5)異常行動に関係する死亡数は多いのか
死亡そのものを許容せよ、ということを言いたいわけではありませんが、何らかのリスクはあるのは必ずしも防げません。
1つ前で見たように、55人の死亡で約0.002%、8人だと約0.0003%という「極めて稀な」ケースなので、マスメディアが当初から騒いでいた「異常行動と死亡例」というものが、他の何かと比べてどうなのか、ということはあると思います。
これはパロマ等の問題が騒ぎになった時に、ちょっと書きました。
一酸化炭素中毒死を考える
続・CO中毒死の事故
参考までに言えば、上限金利規制問題の時に取り上げた貸金業の団信ですが、保険金受取となった自殺者数は推定で年間1000人を超える水準であると思われ(死亡原因不明ならばもっと多いはずだ)、こちらの方がはるかに大問題と言えるのです。タミフルの方はこれまでの通算人数(6年間分くらい?)だが、こちらの自殺者数は1年間分で、なのだ。この件については、池田氏が死亡との因果関係について論理的に明らかにおかしい推定(池田信夫 blog 1段階論理の正義)をしていた―池田氏風な表現をするならば「一知半解な知識で判ったような口を叩く」ということだ―が、「多重債務を抱えて自殺する確率よりも、はるかに死亡リスクは少ない」(笑)と世の中に知らしめて欲しいものです。
どうしてタミフル問題の時には、経済学信奉者たちは、お得意の経済学理論で「因果関係があってもなくても無関係に、タミフル服用は経済学的に正しい」とか主張してくれないのか残念です。世間の人々も、タミフルよりも多重債務者の自殺の方がもっと大問題なのだ、と認識して頂ければと思います。
<また書いておきますが、本当に「貸金に債務のある人」と「貸金に債務のない人」との間で死亡リスクに差がなく、世間一般の人々と同じ程度なのであれば、住宅ローンの団信と同じ保険料率の設定で良さそうに思えるのですよね。でも、サラ金の団信だと保険料率は高いだろうと参考記事でも推測しました。理由としては、恐らく「死ぬ確率が高いから」ではないかと思うのですが、生命保険というのが何か決められた料金体系ということで、団信はどれでも同じということであるなら、住宅ローンの場合と同一ということもあるかもしれません。自殺原因として色々あるけれど、経済的理由というのは主なものの1つであり、債務がある場合には誘因となり得るであろうと考えています。なので、「貸金に債務を有する人」という群と、「住宅ローン債務を有する人」という群や「債務を有しない人」という群で比較したら、貸金債務の方が自殺するリスクは高いと予想しています。>
「多重債務者はせいぜい1割に過ぎず、残りの9割は大丈夫なんだ」とか、「破産はサラ金の融資や金利のせいじゃない、ライフイベント(つまりは個人差)だ」とかの主張を展開していた方々が、その理屈をタミフルに対しても同じように適用しないのは何故なのか、とは思いますね(笑)。こうした理屈に従えば、約3500万人中の僅か128人についての問題は「誤差範囲」でしかないわけで(オーダーが違うでしょ?全然)、因果関係の推定も何も、「元々問題は存在しない、個体差でしかない」と直ちに結論付けても良さそうですが?とりわけ経済学理論を重視しペーパーに書かれたモデルの正当性を主張する人々にとっては、「疑う余地のない理論的で科学的なモデル・考え方」ということでそれを支持することは確実なのではないかと思いますね。
多重債務問題について、「科学的」に因果関係を推定できる理論体系を経済学分野で有しているのであれば、こうしたタミフル問題のようなものについても、是非ともその威力を発揮してもらえればと思います。パターナリズム批判や勧善懲悪的世界観を否定するもよし、感情論に傾きがちな非科学的・非論理的な大衆を愚かと哂うのも結構ですが、他人を見下す前にまず自分の意見を科学的・論理的に説明してみて欲しいものです。自分で自分の主張を説明できないのは、疑問としか言いようがありませんね。例えば「喫煙によって医療費が増える(だから喫煙は良くない)」という主張をしていたのであれば、JT役員の反論みたいなもので、「いや、社会保障費は増加する(だから喫煙反対の理由としてオカシイ)」と言われ自分たちの論拠を崩されたからといって、「JT役員が言うべきことではない」みたいな人的批判をするのは方向違いですよね。むしろ、別な喫煙反対の論拠を提示して説明するべきではないですか、ということです。
6)今後どうするか
今のところ、厚生労働省側で何かの方向性を見つけ出すまでは、使用をできるだけ控えめにするというのが望ましいと思います(必要性があれば、勿論使う)。これからの時期だと風邪はあると思いますが、インフルエンザの流行のピークは過ぎていると思われますので、使用機会そのものが減少していくことになるでしょう。従って、異常行動の報告事例の発生は減少していくであろうと思われます。
本来、備蓄を進めるのにタミフルは品薄となっているので、国内での使用があまり多くない方が備蓄は進めやすいように思えます。初めの方に書いたように、世界的に見て「使いすぎ」(笑)という傾向はあるので、是正するべきであろうと思います。すると、これまで使っていた量を備蓄に回せるので、計画は早く進められるようになるかもしれません。
追加というか、前の記事にコメントを Indigoさんから頂戴しましたので、お答えを書いておこうと思います。
まずコメントを引用させて頂きます。
>簡潔に言ってしまえば、儲かるからでしょう。
こちらですが、これはそれほど単純な話ではないです。そもそも現在の薬価というシステムでは、どのような薬を処方するかと、どれほどの利益が出るかは基本的に関係ありません。
いわゆるジェネリックでもない限り、現在医薬品の仕入れ価格と薬価はほとんど同じで「高価な薬(ジェネリックの無いオリジナル等)」ほどその傾向は強く、タミフル(これ自体もさして高価な薬ではないですが、薬価差は事実上ゼロです。)を処方することが利益に繋がるという事実は、少なくとも現場レベルではありません。投薬、処方はその薬品数(というか処方数)に応じて保険請求額が上がるだけなので、飲み方の違う薬を複数出す方が儲かります。タミフルなんかだすよりも、咳止めシロップと胃薬でも出した方がずっと儲かるんです。
更に言うと、ジェネリック(我々は通常「ゾロ」という蔑称を使います)を使った方がオリジナルを使うより遙かに儲かります。既述の通り、オリジナルはほとんど薬価差ゼロなのでそれ自体からは利益は出ない上に、販売単位が使用単位と一致しないため在庫リスクがシャレになりません。
ところがゾロの場合、薬価も安いのですが実売価格はそれよりかなり安い物が大半で、使用することで在庫リスクを合わせても確実に利益が出ます。
しかも、後発品加算という「ゾロ推奨ポイント」が付くのでゾロを使うというだけで保険請求が増やせます。このため、ゾロを使うことは二重に「儲かる」のです。
このあたりの実情は誤解されているのか、敢えてミスリードを誘っているのか、「高価な薬を使うと現場は儲かる」という嘘がまかり通っているので正直閉口しています。
患者側の要求に沿うことで結果的に「客」が増えるという話ならともかく、タミフルの使用自体が直接利益をもたらす、という認識であれば、もう少し事実関係の確認をお願いします。
念のために言ってきますが、殿様商売な中外からタミフルを使用することでバックマージン、なんて話は聞いたことがありません。そんな結構な話があるなら是非ウチにも持ってきてもらいたいくらいです。(笑)
このように「儲かるから」ということに対する抗議といいますか、実情をご紹介下さいました。私も実際のところよく知らない部分がありますので、大変勉強になります。有難うございます。非常に大雑把にまとめますと、ご趣旨は「タミフルを出すよりも、もっと儲かる方法がある」ということのようで、平たく表現すれば「タミフルを使うからといって儲かるわけではない」ということかと理解致しました。そこで、お答えしたいと思いますが、恐らくあまりに無駄に長かったのでお読みになるのが苦痛になられて、もう少し下の方をお読み頂かなかったのではないかと思います。
で、一部分は記事中に書いてあります。
『すると、抗生剤だの、解熱剤だの、咳止めだの、去痰剤だの、イソジンだの、あれこれと持たされるということになるのです。胃薬も付いてくるかもしれません。そうして比較的軽度の疾患であっても、医療費を消費してしまい、薬剤費が伸びることになるかもしれませんね。』
これは Indigoさんがご教授下さった、方法論と似ていますね。当たらずといえども遠からず、というところでしょうか。
で、「タミフルを使えばなぜ収益アップに繋がるのか」ということを説明したいと思います。前の記事の文脈から言って、私の意図していたところは「感染症の大部分は投薬が必要とも思えない」ということであることはご理解頂けると思いますので、即ち「何も投薬しない場合」と、「タミフルを投薬する場合」の比較ということになります。
で、早速お答えしていきたいと思います。
第一に、迅速検査のような検査が算定できるのではないでしょうか?正確には知らないですが、インフルエンザの診断を得るのに、検査を行うのですから、この請求が可能なのではないかと思われます。(増点1)
第二に、投薬に伴う処方料等の請求ができるのではないかと思われます。、院外処方では処方箋料が算定できるものと思っていました。(増点2)
第三に、薬剤仕入れを何処で行っているかによるかもしれませんが、院内よりも院外というのは利益が大きいと考えられます。Indigoさんのおっしゃるように、現場では儲けなんて殆どない、というのは実感として正しいのかもしれませんが、保険点数以下の納入が行われるという実態はほぼ皆無に等しいでしょう。医院などで仕入れると納入価格と保険請求価格にはほんのごく僅かしか差額は残されないと思いますが、処方、調剤や薬剤情報提供に係る費用を請求できる(増点3)のではないでしょうか。院外処方の場合ですと、主としてドラッグストアなどの利益となります。薬価差益自体は残存しており、通常R幅などとして決められているのではないでしょうか。2%くらい。これは厚生労働省側が設定してくるものであると理解しています。
しかし、儲けの本体はそんな処にはないでしょう。主に大手のチェーンストアに見られる手法でしょうけれども、取引額が大きいということから、価格交渉力が強いドラッグストアは存在しています。独禁法で言うところの「優越的地位」に近い実態なのではないかと推測されます。つまり納入業者は、保険請求価格から乖離した低い納入価格を強いられやすい、ということになります。そうした価格設定に不満なのであれば、ドラッグストアが「もっと安い業者から買うから、もういいよ」と言ってしまうことが可能だからです。それを怖れる(大手なので買入額が大きく経営上の影響力がかなりある)納入業者は、安い納入価格に同意せざるを得ないということです。大手チェーンストアが用いているのは「総価取引」と呼ばれる方法です。納入額によって値引き幅を変えるというシロモノで、薬剤の総納入額に連動しています。高額医薬品が多ければ納入総額が増大するので、値引き幅は大きくなっていくはずです。大手ドラッグの「総価取引」による値引き効果は6%くらいと言われています。従って、年間薬剤費がざっと6兆円以上、うちチェーンドラッグストアの売上は3兆円規模ですから、納入するだけで差益約1800億円をドラッグストアが召し上げていることになります(増点4)。「薬剤総額が増加すれば儲かる」ということが間違っている、とは言えないのではないでしょうか。
以上のように、増点1~4までを見れば、タミフルを一切処方しない場合に比べれば処方した場合には「儲けが増える」言ってもいいのではないかと考えます。
勿論、タミフルを処方されない場合よりも、処方された場合の方が利益が大きいということは多々あるので、全部がデメリットばかりとも言えないことは確かです。タミフルを使うなと主張しているわけでもありませんし、儲けることを全部否定しているという意図ではありません。
死亡そのものを許容せよ、ということを言いたいわけではありませんが、何らかのリスクはあるのは必ずしも防げません。
1つ前で見たように、55人の死亡で約0.002%、8人だと約0.0003%という「極めて稀な」ケースなので、マスメディアが当初から騒いでいた「異常行動と死亡例」というものが、他の何かと比べてどうなのか、ということはあると思います。
これはパロマ等の問題が騒ぎになった時に、ちょっと書きました。
一酸化炭素中毒死を考える
続・CO中毒死の事故
参考までに言えば、上限金利規制問題の時に取り上げた貸金業の団信ですが、保険金受取となった自殺者数は推定で年間1000人を超える水準であると思われ(死亡原因不明ならばもっと多いはずだ)、こちらの方がはるかに大問題と言えるのです。タミフルの方はこれまでの通算人数(6年間分くらい?)だが、こちらの自殺者数は1年間分で、なのだ。この件については、池田氏が死亡との因果関係について論理的に明らかにおかしい推定(池田信夫 blog 1段階論理の正義)をしていた―池田氏風な表現をするならば「一知半解な知識で判ったような口を叩く」ということだ―が、「多重債務を抱えて自殺する確率よりも、はるかに死亡リスクは少ない」(笑)と世の中に知らしめて欲しいものです。
どうしてタミフル問題の時には、経済学信奉者たちは、お得意の経済学理論で「因果関係があってもなくても無関係に、タミフル服用は経済学的に正しい」とか主張してくれないのか残念です。世間の人々も、タミフルよりも多重債務者の自殺の方がもっと大問題なのだ、と認識して頂ければと思います。
<また書いておきますが、本当に「貸金に債務のある人」と「貸金に債務のない人」との間で死亡リスクに差がなく、世間一般の人々と同じ程度なのであれば、住宅ローンの団信と同じ保険料率の設定で良さそうに思えるのですよね。でも、サラ金の団信だと保険料率は高いだろうと参考記事でも推測しました。理由としては、恐らく「死ぬ確率が高いから」ではないかと思うのですが、生命保険というのが何か決められた料金体系ということで、団信はどれでも同じということであるなら、住宅ローンの場合と同一ということもあるかもしれません。自殺原因として色々あるけれど、経済的理由というのは主なものの1つであり、債務がある場合には誘因となり得るであろうと考えています。なので、「貸金に債務を有する人」という群と、「住宅ローン債務を有する人」という群や「債務を有しない人」という群で比較したら、貸金債務の方が自殺するリスクは高いと予想しています。>
「多重債務者はせいぜい1割に過ぎず、残りの9割は大丈夫なんだ」とか、「破産はサラ金の融資や金利のせいじゃない、ライフイベント(つまりは個人差)だ」とかの主張を展開していた方々が、その理屈をタミフルに対しても同じように適用しないのは何故なのか、とは思いますね(笑)。こうした理屈に従えば、約3500万人中の僅か128人についての問題は「誤差範囲」でしかないわけで(オーダーが違うでしょ?全然)、因果関係の推定も何も、「元々問題は存在しない、個体差でしかない」と直ちに結論付けても良さそうですが?とりわけ経済学理論を重視しペーパーに書かれたモデルの正当性を主張する人々にとっては、「疑う余地のない理論的で科学的なモデル・考え方」ということでそれを支持することは確実なのではないかと思いますね。
多重債務問題について、「科学的」に因果関係を推定できる理論体系を経済学分野で有しているのであれば、こうしたタミフル問題のようなものについても、是非ともその威力を発揮してもらえればと思います。パターナリズム批判や勧善懲悪的世界観を否定するもよし、感情論に傾きがちな非科学的・非論理的な大衆を愚かと哂うのも結構ですが、他人を見下す前にまず自分の意見を科学的・論理的に説明してみて欲しいものです。自分で自分の主張を説明できないのは、疑問としか言いようがありませんね。例えば「喫煙によって医療費が増える(だから喫煙は良くない)」という主張をしていたのであれば、JT役員の反論みたいなもので、「いや、社会保障費は増加する(だから喫煙反対の理由としてオカシイ)」と言われ自分たちの論拠を崩されたからといって、「JT役員が言うべきことではない」みたいな人的批判をするのは方向違いですよね。むしろ、別な喫煙反対の論拠を提示して説明するべきではないですか、ということです。
6)今後どうするか
今のところ、厚生労働省側で何かの方向性を見つけ出すまでは、使用をできるだけ控えめにするというのが望ましいと思います(必要性があれば、勿論使う)。これからの時期だと風邪はあると思いますが、インフルエンザの流行のピークは過ぎていると思われますので、使用機会そのものが減少していくことになるでしょう。従って、異常行動の報告事例の発生は減少していくであろうと思われます。
本来、備蓄を進めるのにタミフルは品薄となっているので、国内での使用があまり多くない方が備蓄は進めやすいように思えます。初めの方に書いたように、世界的に見て「使いすぎ」(笑)という傾向はあるので、是正するべきであろうと思います。すると、これまで使っていた量を備蓄に回せるので、計画は早く進められるようになるかもしれません。
追加というか、前の記事にコメントを Indigoさんから頂戴しましたので、お答えを書いておこうと思います。
まずコメントを引用させて頂きます。
>簡潔に言ってしまえば、儲かるからでしょう。
こちらですが、これはそれほど単純な話ではないです。そもそも現在の薬価というシステムでは、どのような薬を処方するかと、どれほどの利益が出るかは基本的に関係ありません。
いわゆるジェネリックでもない限り、現在医薬品の仕入れ価格と薬価はほとんど同じで「高価な薬(ジェネリックの無いオリジナル等)」ほどその傾向は強く、タミフル(これ自体もさして高価な薬ではないですが、薬価差は事実上ゼロです。)を処方することが利益に繋がるという事実は、少なくとも現場レベルではありません。投薬、処方はその薬品数(というか処方数)に応じて保険請求額が上がるだけなので、飲み方の違う薬を複数出す方が儲かります。タミフルなんかだすよりも、咳止めシロップと胃薬でも出した方がずっと儲かるんです。
更に言うと、ジェネリック(我々は通常「ゾロ」という蔑称を使います)を使った方がオリジナルを使うより遙かに儲かります。既述の通り、オリジナルはほとんど薬価差ゼロなのでそれ自体からは利益は出ない上に、販売単位が使用単位と一致しないため在庫リスクがシャレになりません。
ところがゾロの場合、薬価も安いのですが実売価格はそれよりかなり安い物が大半で、使用することで在庫リスクを合わせても確実に利益が出ます。
しかも、後発品加算という「ゾロ推奨ポイント」が付くのでゾロを使うというだけで保険請求が増やせます。このため、ゾロを使うことは二重に「儲かる」のです。
このあたりの実情は誤解されているのか、敢えてミスリードを誘っているのか、「高価な薬を使うと現場は儲かる」という嘘がまかり通っているので正直閉口しています。
患者側の要求に沿うことで結果的に「客」が増えるという話ならともかく、タミフルの使用自体が直接利益をもたらす、という認識であれば、もう少し事実関係の確認をお願いします。
念のために言ってきますが、殿様商売な中外からタミフルを使用することでバックマージン、なんて話は聞いたことがありません。そんな結構な話があるなら是非ウチにも持ってきてもらいたいくらいです。(笑)
このように「儲かるから」ということに対する抗議といいますか、実情をご紹介下さいました。私も実際のところよく知らない部分がありますので、大変勉強になります。有難うございます。非常に大雑把にまとめますと、ご趣旨は「タミフルを出すよりも、もっと儲かる方法がある」ということのようで、平たく表現すれば「タミフルを使うからといって儲かるわけではない」ということかと理解致しました。そこで、お答えしたいと思いますが、恐らくあまりに無駄に長かったのでお読みになるのが苦痛になられて、もう少し下の方をお読み頂かなかったのではないかと思います。
で、一部分は記事中に書いてあります。
『すると、抗生剤だの、解熱剤だの、咳止めだの、去痰剤だの、イソジンだの、あれこれと持たされるということになるのです。胃薬も付いてくるかもしれません。そうして比較的軽度の疾患であっても、医療費を消費してしまい、薬剤費が伸びることになるかもしれませんね。』
これは Indigoさんがご教授下さった、方法論と似ていますね。当たらずといえども遠からず、というところでしょうか。
で、「タミフルを使えばなぜ収益アップに繋がるのか」ということを説明したいと思います。前の記事の文脈から言って、私の意図していたところは「感染症の大部分は投薬が必要とも思えない」ということであることはご理解頂けると思いますので、即ち「何も投薬しない場合」と、「タミフルを投薬する場合」の比較ということになります。
で、早速お答えしていきたいと思います。
第一に、迅速検査のような検査が算定できるのではないでしょうか?正確には知らないですが、インフルエンザの診断を得るのに、検査を行うのですから、この請求が可能なのではないかと思われます。(増点1)
第二に、投薬に伴う処方料等の請求ができるのではないかと思われます。、院外処方では処方箋料が算定できるものと思っていました。(増点2)
第三に、薬剤仕入れを何処で行っているかによるかもしれませんが、院内よりも院外というのは利益が大きいと考えられます。Indigoさんのおっしゃるように、現場では儲けなんて殆どない、というのは実感として正しいのかもしれませんが、保険点数以下の納入が行われるという実態はほぼ皆無に等しいでしょう。医院などで仕入れると納入価格と保険請求価格にはほんのごく僅かしか差額は残されないと思いますが、処方、調剤や薬剤情報提供に係る費用を請求できる(増点3)のではないでしょうか。院外処方の場合ですと、主としてドラッグストアなどの利益となります。薬価差益自体は残存しており、通常R幅などとして決められているのではないでしょうか。2%くらい。これは厚生労働省側が設定してくるものであると理解しています。
しかし、儲けの本体はそんな処にはないでしょう。主に大手のチェーンストアに見られる手法でしょうけれども、取引額が大きいということから、価格交渉力が強いドラッグストアは存在しています。独禁法で言うところの「優越的地位」に近い実態なのではないかと推測されます。つまり納入業者は、保険請求価格から乖離した低い納入価格を強いられやすい、ということになります。そうした価格設定に不満なのであれば、ドラッグストアが「もっと安い業者から買うから、もういいよ」と言ってしまうことが可能だからです。それを怖れる(大手なので買入額が大きく経営上の影響力がかなりある)納入業者は、安い納入価格に同意せざるを得ないということです。大手チェーンストアが用いているのは「総価取引」と呼ばれる方法です。納入額によって値引き幅を変えるというシロモノで、薬剤の総納入額に連動しています。高額医薬品が多ければ納入総額が増大するので、値引き幅は大きくなっていくはずです。大手ドラッグの「総価取引」による値引き効果は6%くらいと言われています。従って、年間薬剤費がざっと6兆円以上、うちチェーンドラッグストアの売上は3兆円規模ですから、納入するだけで差益約1800億円をドラッグストアが召し上げていることになります(増点4)。「薬剤総額が増加すれば儲かる」ということが間違っている、とは言えないのではないでしょうか。
以上のように、増点1~4までを見れば、タミフルを一切処方しない場合に比べれば処方した場合には「儲けが増える」言ってもいいのではないかと考えます。
勿論、タミフルを処方されない場合よりも、処方された場合の方が利益が大きいということは多々あるので、全部がデメリットばかりとも言えないことは確かです。タミフルを使うなと主張しているわけでもありませんし、儲けることを全部否定しているという意図ではありません。