→<ハトの背中を見て驚く脱北漫画家! そのわけは? ▸チェ・ソングク「大韓民国定着記」より>
→<「漢拏山(ハルラサン)血統」とは? 脱北者の送金で豊かになる北朝鮮の家族 ▸チェ・ソングク「自由を求めて」より>
に続く脱北者漫画家チェ・ソングクさんのシリーズ第3回です。
今年は大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が成立してからちょうど70年。双方の体制が大きく異なる上、人の行き来もほとんど遮断され、言葉や一般的な知識・常識だけでなく、物の考え方・感じ方までも大きなギャップが生じています。
韓国に入った脱北者は、まず国家情報院(国情院)で北朝鮮での生活や脱北の経緯等について取り調べを受けたり、ハナ院で韓国社会への適応教育を受けます。北朝鮮でのもろもろを背負い込んだままの彼らだけでなく、彼らとまず最初に接する国情院やハナ院の職員も双方のギャップに直面することになります。
今回の話の舞台は国情院。北朝鮮で聞いていた国情院のことや、北朝鮮の保衛部(=国家安全保衛部→2016年保衛省)のイメージから、ここでも拷問があるのでは?・・・と懸念しています。が、部屋に入ってきた担当職員は、北朝鮮にはいないタイプの美形の男性。脱北者たち、その姿を見てまずオドロキ。
ガヤガヤ 髪の色見ろよ(笑) ワイワイ 資本主義の男~ ガヤガヤ | (なんでこんなにうるさいんだ?) こんにちは。私は・・・・ さあ、こちらに 注目して下さい! 脱北民担当新入要員 |
ところが、脱北者たちは意外な反応!
サーッ! | ビクリ! 何だ! 手、手を下ろして下さい! |
注目しないで、こぶしを突き上げる脱北者たち。私ヌルボも全然意味がわかりませんでした。脱北者たちも、このことについてまたザワザワおしゃべりを始めます。
ガヤガヤ おまえ、わかってるか! 人を見くびらないで、
おまえらのせいで俺まで・・・・ なんでおまえが最初に声を出すんだ! 一度でうまくやろう!
ガヤガヤ
担当職員は、よくわからないまま何とか鎮静化をはかりますが・・・。
(おっ・・・間違ったか? なんでこうなる?) (なんか不安だが・・・ もしかして、こうして私を? いや、まさか! とにかく できるかぎり治めなければ) | さあさあ! 静かにして下さい さあ、こちらに集中します。 注目して下さい! |
自分に対する示威闘争か?ともチラッと思ったた担当職員氏でしたか、気を取り直してもう1度。ところが、また・・・・
サッ! | 手を下ろして下さい。 今こぶしをふりかざして いますが、なんで そうされるのですか? |
すると思いもよらない返答が・・・。
「さっきからゲンコツしろと言ってたじゃないですか?」
えっ!? ・・・思いながらも私ヌルボ、ここから韓国語の説明。つまり<注目(チュモク)>と<ゲンコツ(チュモク)>を聞き間違えていたということ。なのですが・・・。
カタカナだと同じ<チュモク>ですが、韓国語(朝鮮語)の発音&表記は違うのです。
<注目>は<주목>で、<ゲンコツ>は<주먹>。<モク>の発音は英語表記だと前者が<mok>で後者が<meok>。口を開き気味に発音する(後者)か、口を丸めて発音する(前者)の違いです。
(私ヌルボももちろん含めて)日本人の韓国語学習者が苦手な発音ですが、北朝鮮の人たちはこれらを区別して聴き取っていないということでしょうか?
疑問に思ったらすぐ調べるという鉄則に(久しぶりに)したがって検索してみると、ウィキペディアの「朝鮮語の南北差」(→コチラ)の項目に次のように書かれていました。
ㅓはソウル方言では円唇の度合いがより弱く、平壌方言では円唇の度合いがより強い。この円唇性のため、ソウル方言話者が平壌方言のㅓをㅗに近く聞き取ることがある。
なるほど。逆に北朝鮮の人の耳にはㅗがㅓに聞こえるということか。(1つりこうになりました。テヘ。)
なお、この誤解が解けた後の反応にも担当職員と脱北者たちの間のギャップが垣間見られます。
ここで言う<チュモク(주목.注目)>は <チュモク(주먹.ゲンコツ)>ではなく、 集中せよという意味です。本当に おもしろいですよね? ハハハ | 何がおもしろいんだ? ヘンなの そうだったのか! 何がおもしろいんだ? |
今回紹介した南北朝鮮のギャップはまだ序の口レベル。この漫画シリーズだけでもこれ以外にまだいくつか事例が載っているので、また紹介します。