公務員共済の問題ですけれども、「最大で10%減額」みたいな見出しで出てましたが、これって根本的な解決策を考えているとは思われませんね。それと、「財産権を侵害する」って、誰が言ったのか未だに不明のままですね。財務省は論拠を示せよ。野党ももっと厳しく追及しろよ。何をやってんだか、全く。
公務員OBの年金、最大1割カット…政府・与党が方針 政治 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
恩給・職域加算の減額は憲法違反か?
昨年の秋に判決が出た年金減額訴訟ですけれども、参考になりますので挙げておきます。ちょっと長いのですが、部分的に引用します(事件名・番号とか出てなかったので自分でタイトルを付けた。PDFだったから、写すのが凄い面倒だった・・・何でコピペができるようにしてくれないんだろう・・・と思いました)。
松下電器年金減額裁判―大阪地裁判決
本件基本年金の利息相当分のうち、一般に運用可能な利率による利息相当額ないしそれをある程度超える利率による利息相当額を上回る部分(以下「超過利息分」という。)については、その対価を具体的に観念できないものというべきであり、超過利息分相当額の年金給付は、被告が主張するところの恩恵的給付、法律的には贈与の性質を有する給付であるというべきである。
(中略)
本件改廃規定(「将来、経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合、あるいは法制面での規制措置により必要が生じた場合は、この規程の全般的な改定または廃止を行う。」)が、将来締結される本件契約の内容を従来締結されていた本件契約の内容から変更するだけでなく、既受給者との間においても既に締結された本件契約の内容を変更できる旨を定めた規定であると解するとしても、その内容には合理性が認められるというべきである。
(中略)
経済情勢等の大幅な変動があった場合に、本件制度の改定又は廃止という全面的な改定は行うが、既受給者を含む本件制度の対象者との間での部分的な契約内容の改変も一切行わないということは、本件制度のように長期間にわたって存続することが予定されている制度においてはおよそ考えられないところであって、
(中略)
また、本件規程は、前記のとおり、本件契約の内容となることが予定されたものであるから、本件契約を締結するより前の未受給者との間では、将来の期待し得る内容という以上の意味を有しないものであり、そのような者との間において、松下労組等との協議が必要になるとしても、経済情勢等の大幅な変更という厳密な要件で限定することなく、被告が本件制度を全面的に改定又は廃止することができることは当然であり、まして、部分的な改定であれば、松下労組等との協議なくして被告がこれをすることができる場合もあることは当然であって、特に後者については、本件改廃規程のような規程をおく必要があるとは到底考えられないものである。
(中略)
本件契約締結後に本件改廃規定による本件規程の改定がされた場合には、改定後の本件規程がその契約内容になるというべきである。
(中略)
退職時に締結された本件契約によって、その総額につき少なくとも抽象的には年金請求権が発生すると解されるが、本件改廃規定は、既に退職者に発生した権利についても、一定の事情変更が生じた場合にその権利内容を変更することができることを定めたものと解するのが相当である。
(中略)
本件福祉年金のうちその余の部分については、それが退職金の分割払いの性質を有するとはいえないものであることからすると、経済情勢等の変動の程度との関係においてその必要性があり、その事情変更の程度との関係で合理性を有すると判断される範囲内であれば、本件給付利率を変更して給付額を減額することも許され、特に対価性を観念できない部分については、前記のとおり、法律的には贈与の性質を有すると解されることも勘案すると、その余の部分と比較して、本件給付利率の改定につき、その必要性と相当性の判断には、厳格性は要求されないと解するのが相当である。
(中略)
①(著者注:既発生の権利である本件福祉年金請求権を侵害する)については、前記のとおり、本件改廃規定が本件契約内容となっていることからすると、本件改廃規定によって既受給者に対する本件福祉年金の給付利率を引き下げることが信義則等に反するということはできない。
(中略)
ここでいう経済情勢の大幅な変動とは、市場金利よりも有利な給付利率による本件福祉年金の長期的・継続的支給を維持することが困難となるような経済情勢の大幅な変動を指すと解される。そして、市場金利よりも有利な給付利率による本件福祉年金を長期間に渡って継続的に支給し続けることが困難と考えられるような経済情勢の大幅な変動があったかということにを判断するということになると、被告を取り巻く客観的な経済情勢について考慮するだけでなく、本件福祉年金を支給する主体である被告の経済状態をも考慮しなければならないことは、その性質上当然のことというべきである。また、社会保障制度の大幅な変動により本件給付利率を維持することが困難になる場合とは、例えば、そのような給付利率による本件福祉年金の長期的・継続的支給をすることが被告の未だ退職していない従業員に対する社会保障制度との関係で著しい不均衡を生じることになる場合を指し、
(中略)
既受給者もかつては老後の生活保障も励みにして労務を提供し、被告らの利潤蓄積に貢献したところ、本件基本年金の利息相当分の受給は、その労務の提供の成果に対する還元という側面も有していること等を理由として、現役従業員との格差を問題とするのは不合理であると主張する。しかし、本件利率改定により利率が低下する部分は、超過利息分であって、その対価を具体的に観念できないものであり、原告らの労働の対価とは評価できないのであるから、この点に関する原告らの主張には理由がないというべきである。
こんな感じでした。できれば原文をお読み下さいね。
私の拙い理解の範囲で判決の要点をまとめますと、大体次のようなことです。
・(賃金としての)対価性を観念できない部分は贈与的なもの
・一般的な運用成績を上回る給付(判決では「超過利息分」)は、贈与的なもの
・改廃規定に基づく改廃は認められる
・既受給者にも改廃規定の効力は及ぶ
・制度の長期的・継続的維持が困難である場合は改廃規定を適用可
・運営主体の経済状況等も考慮される
・現役従業員との著しい不均衡も判断材料となる
・一般に長期間存続する年金制度で、変更がないと考える方が不思議(笑)
公務員共済の「職域加算」や「追加費用」部分というのが、これらから外れているかと言えば、多分違うと思うね。それでも、「憲法の財産権を侵害する」と主張するのであれば、どのような理屈なのか教えてもらいたいもんですね。特に「超過利息分」に該当するのは減額することは可能であると思われますが。今まで十分貪ってきたはずですので、そういう人たちの分こそ多く減額してくれって思うけど。これまで国に大きな損害を与えてきたのに、老後まで国民が何で面倒を見てやらなけりゃならんのだ?
公務員OBの年金、最大1割カット…政府・与党が方針 政治 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
恩給・職域加算の減額は憲法違反か?
昨年の秋に判決が出た年金減額訴訟ですけれども、参考になりますので挙げておきます。ちょっと長いのですが、部分的に引用します(事件名・番号とか出てなかったので自分でタイトルを付けた。PDFだったから、写すのが凄い面倒だった・・・何でコピペができるようにしてくれないんだろう・・・と思いました)。
松下電器年金減額裁判―大阪地裁判決
本件基本年金の利息相当分のうち、一般に運用可能な利率による利息相当額ないしそれをある程度超える利率による利息相当額を上回る部分(以下「超過利息分」という。)については、その対価を具体的に観念できないものというべきであり、超過利息分相当額の年金給付は、被告が主張するところの恩恵的給付、法律的には贈与の性質を有する給付であるというべきである。
(中略)
本件改廃規定(「将来、経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合、あるいは法制面での規制措置により必要が生じた場合は、この規程の全般的な改定または廃止を行う。」)が、将来締結される本件契約の内容を従来締結されていた本件契約の内容から変更するだけでなく、既受給者との間においても既に締結された本件契約の内容を変更できる旨を定めた規定であると解するとしても、その内容には合理性が認められるというべきである。
(中略)
経済情勢等の大幅な変動があった場合に、本件制度の改定又は廃止という全面的な改定は行うが、既受給者を含む本件制度の対象者との間での部分的な契約内容の改変も一切行わないということは、本件制度のように長期間にわたって存続することが予定されている制度においてはおよそ考えられないところであって、
(中略)
また、本件規程は、前記のとおり、本件契約の内容となることが予定されたものであるから、本件契約を締結するより前の未受給者との間では、将来の期待し得る内容という以上の意味を有しないものであり、そのような者との間において、松下労組等との協議が必要になるとしても、経済情勢等の大幅な変更という厳密な要件で限定することなく、被告が本件制度を全面的に改定又は廃止することができることは当然であり、まして、部分的な改定であれば、松下労組等との協議なくして被告がこれをすることができる場合もあることは当然であって、特に後者については、本件改廃規程のような規程をおく必要があるとは到底考えられないものである。
(中略)
本件契約締結後に本件改廃規定による本件規程の改定がされた場合には、改定後の本件規程がその契約内容になるというべきである。
(中略)
退職時に締結された本件契約によって、その総額につき少なくとも抽象的には年金請求権が発生すると解されるが、本件改廃規定は、既に退職者に発生した権利についても、一定の事情変更が生じた場合にその権利内容を変更することができることを定めたものと解するのが相当である。
(中略)
本件福祉年金のうちその余の部分については、それが退職金の分割払いの性質を有するとはいえないものであることからすると、経済情勢等の変動の程度との関係においてその必要性があり、その事情変更の程度との関係で合理性を有すると判断される範囲内であれば、本件給付利率を変更して給付額を減額することも許され、特に対価性を観念できない部分については、前記のとおり、法律的には贈与の性質を有すると解されることも勘案すると、その余の部分と比較して、本件給付利率の改定につき、その必要性と相当性の判断には、厳格性は要求されないと解するのが相当である。
(中略)
①(著者注:既発生の権利である本件福祉年金請求権を侵害する)については、前記のとおり、本件改廃規定が本件契約内容となっていることからすると、本件改廃規定によって既受給者に対する本件福祉年金の給付利率を引き下げることが信義則等に反するということはできない。
(中略)
ここでいう経済情勢の大幅な変動とは、市場金利よりも有利な給付利率による本件福祉年金の長期的・継続的支給を維持することが困難となるような経済情勢の大幅な変動を指すと解される。そして、市場金利よりも有利な給付利率による本件福祉年金を長期間に渡って継続的に支給し続けることが困難と考えられるような経済情勢の大幅な変動があったかということにを判断するということになると、被告を取り巻く客観的な経済情勢について考慮するだけでなく、本件福祉年金を支給する主体である被告の経済状態をも考慮しなければならないことは、その性質上当然のことというべきである。また、社会保障制度の大幅な変動により本件給付利率を維持することが困難になる場合とは、例えば、そのような給付利率による本件福祉年金の長期的・継続的支給をすることが被告の未だ退職していない従業員に対する社会保障制度との関係で著しい不均衡を生じることになる場合を指し、
(中略)
既受給者もかつては老後の生活保障も励みにして労務を提供し、被告らの利潤蓄積に貢献したところ、本件基本年金の利息相当分の受給は、その労務の提供の成果に対する還元という側面も有していること等を理由として、現役従業員との格差を問題とするのは不合理であると主張する。しかし、本件利率改定により利率が低下する部分は、超過利息分であって、その対価を具体的に観念できないものであり、原告らの労働の対価とは評価できないのであるから、この点に関する原告らの主張には理由がないというべきである。
こんな感じでした。できれば原文をお読み下さいね。
私の拙い理解の範囲で判決の要点をまとめますと、大体次のようなことです。
・(賃金としての)対価性を観念できない部分は贈与的なもの
・一般的な運用成績を上回る給付(判決では「超過利息分」)は、贈与的なもの
・改廃規定に基づく改廃は認められる
・既受給者にも改廃規定の効力は及ぶ
・制度の長期的・継続的維持が困難である場合は改廃規定を適用可
・運営主体の経済状況等も考慮される
・現役従業員との著しい不均衡も判断材料となる
・一般に長期間存続する年金制度で、変更がないと考える方が不思議(笑)
公務員共済の「職域加算」や「追加費用」部分というのが、これらから外れているかと言えば、多分違うと思うね。それでも、「憲法の財産権を侵害する」と主張するのであれば、どのような理屈なのか教えてもらいたいもんですね。特に「超過利息分」に該当するのは減額することは可能であると思われますが。今まで十分貪ってきたはずですので、そういう人たちの分こそ多く減額してくれって思うけど。これまで国に大きな損害を与えてきたのに、老後まで国民が何で面倒を見てやらなけりゃならんのだ?