竹心の魚族に乾杯

Have you ever seen mythos?
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大丈夫?深層水

2009年12月25日 22時11分55秒 | 竹田家博物誌
最近コンビニのおつまみやポテトチップスの味がいまいち。なんでかな~とよく見てみたら、気になる表示が。



最近よく見かけますね~「海洋深層水」「海洋深層塩」。


さて、海洋深層水というと「ミネラルが豊富」という印象がありますけど、調べてみるとそれほど豊富ではないようです。


(出典:https://www.pref.kochi.lg.jp/~sinsosui/feature/feature.html#feature4)

表を見ていただけると分かると思いますが「主要元素」と書かれているミネラル含有量は表層水とあまり違いがないです。そして多いのはやっぱり「リン」ですね。


「北の海ほど魚が豊富」「どうしてあんな寒い日差しも強くない北極海にプランクトンが多いのか…」という地球の謎ですが、その後だんだん海洋深層水の湧昇で、このリン分が供給されていることと関係があることが分かってきました。

以前、サケが栄養分を山の上まで運んでいるという話を紹介しましたが、その栄養分というのはリンでした。けれどもサケは北極海で海水をがぶがぶ飲んでリンを蓄えているわけではありません。まず海水に溶け込んでいるリンをラン藻など植物プランクトンが利用し、それを動物プランクトン・甲殻類が利用し、ようやくサケの餌になり、そしてサケが遡った山は豊かになるとのこと。なおプランクトンが増えるのにはリンのほかに鉄分なども結構重要なんだそうです。


一般的に言ってリンは多ければ多いほどいいわけですが、かといって海洋深層水を人間がミネラルウォーターとして飲んだりして、はたして大丈夫なのでしょうか?
海洋深層水利用が研究され始めて30年が経とうとしていますが、コンビニで手軽に買えるようになってからまだそれほど年月が経っていません。



リンは栄養素の中ではかなり特殊で、動物はビタミンや核酸と一緒に、あるいはリン脂質のような形で取り入れますが、出す方法というか臓器がありません。炭素は肺から出て行き、窒素やナトリウムが尿や汗となってどんどん排泄されていくのと対称的に、何度も何度もリサイクルされて使うようになっています。
リンといえばATPに代表されるように、代謝に不可欠の元素です。炭素や窒素と同じぐらい重要な元素だということになります。またリンがないと細胞は増えることができません。パンやビールの醸造にリン酸を加えることがあるそうです。


そうするとリンは、メタボリズムの中心的役割をしていながら、窒素や炭素その他と比べると比較的長い期間滞留する元素だということになります。もちろん過剰に入ってきたときは排出されるわけですが、ちょっとずつ入ってくるとそうした強制排泄みたいな仕組みは働かないわけです。私たちの体の中で、海底からポンプで汲み上げたリンが、陸上の食べ物に含まれているリンと同じように働いて、同じようにスムースに出ていってくれるならいいのですが、もし何らかの理由でちょっとでも性質が違っていたりすると、ちょっと大問題なのでは…。同じことはマグネシウムなどにも言えると思います。

ですからネズミなどを使ったテストで安全性が確認されても、はたして人間が毎日熱心に飲んで大丈夫かというと、必ずしも安全だとは言いきれないのではないかと思います。もしやるのなら、ゾウやカメといった寿命の長い生き物を使って長期にわたるテストが必要なのではないでしょうか。古今東西、人類が日常的にリンやミネラルを多く含んだ水を飲むという経験はなかったわけですよね。


ともかくイメージが良ければ売れるんだろうけど、健康に良かろうが悪かろうが、売れればOKみたいなノリってどうなのかなあ、と思います。




サケ類の遡上に関しては、ダウンロード可能な文献がhttp://www.hucc.hokudai.ac.jp/~a20066/Top/salmonology/eocology1.pdfにあります。

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