今は亡きジャーナリストの千葉敦子は、「ニューヨークの24時間」という本(彼女はこの本でパソコンもインターネットもない時代の先進的な仕事の進め方を紹介してくれて、当時大いに刺激を受けました)の中で、SFの大家であるアイザック・アシモフのことをDedicated Writer(打ち込んでいる作家)と評していましたが、今現在、私がなりたい者は、まさにこのDedicated Writerです。
残念ながら、今までの人生では非常に片手間(それも1984年から1989年までの五年間にすぎません)にしか創作はできませんでした。
創作を始めたのは30歳と遅かったですし、そのころにはすでに会社で管理職になっていて多忙でしたし、すぐに子どもたちも生まれてきて、ますます自分の時間がなくなりました。
今は亡き作家の柏原兵三が書いていたように「幸福な家庭は創作の敵」で、家族の幸福(私の家庭生活の黄金期は、第一子が誕生した1988年から下の子が中学を卒業した2005年までの17年間でした)や、それを支えるための経済活動の方が、たんなる自己実現である創作活動よりも優先されるべきなのは自明の理でしょう。
しかし、会社から離れ子どもたちも巣立った今は、ぜひDedicated Writerになりたいのです。
私のDedicated Writerの具体的なイメージは、宮沢賢治が上京していたころ(わずか7か月です)のことです。
賢治はその時に、現存するほとんどすべての彼の童話の原型を書いたと言われています。
「一か月に3000枚の原稿を書いた」という有名な伝説もこの時期です。
400字詰め原稿用紙で3000枚というと、120万字にもなります。
これを達成するためには、毎日100枚(4万字)の原稿を書かなければなりません。
とても人間業とは思えないのですが、それだけ寝食忘れて創作に打ち込んでいたのでしょう。
月に3000枚とは言いませんが、自分も何もかも忘れて創作に打ち込むDedicated Writerになってみたいものだと思っています。
ニューヨークの24時間 (文春文庫) | |
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