現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

彼女は夢で踊る

2024-08-12 12:30:45 | 映画

 2019年公開(広島において。全国公開は2020年)の日本映画です。

 2019年まで広島に実在していたストリップ劇場を舞台に、そこに若い頃から勤めて閉館時は社長だった男性を主役にして、踊り子たちやスタッフたちとの人間関係を描いています。

 男性の過去(劇場に勤めはじめる頃や踊り子の一人への失恋など)と現在(閉館か存続かの間に苦悩する姿、かつて恋した踊り子の幻を見るなど)を自由に行き来して、彼とストリップとの関わりを浮き彫りにしていきます。

 ストリップのシーンも含めて全体に幻想的な映像が美しく、観客を主人公と一体化させることに成功しています。

 また、全編に流れるラジオヘッドの「クリープ」が雰囲気にぴったりで痺れます。

 男性に限らず女性にも、このような劇場が今でもあるなら、ストリップを見てみたいという気にさせます。

 

 

 

 

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トイ・ストーリー3

2024-08-09 09:20:24 | 映画

 2010年に公開された人気アニメ映画の第三作です。
 初めは子ども向けに作られていたこのシリーズが、持ち主の成長と共に次第にどちらかというと大人向けに変化しています。
 トイ・ストーリーと共に育った観客たちはそれ以上の速さで成長しているので、この設定はビジネス的には必然かもしれません。
 この作品では、児童文学の大きなテーマのひとつである「子ども時代にサヨナラする日」が、非常にうまく描かれています。
 具体的には、主人公のウッディたちの持ち主のアンディが他の都市にあるカレッジに入学する時に、おもちゃたち(子ども時代の象徴)とサヨナラします。
 アンディがいつも彼と一緒だったウッディ(彼の子ども時代に獲得した重要な価値観(友情、優しさ、勇気、あきらめないこと、思いやりなど)の象徴)だけは一緒に連れていき、他の仲間たちは屋根裏部屋に保存しようとします。
 彼のおもちゃたちに対する思いの深さにも感動しますが、ウッディ以外のおもちゃたちが自分たちの役目が終了したことを受け止め、自分たちの今後の運命を受け入れる姿に心を打たれました。
 このシーンには、ミルンの「プー横丁にたった家」のラストで、クリストファー・ロビンが、プーさん以外のおもちゃたちとサヨナラするシーンとピタリと重なります。
 手違いで廃棄されそうになったり、独裁者が支配する保育園へ寄贈されたりしたことから、ウッディたちの戦いが始まるのですが、その冒険活劇をとおして、観客は前述した重要な価値観を十二分に追体験できます。
 ラストで、アンディ自身の手で、おもちゃたちは新しい持ち主に手渡されます。
 そして、ウッディも自分自身の意志で、アンディと一緒に行ける特権的な立場を捨てて、仲間たちと新しい持ち主と暮らす人生を選択します。
 アンディとウッディのお別れのシーンでは、本当の意味での「子ども時代にサヨナラする」時なので、二人の気持ちを思うと涙がおさえられませんでした。
 このシリーズは、持ち主側は児童文学で言うところの成長物語なのですが、おもちゃたちは年を取らないピーターパン的な存在です。
 そのため、この人気シリーズを続けるためには、新しい持ち主に移行するのは必要な手法です。
 ご存じのように、2019年に「トイ・ストーリー4」(その記事を参照してください)が公開されて、日本でも大ヒットしました。


トイ・ストーリー3(吹替版)
サラ・マッカーサー
メーカー情報なし








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