韓国最大のインターネット書店YES24が年末に実施した<第8回ネチズン選定、今年の本2010>と、代表的大型書店教保文庫の<2010年今年の本>の結果から、2010年韓国ではどんな本が読まれたか見てみます。
※参考記事は →コチラとコチラ
まずYES24の<第8回ネチズン選定、今年の本2010>から。
あらかじめ提示された5つの分野、120冊の候補の中からインターネットで投票するという形式で、今回は過去最多の97,556人が参加。
総合ベストテンは次のとおりです。
①マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(30,068票)
②パク・ジヨン、ユ・ソヨン、コンジョ「イ・ジュンギといっしょに話すアンニョンハセヨ韓国語1:中国語版」(24,065票)
③盧武鉉(著)/盧武鉉財団、柳時敏(共編)「運命だ」(10,065票)
④ベルナール・ウェルベール「パラダイス1」(9,358票)
⑤申京淑「どこからか私をよぶ電話が鳴って」(8,017票)
⑥ニック・ブイチチ「ニック・ブイチチのハグ」 \t
⑦朴婉緒「行けない道がより美しい」\t
⑧趙廷来「かかしの舞(허수아비춤)」\t
⑨大津秀一「死ぬときに後悔すること25」\t
⑩パウロ・コエーリョ「ブリーダ」 \t
①は、日本でも話題になりました。韓国題は「정의란 무엇인가(正義とは何か)」です。
②、「王の男」のイ・ジュンギは中国でとくに人気で、ペプシのCM等でも注目度が高いようですね。しかし、中国人向けの韓国語学習書がなぜこんなに票数を獲得したのか、今ひとつわかりません。
一応、この本関連の動画がYouTubeにありましたので、イ・ジュンギファンの皆さんはぜひ見てみて! →コチラです。
③、今も前大統領ファンはかなりいるようです。
④、第1作の「蟻」以来、韓国ではなぜか圧倒的人気のフランス人作家の小説。現在YES24のベストセラー8位にランクされている最新作の「カサンドラの鏡」では、主人公は脱北したフランスに渡ったコンピューターの天才少女だそうです。韓国人読者へのサービスかな?
⑤は、昨年7月24日の記事で紹介しました。深~い純文学。昨年のいちばん記憶に残る小説でした。
⑥、ブイチチ(ボイチチ等とも表記)という人は知りませんでした。「生まれつき両手両足が無くただ左足の一部らしきものとその先に足指が2本あるだけという体で神の愛を述べ伝えています」という人だそうです。あるブログに動画つきで紹介されていました。
⑦は、韓国の代表的なベテラン女性作家の散文集。彼女の小説は私ヌルボも翻訳でいくつか読んだことがあります。(→朴婉緒)
⑧、趙廷来も「太白山脈」等で知られる有名作家。
この小説は、ある大企業の会長がさまざまな方法で秘密資金を貯え、有力者を買収していく過程を描いたもの。サムスングループの裏金疑惑が下敷きになっていると思われる社会派小説です。
⑨、大津秀一という人の知名度は高いのですか? 私ヌルボは知らなかったです。副題に「1000人の死を見届けた終末期医療の専門家が書いた」とあります。アマゾンには、多くの人がレビューを書いていますね。
⑩、コエーリョは日本でも(たぶん)よく読まれている部類のブラジル人作家ですが、韓国ではもっと読まれているようです。
各分野別のトップは次のとおりです。
[文学] ベルナール・ヴェルベール「パラダイス1」
[人文/教養] マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」\t
[ビジネス/自己管理] キム・ヨンチョル「サムソンを考える」\t
[幼児・子ども・青少年] チェ・スッキ「おまえは奇跡だ」\t
[家庭/実用] パク・ジヨン、ユ・ソヨン、コンジョ「イ・ジュンギといっしょに話すアンニョンハセヨ韓国語1:中国語版」
「サムソンを考える」の著者キム・ヨンチョルはサムスングループを3年前に退職した弁護士。サムスンの裏金について驚くべき事実を明かした暴露本だそうで、<仕事ニュース+>というサイト内の記事によると李健煕サムスン会長とその取り巻きが子会社から10兆ウォンの資金を盗んで違法口座に隠し、株で運用した等々が書かれているそうですよ。ところがサムスンの力は絶大で、「書評で取り上げる雑誌もほとんどなく、ベストセラー入りを伝える新聞も署名・著者名は一切出さない、という村八分状態」ですと。それが事実だとするとYES24は大丈夫なの?
「おまえは奇跡だ」は、子どもが成長する瞬間瞬間にお母さんが感じる感動や思いを描いた美しい絵本です。

【韓国版「これからの「正義」の話をしよう」】
次にYES24のライバル、教保文庫の<2010年今年の本>を見てみましょう。
まず総合上位7位まで。
①マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」
②チャン・ハジュン「彼らが語らない23項目」
③クォン・ビヨン「徳恵翁主」
④大津秀一「死ぬときに後悔すること25」
⑤イ・ジフン「魂・創・通」
⑥ジョージ・ヴァラント「幸福の条件」
⑦キム・ヨンチョル「サムソンを考える」
YES24と重なってないものを説明します。
②の著者は経済学者でケンブリッジ大学教授。反自由市場主義の立場から、今の不正な資本主義ではなく、本物の資本主義を追求しようというもの。彼の著書は日本でも翻訳されていて、高評価を得ているようです。
③は高宗の王女として生まれた徳恵翁主の伝記小説。1930年旧対馬藩主・宗家の当主宗武志伯爵と結婚したが先天性疾患等のため離婚し、1962年に帰国した後は李垠の妃李方子とともに昌徳宮内に住み、1989年世を去ったということです。
⑤は、超一流企業のCEOや経済経営学者たちへの取材をもとに、彼らの物語に一貫して流れているメッセージやキーワードを発見して公開する、という本。すべての成功の秘訣が<魂・創・通>なのだそうです。
⑥副題は「ハーバード大学 人生成長報告書」。ハーバード大学の研究チームが、1930年代末にハーバード大学に入学した2年生268人の人生を72年間追跡調査したそうです。すると、幸せは7つの条件を50代以前にどのように組み込んでいたかにかかっていたとのこと。また、人生で最も重要なことは人間関係であり、幸福は、結局愛というものだったということです。
各分野別の<人気図書賞>は次のとおりです。
[文学] 村上春樹「1Q84 BOOK 3」
[経済経営/自己啓発]チャン・ハジュン「彼らが語らない23項目」
[人文社会]マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」
[子ども・青少年] イ・ミエ「アマゾンの涙」
[趣味/実用] 60分父母製作チーム「EBS 60分父母」
先のYES24の結果を見て、ヌルボが疑問に思ったのはあれほど売れた「1Q84 BOOK 3」が入っていなかったこと。候補作にもリストアップしていなかったことから考えると、2009年「1Q84」を1位にしたことだし、「BOOK 3」もその続巻としてひとまとめに扱ったのかも・・・。
教保文庫が「BOOK 3」を人気図書賞に選んだのは別個の判断基準によったのでしょう。
「アマゾンの涙」は元はMBC TVのテレビの人気ドキュメンタリー番組"地球の涙シリーズ"の第2作で、劇場版も作られました。それを子どものための読み物として構成した本で、孤児の少女を主人公にして、写真やイラストとともに、部族の生活やアマゾンの自然を描いたドキュメンタリー童話です。
「EBS 60分父母」は、2003年から続いている育児番組の内容を書籍化したものです。
日本の場合、各新聞の暮れに載る年間の主な書籍のリストには学問関係書や文芸評論等が相当数あげられていますが、韓国ではそうした方面の本はなく、実用書が多いようです。
※参考記事は →コチラとコチラ
まずYES24の<第8回ネチズン選定、今年の本2010>から。
あらかじめ提示された5つの分野、120冊の候補の中からインターネットで投票するという形式で、今回は過去最多の97,556人が参加。
総合ベストテンは次のとおりです。
①マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(30,068票)
②パク・ジヨン、ユ・ソヨン、コンジョ「イ・ジュンギといっしょに話すアンニョンハセヨ韓国語1:中国語版」(24,065票)
③盧武鉉(著)/盧武鉉財団、柳時敏(共編)「運命だ」(10,065票)
④ベルナール・ウェルベール「パラダイス1」(9,358票)
⑤申京淑「どこからか私をよぶ電話が鳴って」(8,017票)
⑥ニック・ブイチチ「ニック・ブイチチのハグ」 \t
⑦朴婉緒「行けない道がより美しい」\t
⑧趙廷来「かかしの舞(허수아비춤)」\t
⑨大津秀一「死ぬときに後悔すること25」\t
⑩パウロ・コエーリョ「ブリーダ」 \t
①は、日本でも話題になりました。韓国題は「정의란 무엇인가(正義とは何か)」です。
②、「王の男」のイ・ジュンギは中国でとくに人気で、ペプシのCM等でも注目度が高いようですね。しかし、中国人向けの韓国語学習書がなぜこんなに票数を獲得したのか、今ひとつわかりません。
一応、この本関連の動画がYouTubeにありましたので、イ・ジュンギファンの皆さんはぜひ見てみて! →コチラです。
③、今も前大統領ファンはかなりいるようです。
④、第1作の「蟻」以来、韓国ではなぜか圧倒的人気のフランス人作家の小説。現在YES24のベストセラー8位にランクされている最新作の「カサンドラの鏡」では、主人公は脱北したフランスに渡ったコンピューターの天才少女だそうです。韓国人読者へのサービスかな?
⑤は、昨年7月24日の記事で紹介しました。深~い純文学。昨年のいちばん記憶に残る小説でした。
⑥、ブイチチ(ボイチチ等とも表記)という人は知りませんでした。「生まれつき両手両足が無くただ左足の一部らしきものとその先に足指が2本あるだけという体で神の愛を述べ伝えています」という人だそうです。あるブログに動画つきで紹介されていました。
⑦は、韓国の代表的なベテラン女性作家の散文集。彼女の小説は私ヌルボも翻訳でいくつか読んだことがあります。(→朴婉緒)
⑧、趙廷来も「太白山脈」等で知られる有名作家。
この小説は、ある大企業の会長がさまざまな方法で秘密資金を貯え、有力者を買収していく過程を描いたもの。サムスングループの裏金疑惑が下敷きになっていると思われる社会派小説です。
⑨、大津秀一という人の知名度は高いのですか? 私ヌルボは知らなかったです。副題に「1000人の死を見届けた終末期医療の専門家が書いた」とあります。アマゾンには、多くの人がレビューを書いていますね。
⑩、コエーリョは日本でも(たぶん)よく読まれている部類のブラジル人作家ですが、韓国ではもっと読まれているようです。
各分野別のトップは次のとおりです。
[文学] ベルナール・ヴェルベール「パラダイス1」
[人文/教養] マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」\t
[ビジネス/自己管理] キム・ヨンチョル「サムソンを考える」\t
[幼児・子ども・青少年] チェ・スッキ「おまえは奇跡だ」\t
[家庭/実用] パク・ジヨン、ユ・ソヨン、コンジョ「イ・ジュンギといっしょに話すアンニョンハセヨ韓国語1:中国語版」
「サムソンを考える」の著者キム・ヨンチョルはサムスングループを3年前に退職した弁護士。サムスンの裏金について驚くべき事実を明かした暴露本だそうで、<仕事ニュース+>というサイト内の記事によると李健煕サムスン会長とその取り巻きが子会社から10兆ウォンの資金を盗んで違法口座に隠し、株で運用した等々が書かれているそうですよ。ところがサムスンの力は絶大で、「書評で取り上げる雑誌もほとんどなく、ベストセラー入りを伝える新聞も署名・著者名は一切出さない、という村八分状態」ですと。それが事実だとするとYES24は大丈夫なの?
「おまえは奇跡だ」は、子どもが成長する瞬間瞬間にお母さんが感じる感動や思いを描いた美しい絵本です。

【韓国版「これからの「正義」の話をしよう」】
次にYES24のライバル、教保文庫の<2010年今年の本>を見てみましょう。
まず総合上位7位まで。
①マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」
②チャン・ハジュン「彼らが語らない23項目」
③クォン・ビヨン「徳恵翁主」
④大津秀一「死ぬときに後悔すること25」
⑤イ・ジフン「魂・創・通」
⑥ジョージ・ヴァラント「幸福の条件」
⑦キム・ヨンチョル「サムソンを考える」
YES24と重なってないものを説明します。
②の著者は経済学者でケンブリッジ大学教授。反自由市場主義の立場から、今の不正な資本主義ではなく、本物の資本主義を追求しようというもの。彼の著書は日本でも翻訳されていて、高評価を得ているようです。
③は高宗の王女として生まれた徳恵翁主の伝記小説。1930年旧対馬藩主・宗家の当主宗武志伯爵と結婚したが先天性疾患等のため離婚し、1962年に帰国した後は李垠の妃李方子とともに昌徳宮内に住み、1989年世を去ったということです。
⑤は、超一流企業のCEOや経済経営学者たちへの取材をもとに、彼らの物語に一貫して流れているメッセージやキーワードを発見して公開する、という本。すべての成功の秘訣が<魂・創・通>なのだそうです。
⑥副題は「ハーバード大学 人生成長報告書」。ハーバード大学の研究チームが、1930年代末にハーバード大学に入学した2年生268人の人生を72年間追跡調査したそうです。すると、幸せは7つの条件を50代以前にどのように組み込んでいたかにかかっていたとのこと。また、人生で最も重要なことは人間関係であり、幸福は、結局愛というものだったということです。
各分野別の<人気図書賞>は次のとおりです。
[文学] 村上春樹「1Q84 BOOK 3」
[経済経営/自己啓発]チャン・ハジュン「彼らが語らない23項目」
[人文社会]マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」
[子ども・青少年] イ・ミエ「アマゾンの涙」
[趣味/実用] 60分父母製作チーム「EBS 60分父母」
先のYES24の結果を見て、ヌルボが疑問に思ったのはあれほど売れた「1Q84 BOOK 3」が入っていなかったこと。候補作にもリストアップしていなかったことから考えると、2009年「1Q84」を1位にしたことだし、「BOOK 3」もその続巻としてひとまとめに扱ったのかも・・・。
教保文庫が「BOOK 3」を人気図書賞に選んだのは別個の判断基準によったのでしょう。
「アマゾンの涙」は元はMBC TVのテレビの人気ドキュメンタリー番組"地球の涙シリーズ"の第2作で、劇場版も作られました。それを子どものための読み物として構成した本で、孤児の少女を主人公にして、写真やイラストとともに、部族の生活やアマゾンの自然を描いたドキュメンタリー童話です。
「EBS 60分父母」は、2003年から続いている育児番組の内容を書籍化したものです。
日本の場合、各新聞の暮れに載る年間の主な書籍のリストには学問関係書や文芸評論等が相当数あげられていますが、韓国ではそうした方面の本はなく、実用書が多いようです。