前の記事に興味深いコメントを頂戴しましたので、少しお答えをしたいと思います。
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米中連携ということ
・日本にとって、中国は脅威なのか?
答えは、イエス、です。ただ、脅威と呼ぶのは、中国だけではありません。それは北朝鮮、中国やロシアといった通説的な存在だけに限らず、例えば韓国もやはり脅威と呼ぶことになるでしょう。そういう意味において、イエスですということです。
・米軍を国内にキープしておくことが安全保障となるか?
これは部分的にイエスですが、全面的に賛成ということにはならないかと思います。そう述べる理由というものについて、後述いたします。
これまでの経過を展望してみると、中国と米国との関係について、当方の個人的とらえ方というものがあるので、それを書いてみたいと思います。
①日米安保は必要だった
戦後のある時期までは、日本国内でのテロ活動などが盛んに行われているくらいでしたので、日本が独自に安全保障を担うということは困難であった面はあると思います。共産化の阻止という点においても、日米同盟というのが望ましい選択だったと個人的にも考えています。ソ連と中華人民共和国の存在は、日本にとって間違いなく脅威となっていたものと思います。
②「日本こそが脅威」ということ
日本は奇跡的な経済復興を遂げ、世界第二位の経済国家という地位を獲得するに至りました。これが60年代末ということになります。当時の米ソ対立は当然として、中国とソ連との関係悪化が進んでいったことが、アジア情勢の変化をもたらしたものと思います。米国にとっては、日本と中華民国(台湾)というアジアの要石があったわけですが、米国にとっての中華民国の重要度と価値は低下していったのであろうと思います。米国は、対ソ連との冷戦には中華人民共和国という「巨大な大陸国」を必要とした、ということだと思います。これは、中国側の思惑とも一致していた。
そして、もう一つの点としては、日本の存在だったと思います。
将来予測として、日本がこれほどの急速な復興を実現できたということは、また昔のような「侵略国」へと変貌するのはないか、という恐れが米中両国に芽生えていたのではないか、ということです。つまり、アジアの脅威とは、北方のソ連を除けば、日本以外には考えられない、というような状況です。ゆくゆく、例えば北朝鮮と結んだ日本が敢然と挑戦してこないとも限らず、韓国は挟み撃ちに遭って半島統一を実現されてしまいかねない、といったような恐怖、ということです。
経済大国になってゆけば、いずれは日本がそういう挑戦的な立場をとるようになるかもしれず、日本をどうしても押さえつけておかねばならない、という事情というものが、米中にあっても当然ではないかな、ということです。
それが、ニクソン訪中から中国が承認されるに至り、台湾は排除された、ということでしょう。所謂、「ビンの蓋」論というのがあるそうですが、在日米軍は日本の暴走を止めるための重しとしての意味が込められているそうで、だからこそ米中関係は70年代に強化されていったものと思います。中国にとってのアジアの脅威とは、日本だったのではないか、ということです(ソ連もそうですが)。
実際、中国が常任理事国となった後の74年にパラセル諸島紛争が起こり、対ベトナムとの争いが勃発しました。米軍が撤退した後のベトナム戦争末期であり、米国が中国と協力をはじめて数年後ですね。
いずれにせよ、70年代以降は、米中にとって日本は忌まわしき存在として、大きくなってきたのではないかな、ということです。自衛隊が新たな装備を増やすと、「侵略兵器だ」「軍国化だ」とアジア諸国からの猛烈な反発が出ている、と毎回大騒ぎされていましたが、ああいうのも似たようなものではないかと思います。韓国の朴大統領が日本の軍事費負担が少ないと文句を言ったとかいう説が報道でありましたが、そうであるなら自衛隊の装備を増やすのには諸手を挙げて賛成ということになるはずが、そうではなかったようですからね。
③日本にとっての脅威とは
かつてのソ連があった時代であれば、確かに冷戦構造というのがありましたし、脅威ではあったけれども、80年代後半以降には紛争の変化が訪れたと思います。米国にとっての日本は、本当に脅威とならざるを得なかったということです。経済戦争は激化していきました。あらゆる手段を駆使して、日本を押さえつけることに腐心していきました。
バブル期を迎えて、日本の絶好調は終わりを迎えました。
米国に挑戦してくるのではないか、という不安は、バブル崩壊と共に去ってゆきました。日本は普通の国になったということです。米国にとっても、「アン牌」という地位になったということです。
日本からすると、最大の脅威であったのはソ連なき後で考えると、やはり米国だったものと思います。
現時点での脅威の程度を比べても、中国より米国、北朝鮮よりも米国が「日本にとっての真の脅威」です。恐らく、米中が手を結んで以降、特に80年代後半以降の日本にとっては、どの国よりも脅威となってきたのは米国ではないか、というのが私個人の捉え方です。
そうすると、在日米軍をキープしておくことというのは本当に安全保障となりえるか、ということになりますから、言ってみれば監視装置を体内に埋め込んでいるようなものです。
過去25年くらいの、日本にとっての危機局面をふりかえると、それはほとんどが米国を対象とする出来事だったのはないのかな、ということです。原因の多くは、ソ連や中国や北朝鮮なんかにはなくて、むしろ米国だったのではないか、ということです。
本当に同盟国であるということならば、例えば竹島問題なんて、割と小さい話ですからどうにでもできたはずです。また、北方領土についてもソ連崩壊後でさえ日本の立場ということに何らかの支援というものがあったわけでもありません。
どうしてかといえば、米国にとっての脅威対象国が日本であるのに、その当事国に支援などするわけがないから、です。日本に有利になるようなことなんて、別にこれといってないと思いますよ。安保理改革だって、日本には絶対に(常任理事国の)イスには座らせない、という立場を貫いていましたからね。
重しとして置く必要がある、というのであれば、まあそういう考え方はありますね、ということはあると思います。
けれども、特に「在沖海兵隊がどうしても必要不可欠」かというと、はいそうですかと簡単に同意できるものではありません。
④米国にとっての中国は脅威か?
以前のイラクのように、支援したり特定の関係というものを続けていながら、いずれは米国に逆らうとか挑戦してくるといったことがあるかもしれず、そういう意味においては多少の不安というものがないわけでないかもしれない。
他には、互いの思惑がズレてくるとか、約束を守るべき意義が失われるといったことがあれば、それも関係悪化となり得るであろう。日中が手を結んで米国を疎外するというようなことも、やはり許すことはできないと考えるであろう。
ただ、日本に攻め込むとか、台湾を軍事的に獲りにゆくと見做しているか、といえば、それはどうだろうか。かなり疑問ではある。そこまでの実行力とか運用能力とか、中国軍に評価を与えているとも思われないが。
現実的な選択肢を考えると、中国のデメリットが多きすぎるし。
⑤米国にとっての日本
脅威としての存在ではなくなった。利用価値はまだ残されている、というのはある(まだ出せる金をちょっとばかり貯め込んでいる連中がいるからだ。カモとして毟るには好都合ではある)。
だが、反抗的な態度に出ようとしていたのは許せないし、面白くない。
そういう時は、罰を与える、ということである。ま、誰にどんなのが与えられたかは、御想像にお任せだけど(笑)。
以上、ざっとですが概観してみました。
在沖海兵隊がいるから安全といった見方をするのには、かなりの抵抗があるということは改めて言っておきたいと思います。