人気作家によるリコール隠しを題材にした会社小説です。
といっても、今までの作者の作品と比べると、かなり手抜きな感じです。
連作短編のようにして、各章ごとに主人公や視点を変えて書いて、リコール隠しをした会社のいろいろな人間を描くことによって、その隠ぺい体質を浮かび上がらせようとしているのですが、どれも中途半端で全体としてまとまりのないものになっています。
会社が人間関係の上に成り立っているのは事実ですが、それをこの作品に描かれているような社内政治だったり、不倫だったり、パワハラやモラハラだったり、といった形だけで描くと本質を外してしまいます。
作者はリアルな会社小説を書くことで成功したわけですが、その作品世界はもうかなり古くなっていると言わざるを得ません。
それは作者も十分承知しているようで、この舞台になった会社がバブル時代ごろの古い体質を持っていることを作品の中でしつこいぐらい繰り返して述べています。
そういう言い訳はもういいので、作者には新しい会社像を持った会社小説を、きちんと取材して書いてもらいたいと思いました。
七つの会議 (集英社文庫) | |
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