグ、手紙、遺書、説明で強引にまとめてしまっています。
 そして、都合の悪い登場人物は、すべて自殺させてしまいます。
 事件の発端である女子スキー選手の母親の自殺は明らかに謎のままなのですが、きっとそのことを作者はうっかり忘れてしまったのでしょう。
 いくらなんでも、作者も編集者ももう少しきちんと読み直してから本にしてください。
 「容疑者Xの献身」などの傑作を書いた当代随一の人気作家は、きっと人が良くて、出版社の求めに応じてどんどん書いてしまっているのでしょう。
 そして、彼のブランド力でどの作品もすごく売れるので、しだいに感覚がマヒしてしまっているのかもしれません。
 昔から、エンターテインメントの作家は、とてつもない原稿枚数を書き飛ばしてしまうのですが、その時その時の旬の書き手に依存して無理な仕事をさせる出版社の体質は、いつまでたっても変わらないようです。
 児童文学の世界でも、それは全く同じ状況です。

カッコウの卵は誰のもの
クリエーター情報なし
光文社
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