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小倉秀夫弁護士に代わって反論してみた

2012年07月02日 22時15分33秒 | 社会全般
原発再稼働反対派のオレがやって来ましたよ(笑)。

最近、ネット上では殆ど見かけなかった(もう撤収でもしたのかと思っていた)小倉弁護士が、まだ御健在のようだった。

>http://togetter.com/li/330878


別に小倉弁護士の肩を持ちたいわけでもないし(むしろ同じ側にいるというだけで不名誉な気がしたりするくらいだ)、掩護したいという気持ちもないが、一応反対派であるので、少し述べておきたい。

ざっと読んだが、まあ、小倉弁護士がまさにサンドバッグ状態になっているかのようだ。タイトルにここまでバッチリ書かれるくらいだから、やられ放題ということはよく分かるわ。
@sapporo_econ とかいう、恐らく経済系の人物は、してやったりというところか。まあ、言い返せない小倉弁護士がナンだな。


代わりにというわけではないが、当方の反論を若干書くことにする。
自動車事故の場合と何が同じように考えるべきで、何が違うかということを指摘する必要がある。まず、事故による死亡リスクをもって、原発再稼働反対派は自動車にも反対せよ、というのは必ずしも通用しない。当方は、原発事故による死亡リスクは自動車事故よりも高い、といった主張をしているものではない。
反対理由は、他にも存在するということである。


以下で自動車事故について考える時には、運転者による事故ということだけにする。歩行中とか同乗者とか車対車とか、実際には色々あるが、簡略化した方が理解しやすいと思いますので。


①責任主体が不明確

自動車事故であれば、単純化すると加害者と被害者となって、賠償責任を負う主体は明確である。しかし、原発事故であると、必ずしもそうではない。法律上では、事業者が責任を負うことになっているが、東電の前会長も新社長も、揃って「事業者では払えない、国が賠償するべき」ということを言っていた。経団連会長や全銀協会長もそう言っていたわけである。他の電力会社社長(確か関電だったような)も、国が責任を負ってくれないと事業者としてはやってられない、みたいなことを言っていた。

つまり、原発事故に関しては、賠償責任を負うのが誰か、という点については、事業者、その資金提供者や投資家たちにさえもよく分からない(分かっていない)、今もって不明確のままである、ということだ。

自動車事故の場合には、運転者が負う。賠償義務は、運転者である。原発事故では、賠償する(実際に金を出す)のが誰なのか不明である。


②事業者は原状回復義務を負うものと考えるべき

常識的に考えると、当然のようであるが、福島の事故でもそれが適用されているかどうかは定かではない。

○電気事業法 第六十四条
電気事業者は、第五十八条第一項の規定による土地等の一時使用が終わつたときは、その土地等を原状に回復し、又は原状に回復しないことによつて通常生ずる損失を補償して、その土地等を返還しなければならない。


○電気事業法 第六十二条  
電気事業者は、第五十八条第一項の規定により他人の土地等を一時使用し、第五十九条第一項の規定により他人の土地に立ち入り、第六十条第一項の規定により他人の土地を通行し、又は前条第一項若しくは第三項の規定により植物を伐採し、若しくは移植したことによつて損失を生じたときは、損失を受けた者に対し、通常生ずる損失を補償しなければならない。


これらの法律が準用されるであろうことを推測するなら、避難させられている方々や汚染地域の方々に賠償しなければならない、ということになるはずである。問題は、これを誰が払うのか、ということである。


③保険の問題

自動車には強制加入である自賠責保険と、任意保険がある。賠償責任を負うのは運転者であり、賠償は基本的に保険で支払われる。任意保険に加入していない場合もあるが、賠償義務は残り続ける。店などに車が突っ込んだりしても、原状回復と休業期間などの補償をすることになると考えられ、基本的には運転者が賠償責任を負い、保険で大半が支払われる。保険の引受先があるから、である。政府と民間の両方である。

原発事故に関しては、政府の保険と、民間の責任保険だが、いずれか一方だけしか払われない(※ちょっと訂正、一方ではないな、両方からの支払いはあり得る。スマン)。その上、金額が過少である。福島原発事故級であると、保険の引受手が民間保険会社にはこれまでのところ存在していない。何故存在しないかといえば、契約にならないからであろう、と思われる。もっと平たく言えば、金額が多き過ぎて払いきれないから、である。つまり、普通の経済活動の原理からすると「成り立たない」(と民間会社が考えている、判断している)、ということになる。


④意思決定の権限

運転者は、基本的に自己の意思決定によって選択する。危険性が高いということを重々承知の上で、自ら選択するということである。当然、その事故の発生には責任を伴う。賠償義務も負うことになる。そうしたリスクを避けたい人には、運転しない、という選択権が与えられている。

原発には、選択権は与えられない。自己の意思決定が反映されない。原発事故を避けたいという人にとっても、一蓮托生で原発運転が行われる。

自動車交通の場合、これを代替する手段は極めて少ない。自動車を使う利益をほぼ代替できるものというのは、基本的にはない。しかし、原発の場合であると、他の火力発電等での代替は不可能ではないし、現に実現されたのが昨年の東電管内であった。


⑤意思決定に反して賠償を割り当てられる

自己の意思決定権限が、自動車運転の場合にはあるのであって、その危険性について賠償責任を負う、という「意思決定があるからこそ賠償義務も発生する」という関係になっているが、原発事故の場合であると「意思決定に反しているにも関わらず賠償義務だけ負わされる」ということになってしまう、ということである。

もし賠償を政府の税金などではなく、完全なる「使用(利用)者負担」ということにするなら、自動車事故の場合と同じような関係にできるであろうが、電力会社や経済界の言い分では、そうならない。保険でかたをつけてくれればいいものを、それもできない。もし保険で済むならば、巨額保険料だろうと何だろうと原発を利用したい人間が保険料込みの電気料金を払えば済むだけなので、そうしてくれればいい。


⑥電力会社の義務違反の可能性

原発建設前に、用地取得や建設についての説明会などがあることが殆どであろう。その際、正確なリスクというものについて説明したかどうか、ということがあるだろう。もしも、格納容器から放射性物質が漏洩することなど、あり得ません、とか言ってたりすると、その説明に反して事故が起こって漏洩したのならば、義務違反が疑われるであろう。
正しい説明があったのなら、建設容認という決定をしなかったはずだから、である。こうした義務違反があるなら、やはり事業者の賠償責任は逃れることはできないはずである。


まとまりがつかない感じになってしまった。

とりあえずまとめると、「どうしても再稼働したい」ということならば、

・電力会社が全ての賠償義務を負う
・賠償額が膨大なので、その保険を強制化
・原状回復義務を果たせること
・利用者負担、利用者責任を原則

というのが確認できることが必要。
自動車運転であると、運転者が賠償義務を負い、強制保険があり、店舗などを破壊したら殆どは回復され、車を運転する人間に負担と責任がある、ということである。原発稼働もそうするというのなら、一考の価値があるものと思う。