What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

ジェフリー・ディーバー 『007 白紙委任状』 ほか

2011年11月03日 14時16分35秒 | 図書館で借りた本
○ ジェフリー・ディーバー 『007 白紙委任状』 (文芸春秋)

 まず、その隙の無さにびっくり。どこをどう読んでも「007小説」になっているのが凄いです。原作者のイアン・フレミングが今も存命で、現代を舞台に書いたらこうなるだろうという、そのままの雰囲気でした。

007ことジェームズ・ボンドの、身につけるものや車へのこだわり、女性の審美眼、そして美味い酒とお料理、その描写がまったく違和感がなくて、ただただ「男の中の男」と称された007の活躍ぶりを堪能させて貰いました。敵もめっちゃ個性的で、国際的な犯罪を画策していて、オチもあぁ、やっぱりこうでなくちゃ!と思うどんでん返しぶりでした。タイトルの「白紙委任状」については、P57で早早と説明されるんですが(笑)思わずそうか!と、懐かしい作品たちの舞台となった国々を思い返しました。

この小説で、ジェフリー・ディーバーの「作家としての能力」が、一段と高く評価されるようになると思います。いや~、これはシリーズ化して欲しいわ~


○ ヨハン・テオリン 『黄昏に眠る秋』 (早川書房)

 訳者あとがきに「1973年にスタートしたCWA賞新人賞が、もともと英国以外の言語で書かれた作品に授与されたのは、この作品が初」とあって、なるほどと思いました。

私には舞台となるスウェーデンの知識は、雑誌やTV番組で見聞きした程度しかありませんが、すごく身近に感じられました。北の冷たい海の色も匂いも、濃霧が全てを覆う風景も、まるで主人公と一緒になって歩いているかのようでした。

主人公が、5歳の息子が突然行方不明になって以来、20年以上ものあいだ生死不明という始まりの部分で、私も彼女と一緒に赤ワインを飲むことにしました。他になにができるだろう?という絶望の毎日の中で、ちょっとづつ、ようやくちょっとづつ、待ち望んでいた「真実」が、日の当たる場所にさらけ出されていく過程は、切なさと安堵の気持ちがないまぜになって、主人公と同じ母親であり老父の娘である自分と、気持ちを重ねて読んでいました。


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