ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [4月29日(金)~5月1日(日)]と人気順位 ►いじめ自殺事件を扱った韓国映画「親の顔が見たい」の原作は日本の演劇 ►濱口竜介監督作品「偶然と想像」韓国で公開

2022-05-08 23:57:32 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
※日付注意! 1週前の週末のデータです。

▶今回の記事中で目に留まった韓国映画は「親の顔が見たい」です。
 中学校でいじめに遭っていた生徒が自殺しますが、彼が遺した手紙に4人の名前が記されていたことから加害者と思しき彼らの親が集められ・・・という設定。
 いじめといえば日本でも昨年4月から<文春オンライン>(→最初最新)で継続して報じられている<旭川女子中学生いじめ凍死事件>(→ウィキペディア)は、具体的な事実が明るみに出るたび加害者生徒たちの歯止めの効かない陰惨ないじめと学校側の見え透いた保身に気が重くなるばかりです。40年以上も前の1979年に<上福岡中1男子いじめ自殺事件>(→ウィキペディア)という事件がありましたが、こうした事件に対する加害生徒や保護者、学校側、地元教委等の姿勢がなんと似ていることか! 過去の悲劇がほとんど教訓化されていないことに驚くばかりです。
 韓国でも日本同様いじめが原因の自殺事件はめずらしいことではありません。(※日韓以外の世界各国でもいじめは頻発しています。) 2011年大邱市内の中学でのいじめ自殺事件では加害者生徒2人が実刑判決を宣告され(→コチラ参照)、昨21年7月には光州の高1の生徒がいじめで自殺したと報じられました。(→コチラ参照。)
 そんな中、日本ではすでに2008年2月にいじめ自殺事件をテーマにした演劇が上演されました。それが劇団昴ザ・サード・ステージ公演として新宿シアタートップスで初演された「親の顔が見たい」です。戯曲の作者は高校教師でもある畑澤聖悟さん。2006年の<福岡中2いじめ自殺事件>(→ウィキペディア)の報道で「加害者と思われる5人の生徒たちが葬儀場で笑いながら棺の中を携帯のカメラで撮ろうとしたり「せいせいした」などと言っていた」等の記事に触れて加害生徒の両親を見たいと思ったし、加害者側の話は報道されないので戯曲として残さなければと思った」というのが創作の動機とのことです。ただ、戯曲の設定は実際の事件と違って東京都内のあるカトリック系私立女子中学校に変え、また生徒は登場せず、学校に呼び出された(推定)加害者生徒の親5人と被害者の親、そして校長以下の教員が会議室でそれぞれ感情をぶつけあったりエゴや保身を露出したり・・・という内容になっているそうです。この戯曲は同年度の第12回鶴屋南北賞にノミネートされ(※受賞作は映画化された鄭義信作「焼肉ドラゴン」)、劇団昴の公演後も多くの劇団によってたびたび再演されています。
 そして韓国では2012年1月<第5回現代日本戯曲朗読公演>の中でこの戯曲が朗読されました。観客の反応は非常に大きく、衝撃を超えて興奮レべルだったとか。観客のお1人の感想は→コチラ(自動翻訳)。いろいろ興味深い内容です。「親の顔が見たい」という表現は韓国にはなく、「니 부모 얼굴이 보고 싶다(お前の父母の顔が見たい)」と訳されていますが、かなりキツい語感のようですね。
  ※→畑澤聖悟さんに聞く=この戯曲のあらましとインタビュー
 同じ2012年の数ヵ月後にはソウルの劇団神市による公演が行われます。(→東亜日報日本語版の記事。) 映画監督キム・ジフンさんも「公演を観てとても新鮮でとても痛く衝撃的だった」との感想を抱き、原作者・畑澤聖悟さんと連絡を取って映画にしたいと希望を伝えると、畑澤さんはキム・ジフン監督の「光州5・18」を観覧して快諾します。しかし学校暴力の問題が絶えず繰り返されていて、昨年には一部の芸能人等が学生時代にいじめ加害者だったことが明らかになり、再びいじめが社会問題として浮上したりもしました。(これを受けて「未成年裁判」「豚の王」等のいじめを題材にしたドラマも注目を集めています。)
 こうした中にあって映画化決定以降の過程は順調に進まず、企画からシナリオまで結局5年の時間を費やしてしまいましたが、ようやく公開に至りました。この映画作品は、後述のように舞台はハヌム国際中学校という名門校で、生徒たちは皆男子です。
 私ヌルボ、この映画もさることながら、まず元の演劇を観てみたいと思いました。何度も再演されているので遠からず観られるのでは?と期待してます。
      
【 「親の顔が見たい」のポスター(左)、2012年新国立劇場演劇研修所・第8期生試演会のポスター(中)、書籍化された戯曲(右) 】

▶韓国映画以外で公開してほしいのは香港映画の「はじめて好きになった人」。<第17回大阪アジアン映画祭>(←未見)でのABCテレビ賞(最優秀エンタメ作品賞)受賞作。近年女性同士の恋愛物がやたらたくさんあって観る前から食傷気味なのですが、これはあらすじ読んだだけで興味が湧いてくる感じ。

    ★★★ NAVERの人気順位(5月4日(水)現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
 ※[記者・評論家による順位]とも①等の右の( )は前週の順位。評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
  「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 役割たち(韓国)  9.97(29)
②(2) お母さんと私(韓国)  9.94(16)
③(4) マリムさんをよろしく(韓国)  9.51(90)
④(5) しなやかに(韓国)  9.50(16)
⑤(7) SEVENTEEN POWER OF LOVE(韓国)  9.43(94)
⑥(6) SING/シング:ネクストステージ  9.39(2,658)
⑦(8) 劇場版 呪術廻戦 0(日本)  9.26(1,458)
⑧(9) コーダ あいのうた  9.15(919)
⑨(10) 幸せの答え合わせ  9.02(108)
⑩(-) 巫女図[アニメ版](韓国)  9.01(85)

 新登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ドライブ・マイ・カー(日本)  8.44(9)
②(新) 偶然と想像(日本)  8.40(5)
③(2) 小説家の映画(韓国)  8.00(3)
④(3) アフター・ラヴ  7.60(5)
⑤(4) ベルファスト  7.50(10)
⑥(5) パラレル・マザーズ  7.43(7)
⑦(7) 8月のエバ  7.40(5)
⑧(8) スペンサー ダイアナの決意  7.38(8)
⑨(9) 熱帯往時  7.33(3)
⑩(-) スリー: まだ終わっていない(カザフスタン・韓国)  7.00(3)

 ②「偶然と想像」が新登場です。濱口竜介監督作品は昨年12月「ハッピーアワー」、「ドライブ・マイ・カー」が相次いで公開され、新作の本作品も5月4日から公開。初日の観客動員数は全体7位にランクインしました。韓国題は「우연과 상상」です。

  ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月29日(金)~5月1日(日) ★★★
          2位「親の顔が見たい」をはじめ韓国映画が6作品

【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ファンタスティック・・・・・・・・4/13・・・・・187,146 ・・・・・1,075,526・・・・・11,077・・・・1,256
       ・ビーストとダンブルドア
2(29)・・親の顔が見たい(韓国) ・・・・・4/27 ・・・・159,608・・・・・・・228,459 ・・・・・・2,129・・・・1,004
3(新)・・ソウル怪談(韓国)・・・・・・・・・・4/22 ・・・・・42,800・・・・・・・・・60,912 ・・・・・・・・568・・・・・・474
4(2)・・空気殺人(韓国)・・・・・・・・・・・・・4/22 ・・・・・30,542 ・・・・・・・143,624 ・・・・・・1,345・・・・・・611
5(5)・・ソニック・ザ・ムービー ・・・・・・4/06 ・・・・・28,123 ・・・・・・・287,690 ・・・・・・2,623・・・・・・439
       /ソニック VS ナックルズ
6(3)・・アンカー(韓国)・・・・・・・・・・・・・4/20 ・・・・・22,778・・・・・・・・157,773 ・・・・・・1,544・・・・・・575
7(6)・・SEVENTEEN・・・・・・・・・・・・・・・4/20 ・・・・・16,668・・・・・・・・・41,513 ・・・・・・・・830・・・・・・・80
       POWER OF LOVE:THE MOVIE(韓国)
8(4)・・ザ・ロストシティ・・・・・・・・・・・・4/22 ・・・・・15,062・・・・・・・・101,678 ・・・・・・・・946・・・・・・459
9(新)・・春の日(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・4/27 ・・・・・11,305・・・・・・・・・22,568 ・・・・・・・・167・・・・・・431
10(10)・・バッドガイズ・・・・・・・・・・・・・5/04・・・・・・11,088 ・・・・・・・・15,292・・・・・・・・・159・・・・・・272
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 2・3・9位の3作品が新登場。いずれも韓国作品で、先週ランクインの3作品と合わせて6作品になりました。
 2位「親の顔が見たい」は韓国のドラマ。冒頭に記したように学校内のいじめのため自殺した事件と、被害者・加害者の親等をめぐる作品です。
 名門ハヌム国際中学校の生徒キム・ゴヌ(ユ・ジェサン)が同じクラスの友人4人の名前が書かれた手紙を残し、意識不明の状態で湖畔で発見されます。病院理事長ト・ジヨル(オ・ダルス)の息子ト・ユンジェ(チョン・ユアン)。前警察庁長パク・ムテク(キム・ホンパ)の孫パク・ギュボム(パク・ジヌ)、ハヌム国際中学校教師チョン先生(コ・チャンソク)の息子チョン・イドゥン(チョン・テッキョン)、そして弁護士カン・ホチャン(ソル・ギョング)の息子カン・ハンギョル(ソン・ユビン)。加害者として浮上した子供たちの親は自身の権力と財力を利用し、事件を隠蔽しようとします。しかし担任教師のソン・ジョンウク(チョン・ウヒ)の良心宣言でゴヌの母(ムン・ソリ)も息子の死に関する真実を知ります。世間の注目がハヌム国際中学校に向いて、自分の子供を守るために必死な加害者の親たちの醜い素顔が現れていきます。「誰かの過ちでしょう。でも絶対うちの子ではありません」・・・。原題は「니 부모 얼굴이 보고 싶다(お前の父母の顔が見たい)」です。
 ※ソル・ギョングムン・ソリの共演「ペパーミント・キャンディ」(2000)、「オアシス」(2002)、「ザ・スパイ シークレット・ライズ」(2013)、「1987、ある闘いの真実」(2017)に続いて4回目。(かな?)
 3位「ソウル怪談」は韓国のホラー。暗いトンネルを1人で通る時の怖さ、隣の家から聞こえてくる謎の声、古い家具にまつわるミステリー、他人に向けられる筋違いの嫉妬。復讐、呪詛、欲望から始まった死より怖ろしい恐怖の実体がやって来ます・・・。
 本作の監督はホン・ウォンギ監督。2001年に設立されたミュージックビデオの制作会社ジャニブロスを立ち上げ、CF・ゲームコンテンツ・マネジメント等々多様な分野にわたり業務を展開してきた人物で、音楽と視覚的な表現に重点を置き、昔からあるおなじみの怪談を現代に即してオカルト、クリーチャー、サイコホラー、密閉スリラー等々のジャンルに分け、全く新しい現実密着恐怖を柱に再誕生させたとのことです。原題は「서울괴담」です。
 9位「春の日」は韓国のドラマ&アクション。一時はうまくいっていたが、現在は家族の厄介者で世間知らずの兄貴ホソン(ソン・ヒョンジュ)。8年ぶりに出所して見ると、人より何もできない弟ジョンソン(パク・ヒョックォン)は厄介者扱いされ、結婚を控える末娘ウノク(パク・ソジン)と久しぶりに会った息子ドンヒョク(チョン・ジファン)はホソンが恥ずかしいだけ。知っている人脈をすべてかき集めた父親の葬儀の香典で奇想天外なビジネスを計画し、第2の全盛期を夢見るのですが・・・。と見れば、よりによって勢力争いをしている2つの組織がここに一緒にいるのではないか! そこにちょうど空気を全然読めないホソンの友人ヤンヒ(チョン・ソギョン)が酔って人にからんでるような・・・。一触即発! 収拾不可! 果たしてホソンに春の日が訪れるのでしょうか・・・。原題は「봄날」です。

【独立・芸術映画】
順位 ・・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・恋する惑星 ・・・・・・・・・・・・・1995/4/20・・・・・・・・・3,979・・・・・・・・90,844 ・・・・・・・・852 ・・・・・・84
2(新)・・はじめて好きになった人 ・・・・・・4/27・・・・・・・・・1,542・・・・・・・・・2,854・・・・・・・・・・24・・・・・・・66
3(13)・・スペンサー ダイアナの決意 ・・・3/16・・・・・・・・・1,246・・・・・・・・82,582 ・・・・・・・・776 ・・・・・・10
4(2)・・小説家の映画(韓国) ・・・・・・・・・・・4/21・・・・・・・・・1,226・・・・・・・・・6,875・・・・・・・・・・63・・・・・・・45
5(新)・・狼たち(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・4/27・・・・・・・・・・・617 ・・・・・・・・・1,110・・・・・・・・・・・8・・・・・・・29

 2・5位の2作品が新登場です。
 2位「はじめて好きになった人」は香港の(女性同士の)ラブロマンス&ドラマ。今年の<第17回大阪アジアン映画祭>で上映されABCテレビ賞(最優秀エンターテインメント作品賞)を受賞した作品です。
 舞台は2001年の香港。それまで12年を通して名門の女学校に通い生徒代表をやってきたウィンラム(ヘドウィグ・タム[談善言])はサムユ(ヤン・シヨン[楊偲泳])と親しくなり、やがて友情と呼ぶにはあまりに激しい想いに流されるまでに至ります。ところが周囲の視線もあり学校から叱責を受けてサムユが転校することで2人の関係は一旦幕を引きます。数年後大学生になって偶然サムユと再会した時、2人は「30歳になって共に独身だったら結婚しよう」と約束します。そして今29歳のウィンラムは成功し始めた映画監督。未だ独身の彼女のところに、サムユから電話がかかってきます。それは「結婚式の介添え人になってほしい」というものでした。あのサムユとの約束だけを支えにしてきたウィンラムは動揺する気持ちのまま介添え人を引き受け、結婚式の場に臨むことに・・・。韓国題は「내가 처음으로 사랑한 소녀」です。日本での一般劇場公開は未定のようです。けっこうヒットしそうな感じなので期待できそうなんですけどねー・・・。
 5位「狼たち」は韓国のアクション。守ろうとするヤクザと奪い取ろうとする高麗人マフィアの避けられない戦争が始まる頃、女性たちが連続殺人魔の犠牲となる事件が発生し、警察が大々的な捜査に乗り出します。そんなある日、ヤクザのボスの娘が拉致され、事件は手の施しようもない方向に流れていきます・・・。原題は「늑대들」です。※<高麗人>とはスターリン時代に沿海州から現カザフスタンやウズベキスタン等の旧ソ連内陸部に移住させられた朝鮮人とその子孫のこと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする