私は小児科医ですが、
希望があれば思春期のニキビも治療しています。
基本は外用療法と漢方の併用です。
外用療法(3つを併用)
ディフェリン®ゲル
アクアチムクリーム
保湿剤
漢方薬(証とphaseにより使い分け)
清上防風湯(58)
荊芥連翹湯(50)
桂枝茯苓丸加薏苡仁(125)
十味敗毒湯(6)
さらに「よりよい方法はないか」と模索中に出会った本、
▢ 「ニキビは皮膚科で治す」(鳥居靖史著、2022年発行、現代書林)
今回はこちらの書籍を読んでみました。
鳥居先生は、2008年以降に登場した4種類の「面疱治療薬」を使い分け、
補助的に漢方薬を併用して治療成績をあげている方です。
漢方薬の使い方が一部参考になりましたので、
メモしておきます。
<鳥居先生の治療方針>
(治療開始時)十味敗毒湯で面疱治療薬の刺激症状を緩和。
(炎症遷延時)荊芥連翹湯へ変更
(生理で悪化)桂枝茯苓丸加薏苡仁へ変更
【十味敗毒湯】
・皮膚の赤味やかゆみを軽減させる。
・腫れや化膿を抑える。
・面疱治療薬の副作用(刺激症状)を軽減する効果が期待できるので治療初期に併用。
・桜皮(オウヒ)という生薬が含まれている製剤と、桜皮の代わりに撲樕(ボクソク)が含まれている製剤があり、男性のニキビには後者の方が効果的。
【荊芥連翹湯】
・尋常性痤瘡治療ガイドライン2017で推奨度C(選択肢の一つとして推奨)
・抗菌作用があるため、抗菌薬アレルギーの患者さんにも使用可能、さらに抗菌薬との併用で相乗効果が期待できる。
・炎症が起きているニキビだけでなく、白ニキビや黒にきびにも有効。
・ニキビ跡を残りにくくする効果があり、膿を持つニキビが多い患者さんに。
・炎症の強いニキビがたくさんある患者さんで、抗菌薬を3ヶ月(※)飲んでも炎症が残っている場合に使用する。
※ 抗菌薬を長期に服用すると耐性菌が生じるリスクが高くなり、漢方薬の助けを借りる。
【桂枝茯苓丸加薏苡仁】
・生理前にニキビが悪化する女性に。
・血液の巡りをよくしてニキビやシミを改善する効果あり。
私は小児科なので思春期のニキビの相談が多いため、
治療初期には清上防風湯(58)を処方することが多いです。
ただ、清上防風湯と荊芥連翹湯はとても苦いのが難点。
その味を受けつけない患者さんには、十味敗毒湯を処方してます。
十味敗毒湯は苦い2剤と比べると飲みやすい味で、
なんと錠剤も用意されていますので、受け入れてもらえることが多いです。
この十味敗毒湯に「面疱治療薬の初期の刺激症状を軽減する」効果があるとは・・・初耳です。
荊芥連翹湯はアレルギー体質改善作用もあり、
「あの漢方を始めてからニキビとアレルギー性鼻炎(鼻づまり)がよくなりました」
と教えてくれる患者さんもいます。
また、桂枝茯苓丸加薏苡仁のベースは桂枝茯苓丸という生理周辺の体調不良用の薬であり、
これを飲んでいる患者さんから、
「あの漢方を飲んでいるとニキビだけでなく生理痛が軽くなりました」
という声を聞くこともあります。
これらは西洋医学では期待できない、
漢方独特の効果の出方ですね。