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「constant gain learning」とデフレ

2010年09月05日 17時48分15秒 | 経済関連
こちらの記事経由で知った。

はてなブックマーク - もう一つのブラード論文 - himaginaryの日記

武藤さんって、本格派なのね(笑)。
日銀の人、みたいな漠然としたイメージしかありませんでしたが、こんなペーパーを残しておられたとは。


それは関係ないですが、こうした「学習」がモデルに取り込まれているというのは知りませんでした。でも、普通の人々がどのように生活し、どのように経済予測―平たくいえば、日々の儲けや商売なんか―を考えたりするか、ということを思い起こせば、何となくは想像できそうではありますね。


経済学のモデルに登場する「学習」というのとは若干異なるけれども、それに類することは書いたことがあります。

どうすれば、日本はデフレを脱却できるか?~その2


何となく、疼痛におけるsensitizationの話とか、長期増強(LTP)(長期増強 - Wikipedia)なんかと似ている部分があると感じたもので。

過去の観察結果から、今後の見えない割と近い未来を予想しているんじゃないのかな、というのはそうだなと思いますしね。
ただ、大きく「書き換える」には、少しくらいの出来事か時間(期間)では、そこまで行かないんじゃないかな、ということです。

例えば、土地の値段は「過去数十年上がり続けてきた」という観測結果を知っていると、多くの人々は「今年は少し下がったけれど、多分いずれ上がってくるだろう(元のトレンドに戻るだろう)」という風に考えるのではないかな、と。そうであれば、「ここ1~2年は土地の値段が下がった」という観測結果が事実であるのに、未来予測としては「きっと土地の値段が上がる」という期待を持つ、ということになるかと思います。

この「きっと土地の値段は上がるだろう」という想定ルールが書き換えられるまでには、かなりの大きなショックとか長い年月がかかるのではないか、とも思うのです。それはここ直近の数年程度の値下がりとかくらいでは、そう簡単に改訂されないものなのではないか、ということですね。

しかし、これがひとたび改訂されてしまうと、戻すのは容易ではなくなる、ということではないかな、と。「土地の値段は90年以降の20年で下がり続けてきたので、今後も上がる見込みはないだろう」という予想が強まると、かつてのルール(見通し)だった「きっと土地の値段は上がるだろう」というのが消滅し、代わりに「今後も上がらないだろう」というルールを定着させてしまう、ということです。
そうなると、「今、上がっているように見えるのは、一時的なものに過ぎず、いずれ下がるだろう」という期待(将来予測)を持ってしまう、というようなことです。以前には、「下がっているのはあくまで一時的なもの」という評価であったものが、逆になってしまっている、ということですね。


なので、学習効果によって、将来予測に対するルールが書き変わってしまうと、これを解除するのは容易ではない、ということになり、これが土地や株の価格ばかりではなく、「ほぼゼロか、極めて低い金利」「下がり続ける物価」という将来予測が定着してしまっていると、デフレとの親和性が強固になり、この期待を覆すのが容易ではなくなっていると思うのです。だからこそ、ここまで長期的にデフレが継続してしまう、ということを呼び込んでいるのではないか、と感じたわけです。


従って、かなり強力な策を実行しない限りは、そう簡単に人々の期待を変えることなど難しいのではないか、ということです。
また、経済主体は直面するデータというのが、必ずしも「全員同じで一致しているわけではない」ということも重要でしょう。

家計別の物価上昇率の話


一つの数値は、全てに適用できるわけじゃない、ということです。