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貸金業の上限金利問題~その4

2006年04月26日 22時03分21秒 | 社会全般
多重債務者の陥りやすい罠は、やっぱり金利水準の高さによると思いますよ。勿論リストラとか病気のような突発的な出来事や、賃金低下などによって、払えなくなってくることは有り得ると思います。しかし、多くは新たな借金を重ねることが更なる悪化を招き、利息の成長速度が返済限界を上回れば、きっと破綻へと向かうと思いますね。最初からいきなり多額の借金(300万とか500万とか)をするかと言えば、殆どがそうではないでしょう。


消費者金融の返済方式というのがどういった方法なのか不明ですけど、契約の段階で毎月の返済額は決まっていないのでしょうか?月によっては、少ない入金とか、ちょっと多く入金といったことがあるのでしょうか?実際に借りたことがないので、想像でしかないけれども。


年収360万円の男がいて、30万円借りたということにしよう。年収に対する負債比率は約8.3%です。この初回借入金利が40%であるとしよう。他からの借入や信用情報に傷が付いてなくても、昔は40%以上の金利だったらしいからね。これを3年で元利均等返済をする場合、毎月14434円、利息は3年分で219407円にもなるそうです。まあ、それでも3年間頑張って(約52万円の返済総額)、月々14434円程度の他への支出を辛抱をすれば、完済できるわけです。ところが、多重債務への道を進む場合は、この14434円が払えなくなるような事態が起こってくる、ということになりますよね。


急に仕事を首になって収入がゼロとなってしまった場合、負債はこの分だけです。払えずにバンザイすると、被害額は非常に小さく済みます。それか、負債を一時凍結して、将来仕事について返済可能となった時点で、再び返済をしてもらった方がマシですよね?一生の間で返済不能な額ではないはずでしょう。それに、この程度の額であれば、まだ親などに借りたりして調達可能であると思えます。

或いは、生活費を全額借金で補おうとする場合には、毎月のように数万円~数十万円の高水準での借入となってしまう為に、すぐに限界へと辿り着くのでは?それに、「収入ゼロ」ということを知った上で(借りる側が正しく申告しないこともあるかもしれませんが)業者側が貸し出すわけで、そんなに多額の貸付が行えるはずはないですよね?(主婦のような場合ではない)収入ゼロの人に、どうやって返してもらう積もりなのでしょう?普通に考えれば、新たな借入は割りと早い段階で限界に達すると思えますけど。貸してくれなくなるはずだからですね。闇金が貸したところで、収入がないので取りようがありませんし(笑)。


むしろ、収入が完全に途絶えないでそれなりにあって、月々14434円の返済があるにも関わらず、どこかの時点で新たな借入を行ってしまうことが、悪化へのステップということになるかと思います。「借金返済の為に借金をする」という事態になる、ということです。年間数万円程度の収支バランスの悪化であっても、次の借入を行わなければ払えないような事態が発生し得るように思えます。初めの借入が30万円程度であっても、毎月定額で返済していくような場合はあるのでしょうか?例えば毎月5千円だけ、とか。貸す側にとっては、長期間借りてくれて、返済までの利払いが多い方が有利なので、こうした返済方法を選択してもらった方がウレシイですよね?月々の返済負担は軽減されますが、総支払額はかなり多くなるでしょう。


恐らく生活に余裕がなく、返済が大変だと感じる層ほど、一月当たりの返済額を少なくして、何回にも分けて払おうとするはずです。毎月の資金繰りが厳しいので、できるだけ今の支出構造との差を少なくしようとするからだろうと思えます。なので、長期間に渡り初期の借入が残される可能性が高くなるのでしょう。完済予定が何年も先ということになるのです。しかも、その結果、「高金利」というのが物凄く効いてくるのですよ。まるでボディブローのように。5年間とかの長期間に渡って、次の借金をすることなく、返済し続けねばならんのですよ。


しかし、支出を抑制しきれなかったり、収入が落ち込んだりすることで、収支バランスが崩れると次の借入へと進みます。そこでも、一気に多額の借金を背負うことはそれほど多いわけでもなく、10万、20万といった額を調達してしまうのでしょう。返済原資を作る為には、収入を増やすか支出を削減するしかないわけで、利息の成長速度よりも返済原資調達(普通は支出削減努力でしょう)が下回り続ける限り、借金(元金)を減らせないばかりか、新たな借入を呼び込むことになってしまいます。年率30%の金利の場合、3年後の完済であれば支払い総額が元金の約1.5倍必要なのですから、それがどれ程困難なことかは想像がつきます。借入時点では、1年間かけても10万、20万円程度の資金調達すら出来ない(もし出来るならば早期に完済できるか、完済前に次の新たな借入は行われない)のに、借入元金の1.5倍の金を3年間で調達してこい、ということと同じなのですから。


完済前に別な借入に突入する人が、新たに増加した返済負担を容易に捻出できるとすれば、元々新たな借入などしなくても資金調達が可能でしょう。勿論、必要額が初めから100万円といった小口ではない資金の場合などでは、別々な業者から借り入れるかもしれませんけれども。


年収360万円の男の話に戻ろう。この人が借入を繰り返してしまい、90万円まで負債が増えたとしよう。この時点で、年収の25%に達しており、かなりキツイ状況になってきていると判断できるでしょう。ところが、この収入レベルの人物に対して、自己破産に至るほどの貸出が行われていることは事実であり、破産時には何故か年収以上の負債を抱えていたりすることも少なくないのです。


前の記事のペーパーを出してる早稲田の坂野教授によれば、非破産グループというのは、「(その業者を新規に訪れた時に)高額な借入を受けている」のだそうで、既に90万円を他でツマンデいても新たに50万円貸し出すことは可能でしょうね。総額ではまだ140万円であり、破綻までは時間がかかります(笑)。3年払いとしても、月に約6万円の支払いができるならば、返済可能ですので。月々の収入に対する返済比率が20%程度ですからね。しかし、負債が250万円に達していれば、月々の返済比率は35%にもなり(手取りレベルで言えばもっと厳しい)、ここから50万円を貸し出すには勇気がいると思うでしょ?しかし、まだ直ぐには「墜落」しないので、業者は貸し出すのですよ(笑)。要するに、たとえ破綻に着々と向かいつつある人であっても、途中で見れば依然「墜落」していないので、「高額の借入が可能」=与信は正しく機能している、なんていう都合のいい結論を出してくるわけです。


それと、「破産」グループも「非破産」グループも「借入額を増加」させていたから、借入増加と破産は関係ないんじゃないか、とか言ってるわけです。返済原資の不足分を補う為の新規借入枠が何処かに残されている限り、破産はしないのですよ。自転車操業の真っ只中なのであれば、当然そうなりますよ。新たな借入を行って返済に振り向けるのですから(笑)。だから、その過程にある人の相当数が、まさに「墜落」への予定コースに乗ってしまってるんじゃないですか。年収360万円、現在負債残高250万円、この人にだって融資する業者はまだまだいるんですよ、別に違法な闇金なんかじゃなくたって。それでも、貸金の審査は正常に機能していると?


最初の頃の借入金利水準が、その後負債残高も増えて、他からの借入も増加しているにも関わらず、初めの頃に借りた金利と近いか殆ど同じである必然性というものも、全く理解できないけど。例えば、初めの貸金業者だけが常に極端に運営経費や調達金利が高いことが普通で、初期借入の20万とか30万円が25%とか30%の金利になってしまうと?まあ、これも業者の自由だし、審査基準が異なっているからなのでしょうけど。たまたまだ、偶然だ、と言われるかもしれんしね。



消費者金融顧客の分析は果たして妥当か?

2006年04月26日 15時11分13秒 | 社会全般
早稲田大学商学部といえば、一般にはそれなりの評価を受けるような学校なのだろうが、このようなお粗末な論文を公表しているとは如何なものか、と思ってしまう。指導教授である坂野先生という方は、私のような下種とは比較にならないくらいに立派な学者さんなのだろうけど。まあ、大それた批判など、私には難しすぎるし。

消費者金融顧客の自己破産


この論文に出されるグループBのロジスティック回帰分析であるが、「非破産」グループはそれまでの分析に用いていたサンプル数9964件と同一であるのに対して、「破産」グループは10709件となっており、サンプル提供を受けた10800件のうち何故か91件が除かれている。他の分析については、「欠損値」を持つサンプルも分析対象に加えていながら、ロジ回帰分析においては除外しているということに問題があると思われる。普通であれば、意図的に除いた理由を明示するのではないかと思うが。商学部の論文とかの”ルール”などは、よく知らんのだけど。


更に、モデルの設定として、明らかな間違いなのではないかと思われることがある。それは「非破産」グループがあたかも「破産しないこと」を意味するかの如くに、「破産」グループと比較されていることである。例えば、意図的なのか或いは単なる勘違いなのか不明ではあるが、本文P22で『新規時において与信者が無理な貸付を行っているということはないことを示唆している』と記しているが、これはミスリードとしか思えない記述であろう(まあ、単なるsuggestionですから、とか言うのかもしれないが)。


簡単な例で考えてみよう。飛行機の飛ぶ高度が、ある飛行高度以上であれば「安全高度」、それを下回ってくると「注意高度」、さらに低くなってくると「危険高度」、そして遂には墜落してしまう「墜落」という区分であるとしよう。「破産」グループは要するに「墜落」という群であり、「非破産」グループとは残りの墜落していない(=現在飛んでいる)群である。そして、今は飛行を続けていられるが、何かの拍子に墜落する危険性の高い飛行機も当然多数含まれている。データ解析時には「飛行していた」けれども、翌年にはその中から相当数の墜落が発生しているかもしれないのである。そして、「危険高度」で飛行を続けている群は、「安全高度」で飛行している群よりも、「明らかに」(有意に)墜落率が高いはずであろう(調べてないからわからんけど、普通に推測されるという意味です)。

そういうサンプルが多数混入している(であろう)「非破産」グループのデータをもって、「今後も墜落しない」とか、「墜落危険性は予見できない」とか、そういった意味付けを行うことはできない。また、「墜落」した飛行機(破産)と、現在飛行中の飛行機(非破産)の違いについて検討してみたところで、仮に「危険高度」の飛行機の半数以上が明日墜落してしまっていれば、「墜落」群と「危険高度」群の明確な違いを説明するのは困難である。「危険高度」群と「墜落」群とでは、実質的に対象区分が同じものが含まれていることになってしまうからである。むしろ、「危険高度」に陥る要因(そこに降下しないような対策も含めて)と、「危険高度」「注意高度」の実際的な高度がどこに設定されるべきか、といったことが重要であろう。


ある割合の人々が「墜落」しないまでも「危険高度」に陥る可能性が高いであろう、ということを前提にして貸付を行うことは、現実には「無理な貸付」「追加貸付」となることも十分考えられるのである。一般に、自己破産者の殆どが最初の借入から1年以内で破産に至るというのは稀だと思うし、通常は数年かけて破産に至ってしまうわけですから、「非破産」グループのうち来年以降に「墜落」する群というのは、現時点で既に大きな債務を抱えている「非破産」グループから誕生することは容易に想像できる。


この研究モデルにおいては、「非破産」グループの中に、「破産に向かって一直線」の途上にある対象が数多く混入している可能性を否定できない以上、「破産」「非破産」の区分はモデル設定の重大な失敗としか思えない。


他の考察でも、借入額の増大は「非破産」グループと「破産グループ」に違いがないことや「多額の新規借入が可能」ということをもって「低リスク者への貸出」という業者側の与信があたかも機能しているかのような記述が見られるが、これらも同じく適切な分析とは言いがたい。


また、もしも消費者金融サービス研究所に対して、関連業界の法人・団体等からの研究資金提供などがあるとすれば、下種の勘繰りをされても仕方がないような程度の分析とも言えるのではないか。


学問・研究をまとった都合の良い「業界の意見」というものも、世の中にはないわけではない。しかし、普通ならば「学問的に正しいかどうか」が重要なのであって、こうしたペーパーを読んでいく時に、頭のよい人々や専門家等の誰もモデルに疑問を感じないのだとしたら、きっと「正しい分析」ということなんだろうけど。

私のような素人にとっては、このような有名大学教授の出す意見に太刀打ちできるほどの信用も知識も分析能力もないのですし。せいぜい頑張っても、空想記事くらいしか出せないですからね(爆)。