現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

工藤直子「てつがくのライオン」

2017-05-03 09:23:08 | 作品論
 1982年初版の少年詩集の古典です。
 「少年」とついていますが、特に男の子向けというわけでありません。
 ここでいう少年は、老年、壮年、青年、幼年などと同じく、単なる年齢区分を意味します。
 少年詩集は一般的に売れないものですが、私の読んだ本は2004年で36刷なので例外的にロングセラーになっているようです。
 それには佐野洋子の個性的な絵が貢献していて、絵本のようにして読まれているのかもしれません。
 「いきものたち」、「出会いのものがたり」、「たくさんの心」、「胸の中の風景」、「春・夏・秋・冬そして春」の五部構成になっています。
 最初の「いきものたち」が、少年詩としては一番優れているでしょう。
 短い言葉で端的に、風景や気もちを捉えています。
 いくつかご紹介しましょう。
「ライオン 雲を見ながらライオンが
      女房にいった
      そろそろ めしにしようか
      ライオンと女房は
      連れ立ってでかけ
      しみじみと縞馬を喰べた」
「動物園  その日
      動物園は 暑く暑く暑く
      ハンカチほどの日かげで
      ライオンは涙ぐんでいた」
「七面鳥  極彩色紙風船」
「スピッツ ボクジャナイ!
      ボクジャナイ!
      ボクジャナイ!」
「出会いのものがたり」は物語詩で、表題の「てつがくのライオン」も含まれていますが、切れ味がなくてあまり感心しませんでした。
「たくさんの心」、「胸の中の風景」、「春・夏・秋・冬そして春」は、少年詩というよりは普通の詩でしょう。
 どの詩にもきれいな言葉が選ばれていますが、私が詩に求めている詩集ならではの言葉の鋭さがなくて、大人向けの詩集を読みなれた目にはどれも平凡に感じられました。 
 
てつがくのライオン―工藤直子少年詩集 (詩の散歩道)
クリエーター情報なし
理論社



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