▸2月26日から7泊8日でソウル旅行に出かけ、昨日5日夜帰国しました。ソウルでは映画を3本鑑賞。1つ目は、先週書きましたが韓国映像資料院B1のシネマテクで「罪多き少女(죄 많은 소녀)」を鑑賞。(内容は→コチラ過去記事で少し書きました。) しかし眠たかったこともあって複雑な会話には集中力を欠き、話の全体的な流れがわかった程度。自らの韓国語の聴き取り能力のなさを痛感することになってしまいました。
2つ目は弘大前のミニシアター・想像(サンサン)マダンでフランスとレバノンの共作「カペナウム」を鑑賞。(この作品については→コチラ参照。) レバノンが舞台で、言葉はアラビア語。もちろんハングルの字幕に頼るしかありません。日本で洋画を観る時は、スクリーンの真ん中あたりを見て、視野の端の字幕をチラッと読めばOKですが、今回はハングル字幕を視野の中心近くに置いて、残り4割くらいで全体の画面を見る感じ。字幕もタラタラ読んでいるとダメで、すばやく読み取らなくちゃ・・・というちょっとハードな2時間でしたが、実は少し自信回復。作品はカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞しただけのことはあります。日本では未公開ですが、そのうち公開されるのでは?(ホント?)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/f8/8542612e24d9b50b467c5afc1600a0cf.jpg)
そして3つ目は、三一節の3連休を1番の興行成績で制した「抗拒:柳寛順物語」。2014年8月「鳴梁」を観た(&お手上げだった)鍾路3街の通称ピカデリー(CGVピカデリー1958)で観ました。三一独立運動100周年を期して、<韓国のジャンヌダルク>といわれたりもする柳寛順(ユ・グァンスン)の物語です。(右のポスター中央は主演のコ・アソン。) 柳寛順を描いた映画はこれまでにもありましたが、その制作された時代が反映されていて、今回はというと柳寛順を特別に英雄視せず、西大門刑務所の同じ女子房の女性たちにもスポットを当てている点が注目されます。また実際に決起して大勢が銃弾を受けて倒れるといった場面は少なく、むしろ彼女が入獄してからの1年の<獄中闘争>に重点が置かれています。もちろん、史実とは異なる部分はいくつもあるようですが、いわゆる<慰安婦映画>のような現在の政治問題に直結するテーマでもなく、100年も前の歴史的出来事なので、日本人としてもゆとりをもって(?)観てもいいのでは、と思います。今の日本を批判する「反日」というより、過去の「抗日」運動に韓国自身の歴史的アイデンティティを求める映画でしょう。
なお、今作までの<柳寛順映画>の歴史を詳しく書いた映画評論家パク・ユヒさんの<純潔といばら-韓国映画に表れた柳寛順烈士の表象->というコラムはなかなかの力作で読み応えがあります。(→原文.→google翻訳)
▸1週間ぶりに近所の上映情報を見ると、「グリーンブック」「女王陛下のお気に入り」はまだずっとやってるだろうからいいとして、「ぼけますから、よろしくお願いします。」「バスキア、10代最後のとき」「迫り来る嵐」「ちいさな独裁者」等はシネマ・ジャック&ベティで明後日までで終わっちゃうのか! うーむ・・・。あと「バハールの涙」に「あの日のオルガン」に・・・。週末からの「運び屋」はもちろん期待大。以上全部観たりしてると年間150本ペースになっちゃいそう。むむー。
★★★ NAVERの人気順位(3月5日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(1) 詩人おばあちゃん(韓国) 9.74(129)
②(2) グリーンブック 9.63(3,759)
③(4) カペナウム 9.60(2,051)
④(3) 大人になれば(韓国) 9.59(137)
⑤(6) ボヘミアン・ラプソディ 9.43(38,873)
⑥(7) アンダードッグ(韓国) 9.41(1,310)
⑦(8) ポーランドに行った子供たち(韓国) 9.40(501)
⑧(-) 漆谷の少女たち(韓国) 9.32(181)
⑨(-) 若おかみは小学生!(日本) 9.31(68)
⑩(-) ヒックとドラゴン3 9.27(3,510)
⑧と⑨の2作品が新登場です。
⑧「漆谷の少女たち」は、韓国のドキュメンタリー。原題は「칠곡 가시나들」つまり「漆谷のカシナ(가시나)たち」なのですが、このカシナ(가시나)が何かというと、韓国の中~南部の忠清道・全羅道・慶尚道方面で<女性>を意味する方言とのこと。(<ソウルナビ映画>の<少女>は合ってるのか??) で、<漆谷(チルゴク)>とは慶尚北道の漆谷郡のこと。そこの平均年齢86歳という字の書けなかったおばあさんたち7人が、今ようやく文字を習い、自分の名前も書けるようになって、充実した日々を過ごしているということです。皆さん夫を早く亡くし、今はそれぞれ独立した生活をしながら、町の敬老会を中心に助け合って暮らしているとか・・・。ランキング①位の「詩人おばあちゃん」とほぼ共通した話のようですね。他にも各地で同様の識字クラブのようなものがあるのかな? しかし、説明文中の「これらはすべて1930年代生日本植民地時代韓国語が禁止されて、特に女性の学びが軽視された時代的風土を過ぎ、人生の終わりになってようやく、名前が書けるようになった・・・」云々というところの前半部分は違うんじゃないかな・・・。
⑨「若おかみは小学生!」は、私ヌルボも観ました。日本の多くの子供向けアニメの良いところは<善vs悪>という図式になっていないこと。それにこの作品は大人にとっても観るに値するし、韓国のネチズンたちも7割以上が10点満点をつけてます。周りの人たちも涙、涙とか・・・。上映館が少ないことを残念がるカキコミもいくつもありました。韓国題は「옷코는 초등학생 사장님!(オッコは初等学生社長さん!)」です。
【記者・評論家による順位】
①(1) ROMA/ローマ 8.80(5)
②(2) スパイダーマン:スパイダーバース 8.25(8)
③(3) 女王陛下のお気に入り 8.20(10)
④(4) 天堂の夜と霧(韓国) 8.00(2)
⑤(-) ミニスキュール 2 7.67(3)
⑥(-) 映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ(日本) 7.50(6)
⑦(-) コールド・パシュート 7.50(2)
⑧(6) アリー/ スター誕生 7.43(7)
⑨(7) 顔たち(韓国) 7.40(5)
⑩(8) カペナウム 7.33(9)
⑤「ミニスキュール 2」(仮)が今回の新登場です。フランスのアニメで、韓国題は「슈퍼미니 2(スーパーミニ2)」なのですが、原題は「Minuscule - Les Mandibules du Bout du Monde」で、直訳すると「小文字(ミニスキュール) - 世界の果ての下顎骨」。よくわかりませんが、2014年の前作(これも韓国で公開)に続く第2作ということで、テキトーに仮題をつけました。お話は昆虫の世界。前作でみなしごテントウムシのテングリはクロアリたちとともに森の中を巨大フナやヒアリ集団の攻撃に脅かされつつ旅する物語でしたが、今回はやはりテングリがクロアリの友人トゥムゥミと海を冒険することに。宿敵ヒアリに襲われたトゥムゥミを助ける過程でテングリのテンドリが宅配ボックス経由でカリブ海の島に行っちゃったので救助に向かう? って、虫の世界もグローバルになってるなー。いや、とっくになってますね。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績3月1日(金)~3月3日(日) ★★★
三一節3連休の観客数1位はやはり「抗拒:柳寛順物語」
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(26)・・抗拒:柳寛順物語(韓国)・・・・・・2/27・・・・・・・・・・606,072 ・・・・・・・791,048 ・・・・・・・6,333 ・・・・・・1,094
2(1)・・サバハ[娑婆訶.そわか](韓国)・・・2/20・・・・・・・・・・471,130・・・・・・2,148,526 ・・・・・・17,856・・・・・・・・955
3(3)・・証人(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/13・・・・・・・・・・372,652・・・・・・2,288,410 ・・・・・・18,440・・・・・・・・974
4(2)・・極限職業(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・1/23・・・・・・・・・・330,321・・・・・16,029,818 ・・・・・137,696・・・・・・・・728
5(40)・・自転車王 オム・ボクトン(韓国)・・2/27 ・・・・・・・・・81,082 ・・・・・・・154,332 ・・・・・・・1,167・・・・・・・・587
6(4)・・シンデレラと魔法の王子 ・・・・・・2/20・・・・・・・・・・・60,638 ・・・・・・・267,319 ・・・・・・・1,979・・・・・・・・449
7(8)・・ヒックとドラゴン3 ・・・・・・・・・・・1/30・・・・・・・・・・・34,018・・・・・・1,498,756 ・・・・・・12,277・・・・・・・・209
8(新)・・はずみで結婚(韓国)・・・・・・・・・・2/27・・・・・・・・・・・33,986 ・・・・・・・・70,827・・・・・・・・・541・・・・・・・・482
9(11)・・女王陛下のお気に入り・・・・・・・・2/21 ・・・・・・・・・・33,936 ・・・・・・・104,918・・・・・・・・・882・・・・・・・・128
10(18)・・グリーンブック・・・・・・・・・・・・・1/09 ・・・・・・・・・・28,917 ・・・・・・・343,636 ・・・・・・・2,991・・・・・・・・148
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
今回の新登場は1・5・8位の3作品です。
1位「抗拒:柳寛順物語」は、1919年の三一独立運動に際して故郷・天安で万歳デモを主導したとして捕らわれ、西大門刑務所で獄死した梨花学堂(現梨花女子大)の学生・柳寛順(→ウィキペディア)の、死に至るまでの1年余りの獄舎生活を中心に描いた歴史ドラマ。私ヌルボ、3月4日にソウルで観てきましたが、その感想等は記事冒頭で書いた通りです。原題は「항거:유관순 이야기」です。
5位「自転車王 オム・ボクトン」は、これも三一節を期して公開された韓国のドラマ。日本の統治時代(韓国では日帝強占期という)、日本は朝鮮の民族意識を抑えて自らの支配力を誇示するために全朝鮮自転車大会を開催します。しかし、その大会で日本の選手たちを打ち破って優勝したのは朝鮮人のオム・ボクドン(ピ[Rain])選手でした。日本の計略は失敗に帰し、一方オム・ボクトン選手は無敗を続け、<民族の英雄>として注目され、朝鮮全土は沸き立ち始めます。これに危機感を感じた日本は彼の優勝を阻むため最後の自転車大会を開催します・・・。このオム・ボクドンは実在の人物ですが、ストーリーは相当に今の歴史観で「話を盛っている」との見方が韓国内でも指摘されています。→コチラの<カイカイ反応通信>韓国の<2ちゃんねる>的サイトの<イルベ>の記事を紹介していますが、それには「日本はただ、健康のためにと穏やかに自転車同好会の大会を開いただけなのにね…」「日帝時代だったからこそ「自転車選手」になれたということを大半の韓国人は知らない」等々のカキコミもあります。その上、彼は自転車窃盗容疑で逮捕され1年間刑務所にいた等の報道も出てきました。それも高価な自転車(今の日本だと3~40万円?)を大量に盗んで密輸したとか・・・。といったわけで、「抗拒:柳寛順物語」よりはるかに多額の製作費を投じたにもかかわらず、この順位でも興行面ではほとんど「コケちゃった」感じ。原題は「자전차왕 엄복동」です。
8位「はずみで結婚」は、韓国のラブコメ。原題は「어쩌다, 결혼」ですが、<ソウルナビ映画>では「とんだことから、結婚」、<SARU@saruKmovie>では「気がつけば、結婚」と訳しています。ソンソク(キム・ドンウク)は、財産を受け継ぐためには必ず結婚をなければなりません。また、ヘジュ(コ・ソンヒ)は早く結婚しろと強要する母親と兄たちの圧迫から逃れて自分の人生を探したいと思っています。しつこい両親に負けてお見合いの席で出会ったその2人は、おたがいの目的を達成するために3年間だけ結婚する<ふり>をする契約を結びます。しかし、2人の結婚準備が進むとともに邪魔者は増えていき、越えなければならない山がいくつも。はたして結婚している<ふり>、一緒に住む<ふり>等々、2人の<ふり>は成功するでしょうか?
【多様性映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(2)・・グリーンブック・・・・・・・・・・・・・・・・・1/09・・・・・・・・・28,917 ・・・・・・・343,636 ・・・・・・・・・2,991 ・・・・・・・・148
2(14)・・パピヨン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/27・・・・・・・・・15,684 ・・・・・・・・28,530・・・・・・・・・・・228 ・・・・・・・・189
3(1)・・カペナウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/24・・・・・・・・・・4,321 ・・・・・・・130,699 ・・・・・・・・・1,093 ・・・・・・・・・40
4(-)・・或る夜の出来事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,339 ・・・・・・・・・6,232・・・・・・・・・・・・12 ・・・・・・・・・・1
5(-)・・結婚まで1%・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/27・・・・・・・・・・1,219 ・・・・・・・・・3,195・・・・・・・・・・・・25 ・・・・・・・・・51
2・4・5位の3作品が新登場です。
2位「パピヨン」は、スティーヴ・マックィーンとダスティン・ホフマンが共演したあの脱獄映画の名作(1973)のリメイク。今作は「パシフィック・リム」のチャーリー・ハナムが身に覚えのない殺人罪で収監された絶海の孤島の監獄から脱獄を繰り広げるパピヨンを演じ、その囚人仲間のドガを「ボヘミアン・ラプソディ」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したラミ・マレックが演じます。韓国題は「빠삐용」。日本公開は6月21日です。
4位「或る夜の出来事」は、戦前(1934年)のアメリカのロマンス&コメディの名作の再上映。アカデミー賞では作品賞の他、フランク・キャプラが監督賞、クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベールが主演男優&女優賞、ロバート・リスキンが脚色賞と、5つも受賞しているのですね。韓国題は「어느날 밤에 생긴 일」です。
5位「結婚まで1%」はアメリカのラブコメ。日本では昨年7月新宿シネマカリテの<カリコレ2018>で公開されています。内容紹介は→コチラの記事参照。韓国題は「퍼미션(パーミッション)」です。