▶過日<映画.com>の会員登録をすると、<プロフィール>、(好みの映画の)<映画スタイル>に続いて<生涯ベスト5>というのを書く書式が送られて来ました。なるほどねーと思ってたまたま→コチラを見ると①マッドマックス 怒りのデス・ロード とナットクの作品名になってます。
しかし私ヌルボ、<生涯ベスト5>となると考えれば考えるほどわからなくなってしまいます。20年ほど前に高校生用に作成した<お薦め映画リスト>の約200作品を見ながら絞っていく作業に取りかかったものの、「煙突屋ペロー」・小津安二郎「生まれてはみたけれど」・島津保次郎「隣の八重ちゃん」・田坂具隆「路傍の石」・成瀬巳喜男「鶴八鶴次郎」・今井正「にごりえ」・・・と、戦前の日本映画だけでたちまち五指に余ってしまいます。いずれリストを再整理して<高校生にすすめる本360冊>のようにブログで公開しようと思いますが、いつになることやら・・・。
▶今回の記事で紹介した作品中、個人的に「コレは観たい!」と思った作品は、イ・ジュニク監督の「玆山魚譜」(じさんぎょふ.チャサンオボ)。主演ソル・ギョングは初の時代劇とのことです。下掲の記事では個人的な関心の領域まで書いてしまいました。今から約2世紀前の物語ですが、政治的にも文化的にも、また日本史との比較等でも興味深い時代です。
イ・ジュニク監督の名前は日本の韓国映画ファンの間ではどれくらい知られているのでしょうか? 最近10年間の作品をあげてみると、「ソウォン/願い」(2013)、「王の運命 -歴史を変えた八日間」(2015)、「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」(2015)、「金子文子と朴烈」(2017)の4作で、私ヌルボの好みに合っています。奇抜な展開で観客を驚かしたり、芸術的な描写で観客を眠りに誘ったりせず、自然な撮り方をしていることと、何よりも監督自身の登場人物や作品自体への思い入れが感じられる点に共感します。いずれ日本でも公開されると思いますが、期待しています。
▶この1週間で観た映画は以下の2本です。
・「ヒッチャー ニューマスター版」★★★★(1986年のハラハラドキドキのスリラーで、何人かの人が「これはスゴイ!」と書いていたので観に行ったら、たしかに97分間スクリーンから目が離せなかった。ヒッチハイカーの男を乗せたらそいつがとんでもない殺人鬼で・・・、という話だが、その動機・目的はわからない・・・。私ヌルボも★4.5以上つけるかとも思ったが、冷静に考えてみるとあの名作「ダークナイト」の場合は連続殺人魔ジョーカーに魅力があったことを思うと、コチラは怖さはあっても人物造形に深さがないような・・・、と考えて減点。)
・「アウステルリッツ」★★★★ (セルゲイ・ロズニツァ監督のドキュメンタリー<群衆>3部作をこれで全部観たゾ、と叫んで自分を褒めてやりたい! この作品も94分の最初の10分でフツーの人はタイクツする! そして私ヌルボもフツーの人だしね(笑)。しかし観ているうちにタイクツさが薄らいでゆくというか・・・。内容はベルリン郊外のホロコーストの現場となった元強制収容所の、展示物等ではなく訪れる大勢の人たちを固定カメラでただ撮っただけ、というもの。いやあ、「粛清裁判」「国葬」と、この3作でドキュメンタリーに対する視野が広がったような気がする。得した感じ。<群衆>のパンフ1,400円もしたけど買ってよかった(ホンマか?)。)
★★★ NAVERの人気順位(4月6日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(1) 復活(韓国) 9.65(111)
②(3) そしてパン・ヘンジャ(韓国) 9.53(32)
③(4) アイカ 9.50(14)
④(6) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本) 9.48(1,018)
⑤(2) モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ(韓国) 9.45(38)
⑥(7) カナの婚宴:口約 9.42(374)
⑦(8) ブータン 山の教室 9.42(156)
⑧(-) ランド 9.38(21)
⑨(新) ノガリ(韓国) 9.36(14)
⑩(新) アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~ 9.36(11)
⑨と⑩の2作品が新登場です。
⑨「ノガリ」は韓国のドラマ&コメディ。タイトルの<ノガリ>にはスケトウダラの幼魚の他、バラマキ、嘘等の意味がありますが、本作では後述の映画制作会社の名称が<ノガリフィルム>ににっています。物語の主人公は映画監督のパク・ミングク(本作の監督の自演)。最年少での映画祭に進出し、この名前さえあれば映画人としての花道が保障されていると思っていました。ところが待っていたのは5年間の空白。会社の事務所はハエが飛んでるばかり=閑古鳥が鳴いています。そこにある日100億ウォンの投資を提案したいという1本の電話がかかってきます。条件は、「海兵隊と海女が主人公の戦争映画を作ってほしい」というもの! ところがこの絶好のチャンスを前に、彼らは悩むことになるのですが…。昔から夢は大きく持つべしと言いますね。しかし、これではたして彼らに暖かい太陽がが昇る日がやってくるのでしょうか・・・? 原題は「노가리」です。
⑩「アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~」はフランスのドキュメンタリー。ラップランドは、スカンジナビア半島北部の、スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・ロシアの4ヵ国にまたがる地方です。そのラップランドで撮影された驚くべき成長ドキュメンタリードラマの主人公は人間ではなく、<アイロ>と名付けられた1頭の赤ちゃんトナカイです。<アイロ>は生後5分で立つことを覚え、5分で歩き、5分で走らなければ生き抜くことはできません。やがて彼は広大な針葉樹と氷に囲まれた森やフィヨルドを駆け抜けます。その自然の中で出会うキツネ、テン、白フクロウ、クズリ、クマ、オオカミ、レミング、ウサギ等々のさまざまな動物たちは時には敵であり、時には友だちになるものもあります。多くの捕食者の脅威と予測不可能な状況の中で、アイルは母トナカイの助けを借りて生き残るすべを学び、大人トナカイに成長していきます・・・。ぜひ→予告編を見てみてください! わずか1:29でもけっこう感動的。よく撮ったものです。韓国題は「아일로」。日本では昨年1月にDVDが発売されています。
【記者・評論家による順位】
①(1) ソウルフル・ワールド 8.44(9)
②(2) Mank/マンク 8.14(7)
③(3) スパイの妻(日本) 8.00(5)
④(4) 夏時間[ハラボジの家](韓国) 7.83(12)
⑤(5) ミナリ 7.58(12)
⑥(6) 冬の夜に(韓国) 7.33(6)
⑦(7) アイカ 7.20(5)
⑧(-) TENET テネット 7.18(11)
⑨(8) 本当に遠いところ(韓国) 7.14(7)
⑩(新) 玆山魚譜(韓国) 7.00(9)
⑩「玆山魚譜」が新登場ですが、この作品については後述します。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月2日(金)~4月4日(日) ★★★
イ・ジュニク監督の新作「玆山魚譜」が1位「ゴジラvsコング」に迫る
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ゴジラvsコング・・・・・・・・・・・・・・3/25 ・・・147,077 ・・・・・・・563,400 ・・・・・・5,403 ・・・・1,053
2(47)・・玆山魚譜(韓国)・・・・・・・・・・・・・3/31 ・・・109,036 ・・・・・・・162,848 ・・・・・・1,408 ・・・・1,195
3(2)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・59,915 ・・・・・1,581,467 ・・・・・15,199 ・・・・・・624
無限列車編(日本)
4(3)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・25,345 ・・・・・・・872,959 ・・・・・・7,895 ・・・・・・571
5(新)・・ジョゼと虎と魚たち(日本) ・・・3/31 ・・・・10,023・・・・・・・・・16,032 ・・・・・・・・142 ・・・・・・399
6(4)・・ザ・ボックス(韓国) ・・・・・・・・・・・3/24 ・・・・・9,755・・・・・・・・108,602 ・・・・・・・・854 ・・・・・・・39
7(6)・・ラーヤと龍の王国 ・・・・・・・・・・・・3/04 ・・・・・8,264 ・・・・・・・312,706 ・・・・・・2,890 ・・・・・・198
8(新)・・誰もいないところ(韓国)・・・・・・3/31 ・・・・・7,023・・・・・・・・・14,213 ・・・・・・・・119・・・・・・・353
9(5)・・催眠(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/24 ・・・・・5,726・・・・・・・・・50,550 ・・・・・・・・461 ・・・・・・162
10(新)・・ヒジュラー[海吉拉]・・・・・・・・・3/31 ・・・・・4,488・・・・・・・・・10,051 ・・・・・・・・・86・・・・・・・210
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は2・5・8・10位の4作品です。
2位「玆山魚譜」(じさんぎょふ.チャサンオボ)は韓国の時代劇ドラマ。主人公は丁若銓[チョン・ヤクチョンn](1758~1816)という約200年前の博物学者です。彼は全羅南道羅州出身の学者の家の男兄弟4人中の次男として生まれました。その4人兄弟中一番有名なのは何と言っても末っ子の丁若鏞[チョン・ヤギョンng](1762~1836)でしょう。彼を主人公としたドラマ「牧民心書」(2000)や「チョン・ヤギョン李氏朝鮮王朝の事件簿」(2009)もありますが、とくに日本では人気ドラマ「イサン」(2007~08)で知名度が一気に高まったのでは? 正祖(イサン)の信頼を得て水原城築造に挙重機を設計する等尽力した実学者です。ところが兄弟たちの運命が大きく変わったのが1800年の正祖の急逝でした。兄弟たちは19世紀末当時広まりつつあった天主教(カトリック)に関心を持ち読書会等に参加したりもしていたのですが、正祖に代わって幼い純祖が王となり実権を握った保守派は辛酉教難とよばれる天主教弾圧を推し進め、兄弟中で最も信仰心の強かった三男の丁若鍾[チョン・ヤクチョンng](1760~1801)は処刑されてしまいます。また丁若鏞は全羅南道康津(カンジン)に配流されて18年の流刑生活を余儀なくされます。また丁若銓も1801年全羅道の西南端近くの薪智島に流され、翌年さらに遠い木浦西南沖の牛耳島へ、そして1808年にはそこからはるか西方沖合の黒山島(フクサンド)に移ります。さて、ここからやっとジワッとこの映画の話。「玆山魚譜」とは、この丁若銓が黒山島に行った後に著した海の生物の図譜のタイトルです。具体的には、ゴカイ、ナマコ、イソギンチャク、カモメ、オットセイ、クジラ、ワカメ等々、魚類に限らず甲殻類や貝の他、海鳥や虫、そして海藻も含まれ、見出し項目は全部で226に上ります。物語は丁若銓(ソル・ギョング)が黒山島に来た時から始まります。好奇心旺盛な彼はその地で海の生物に魅了され、本を書くことを決意します。そのためにはと海をよく知っている青年漁師張昌大[チャン・チョンデ]に助けを求めますが、張昌大は罪人を助けることはできないと即座に拒絶します。丁若銓は、その昌大が1人で漢字を勉強して手こずっていることを知り、「私が知っている知識とあなたの魚の知識を教えあおう」と提案すると、彼は受け入れます。2人はどうのこうの言いながらも、次第に互いの師となり友になっていきます。ところがある日、昌大ががんばって勉強しているのは出世のためだという事実を知って若銓はとても失望します。一方昌大も若銓とは目指す道が違うことを認識し、若銓のそばを離れて外の世界のに行きたいと決心するのですが・・・。原題は「자산어보」です。
5位「ジョゼと虎と魚たち」は言うまでもなく最近公開のアニメ版の方ですが、私ヌルボはあえて、というか、<断固として>観ていません。というのは、田辺聖子の原作(1985年)や、
池脇千鶴と妻夫木聡の好演が印象に残る実写版(2003)の肝心なところまで変えられていることを事前情報で知ったからです。このアニメ版を観て感動したならそれはそれとしてケチはつけませんが・・・。韓国題は「조제, 호랑이 그리고 물고기들」です。
8位「誰もいないところ」は韓国のドラマ。イギリスから7年ぶりにソウルに戻った小説家が偶然の出会いと別れを繰り返す中での心の物語です。小説家の名はチャンソク(ヨン・ウジン)。彼はある早春、妻がいるイギリスを離れて7年ぶりにソウルに帰って来ます。彼は本当によかったという思い出があるこの季節の道を歩きつつも、「当時とはずいぶん変わった」と思います。そのように現実なのか小説なのか混然としているようなチャンソクの物語は、たまたま出会った4人の人々との話に続きます。時間を失った女性ミヨン(IU)、思い出を燃やす編集者ユジン(ユン・ヘリ)、希望を求める写真家ソンハ(キム・サンホ)、記憶を生きる女性バーテンダーのジュウン(イ・ジュヨン)。しょせん作り話である小説をなぜ読むかわからないというミヨンは、よく作り上げられた話と人々が信じているというチャンソクが書いた話に一気にのめり込みます。チャンソクの新しい小説の出版を支援する編集者ユジンは、インドネシア留学生だった冬につらい思いで別れた彼氏の話をして予想外の喪失を告白します。ソンハは久しぶりに出会ったチャンソクにいきなり神秘的な僧侶との出会いを伝えて胸に抱いている小さな白い薬箱にまつわる秘密を教えてくれました。闇が深まるソウルのとあるバーで、ノートに何か書いているチャンソクに近づいてきたジュウンは、詩を書くことが好きですと言って自分の心を解く方法について話し、チャンソクにも酒1杯で興味深い記憶を買ってくれと提案します。こうして集められた話はチャンソクが直面するすべての感情を引き出していきます・・・。原題は「아무도 없는 곳」です。
10位「ヒジュラー[海吉拉]」は、台湾の青春ラブロマンス、というか・・・。劉宛婷(姚愛甯[ヤオ・アイニン])と何希真(林意箴[ダイアン・リン])は親友同士の女子高校生。そして2人はイケメン男子の文棠生(許光漢[グレッグ・シュー])を好きになります。(中略) そして劉宛婷は文棠生と付き合い始めたたのですが、ある事故をきっかけに彼女は自分の体が<ふつう>ではないことを知り、希真や棠生の前から突然姿を消してしまいます。その後しばらく経ち、大学生になった彼らが再び宛婷と出会った時、2人はすぐには彼女とはわからず、そして名前も変わっていました・・・。韓国題は「해길랍」。日本公開は未定のようです。※タイトルの意味を説明するとほぼネタバレに近くなってしまいますが、原題の「海吉拉」はヒンディー語の単語の音訳で、<ヒジュラー>でググるとウィキペディアの項目がヒットします。それにしても、姚愛甯がよくこのむずかしい役を引き受けたと思います。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・25,345・・・・・・・・・872,959 ・・・・・・7,895・・・・・・・571
2(新)・・ヒジュラー[海吉拉] ・・・・・・・・・・・3/31 ・・・・・・4,488・・・・・・・・・・10,051 ・・・・・・・・・86・・・・・・・210
3(14)・・さらば、わが愛/覇王別姫・・2017/3/30・・・・・2,572 ・・・・・・・・108,132 ・・・・・・・・984・・・・・・・・88
4(9)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・10/08 ・・・・・・2,286・・・・・・・・・・36,495・・・・・・・・・293・・・・・・・・24
5(再)・・いまを生きる・・・・・・・・・・・・1990/5/19 ・・・・・・1,830 ・・・・・・・・・61,109 ・・・・・・・・465・・・・・・・103
2位「ヒジュラー[海吉拉]」が新登場ですが、この作品については上述しました。
旧作の2作品の韓国題は、3位「さらば、わが愛/覇王別姫」が「패왕별희 디 오리지널」となぜか<the original>が付き、5位「いまを生きる」は「죽은 시인의 사회(死んだ詩人の社会)」で、原題は「DEAD POETS SOCIETY」なので、韓国題はその直訳。
しかし私ヌルボ、<生涯ベスト5>となると考えれば考えるほどわからなくなってしまいます。20年ほど前に高校生用に作成した<お薦め映画リスト>の約200作品を見ながら絞っていく作業に取りかかったものの、「煙突屋ペロー」・小津安二郎「生まれてはみたけれど」・島津保次郎「隣の八重ちゃん」・田坂具隆「路傍の石」・成瀬巳喜男「鶴八鶴次郎」・今井正「にごりえ」・・・と、戦前の日本映画だけでたちまち五指に余ってしまいます。いずれリストを再整理して<高校生にすすめる本360冊>のようにブログで公開しようと思いますが、いつになることやら・・・。
▶今回の記事で紹介した作品中、個人的に「コレは観たい!」と思った作品は、イ・ジュニク監督の「玆山魚譜」(じさんぎょふ.チャサンオボ)。主演ソル・ギョングは初の時代劇とのことです。下掲の記事では個人的な関心の領域まで書いてしまいました。今から約2世紀前の物語ですが、政治的にも文化的にも、また日本史との比較等でも興味深い時代です。
イ・ジュニク監督の名前は日本の韓国映画ファンの間ではどれくらい知られているのでしょうか? 最近10年間の作品をあげてみると、「ソウォン/願い」(2013)、「王の運命 -歴史を変えた八日間」(2015)、「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」(2015)、「金子文子と朴烈」(2017)の4作で、私ヌルボの好みに合っています。奇抜な展開で観客を驚かしたり、芸術的な描写で観客を眠りに誘ったりせず、自然な撮り方をしていることと、何よりも監督自身の登場人物や作品自体への思い入れが感じられる点に共感します。いずれ日本でも公開されると思いますが、期待しています。
▶この1週間で観た映画は以下の2本です。
・「ヒッチャー ニューマスター版」★★★★(1986年のハラハラドキドキのスリラーで、何人かの人が「これはスゴイ!」と書いていたので観に行ったら、たしかに97分間スクリーンから目が離せなかった。ヒッチハイカーの男を乗せたらそいつがとんでもない殺人鬼で・・・、という話だが、その動機・目的はわからない・・・。私ヌルボも★4.5以上つけるかとも思ったが、冷静に考えてみるとあの名作「ダークナイト」の場合は連続殺人魔ジョーカーに魅力があったことを思うと、コチラは怖さはあっても人物造形に深さがないような・・・、と考えて減点。)
・「アウステルリッツ」★★★★ (セルゲイ・ロズニツァ監督のドキュメンタリー<群衆>3部作をこれで全部観たゾ、と叫んで自分を褒めてやりたい! この作品も94分の最初の10分でフツーの人はタイクツする! そして私ヌルボもフツーの人だしね(笑)。しかし観ているうちにタイクツさが薄らいでゆくというか・・・。内容はベルリン郊外のホロコーストの現場となった元強制収容所の、展示物等ではなく訪れる大勢の人たちを固定カメラでただ撮っただけ、というもの。いやあ、「粛清裁判」「国葬」と、この3作でドキュメンタリーに対する視野が広がったような気がする。得した感じ。<群衆>のパンフ1,400円もしたけど買ってよかった(ホンマか?)。)
★★★ NAVERの人気順位(4月6日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(1) 復活(韓国) 9.65(111)
②(3) そしてパン・ヘンジャ(韓国) 9.53(32)
③(4) アイカ 9.50(14)
④(6) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本) 9.48(1,018)
⑤(2) モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ(韓国) 9.45(38)
⑥(7) カナの婚宴:口約 9.42(374)
⑦(8) ブータン 山の教室 9.42(156)
⑧(-) ランド 9.38(21)
⑨(新) ノガリ(韓国) 9.36(14)
⑩(新) アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~ 9.36(11)
⑨と⑩の2作品が新登場です。
⑨「ノガリ」は韓国のドラマ&コメディ。タイトルの<ノガリ>にはスケトウダラの幼魚の他、バラマキ、嘘等の意味がありますが、本作では後述の映画制作会社の名称が<ノガリフィルム>ににっています。物語の主人公は映画監督のパク・ミングク(本作の監督の自演)。最年少での映画祭に進出し、この名前さえあれば映画人としての花道が保障されていると思っていました。ところが待っていたのは5年間の空白。会社の事務所はハエが飛んでるばかり=閑古鳥が鳴いています。そこにある日100億ウォンの投資を提案したいという1本の電話がかかってきます。条件は、「海兵隊と海女が主人公の戦争映画を作ってほしい」というもの! ところがこの絶好のチャンスを前に、彼らは悩むことになるのですが…。昔から夢は大きく持つべしと言いますね。しかし、これではたして彼らに暖かい太陽がが昇る日がやってくるのでしょうか・・・? 原題は「노가리」です。
⑩「アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~」はフランスのドキュメンタリー。ラップランドは、スカンジナビア半島北部の、スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・ロシアの4ヵ国にまたがる地方です。そのラップランドで撮影された驚くべき成長ドキュメンタリードラマの主人公は人間ではなく、<アイロ>と名付けられた1頭の赤ちゃんトナカイです。<アイロ>は生後5分で立つことを覚え、5分で歩き、5分で走らなければ生き抜くことはできません。やがて彼は広大な針葉樹と氷に囲まれた森やフィヨルドを駆け抜けます。その自然の中で出会うキツネ、テン、白フクロウ、クズリ、クマ、オオカミ、レミング、ウサギ等々のさまざまな動物たちは時には敵であり、時には友だちになるものもあります。多くの捕食者の脅威と予測不可能な状況の中で、アイルは母トナカイの助けを借りて生き残るすべを学び、大人トナカイに成長していきます・・・。ぜひ→予告編を見てみてください! わずか1:29でもけっこう感動的。よく撮ったものです。韓国題は「아일로」。日本では昨年1月にDVDが発売されています。
【記者・評論家による順位】
①(1) ソウルフル・ワールド 8.44(9)
②(2) Mank/マンク 8.14(7)
③(3) スパイの妻(日本) 8.00(5)
④(4) 夏時間[ハラボジの家](韓国) 7.83(12)
⑤(5) ミナリ 7.58(12)
⑥(6) 冬の夜に(韓国) 7.33(6)
⑦(7) アイカ 7.20(5)
⑧(-) TENET テネット 7.18(11)
⑨(8) 本当に遠いところ(韓国) 7.14(7)
⑩(新) 玆山魚譜(韓国) 7.00(9)
⑩「玆山魚譜」が新登場ですが、この作品については後述します。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月2日(金)~4月4日(日) ★★★
イ・ジュニク監督の新作「玆山魚譜」が1位「ゴジラvsコング」に迫る
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ゴジラvsコング・・・・・・・・・・・・・・3/25 ・・・147,077 ・・・・・・・563,400 ・・・・・・5,403 ・・・・1,053
2(47)・・玆山魚譜(韓国)・・・・・・・・・・・・・3/31 ・・・109,036 ・・・・・・・162,848 ・・・・・・1,408 ・・・・1,195
3(2)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・59,915 ・・・・・1,581,467 ・・・・・15,199 ・・・・・・624
無限列車編(日本)
4(3)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・25,345 ・・・・・・・872,959 ・・・・・・7,895 ・・・・・・571
5(新)・・ジョゼと虎と魚たち(日本) ・・・3/31 ・・・・10,023・・・・・・・・・16,032 ・・・・・・・・142 ・・・・・・399
6(4)・・ザ・ボックス(韓国) ・・・・・・・・・・・3/24 ・・・・・9,755・・・・・・・・108,602 ・・・・・・・・854 ・・・・・・・39
7(6)・・ラーヤと龍の王国 ・・・・・・・・・・・・3/04 ・・・・・8,264 ・・・・・・・312,706 ・・・・・・2,890 ・・・・・・198
8(新)・・誰もいないところ(韓国)・・・・・・3/31 ・・・・・7,023・・・・・・・・・14,213 ・・・・・・・・119・・・・・・・353
9(5)・・催眠(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/24 ・・・・・5,726・・・・・・・・・50,550 ・・・・・・・・461 ・・・・・・162
10(新)・・ヒジュラー[海吉拉]・・・・・・・・・3/31 ・・・・・4,488・・・・・・・・・10,051 ・・・・・・・・・86・・・・・・・210
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は2・5・8・10位の4作品です。
2位「玆山魚譜」(じさんぎょふ.チャサンオボ)は韓国の時代劇ドラマ。主人公は丁若銓[チョン・ヤクチョンn](1758~1816)という約200年前の博物学者です。彼は全羅南道羅州出身の学者の家の男兄弟4人中の次男として生まれました。その4人兄弟中一番有名なのは何と言っても末っ子の丁若鏞[チョン・ヤギョンng](1762~1836)でしょう。彼を主人公としたドラマ「牧民心書」(2000)や「チョン・ヤギョン李氏朝鮮王朝の事件簿」(2009)もありますが、とくに日本では人気ドラマ「イサン」(2007~08)で知名度が一気に高まったのでは? 正祖(イサン)の信頼を得て水原城築造に挙重機を設計する等尽力した実学者です。ところが兄弟たちの運命が大きく変わったのが1800年の正祖の急逝でした。兄弟たちは19世紀末当時広まりつつあった天主教(カトリック)に関心を持ち読書会等に参加したりもしていたのですが、正祖に代わって幼い純祖が王となり実権を握った保守派は辛酉教難とよばれる天主教弾圧を推し進め、兄弟中で最も信仰心の強かった三男の丁若鍾[チョン・ヤクチョンng](1760~1801)は処刑されてしまいます。また丁若鏞は全羅南道康津(カンジン)に配流されて18年の流刑生活を余儀なくされます。また丁若銓も1801年全羅道の西南端近くの薪智島に流され、翌年さらに遠い木浦西南沖の牛耳島へ、そして1808年にはそこからはるか西方沖合の黒山島(フクサンド)に移ります。さて、ここからやっとジワッとこの映画の話。「玆山魚譜」とは、この丁若銓が黒山島に行った後に著した海の生物の図譜のタイトルです。具体的には、ゴカイ、ナマコ、イソギンチャク、カモメ、オットセイ、クジラ、ワカメ等々、魚類に限らず甲殻類や貝の他、海鳥や虫、そして海藻も含まれ、見出し項目は全部で226に上ります。物語は丁若銓(ソル・ギョング)が黒山島に来た時から始まります。好奇心旺盛な彼はその地で海の生物に魅了され、本を書くことを決意します。そのためにはと海をよく知っている青年漁師張昌大[チャン・チョンデ]に助けを求めますが、張昌大は罪人を助けることはできないと即座に拒絶します。丁若銓は、その昌大が1人で漢字を勉強して手こずっていることを知り、「私が知っている知識とあなたの魚の知識を教えあおう」と提案すると、彼は受け入れます。2人はどうのこうの言いながらも、次第に互いの師となり友になっていきます。ところがある日、昌大ががんばって勉強しているのは出世のためだという事実を知って若銓はとても失望します。一方昌大も若銓とは目指す道が違うことを認識し、若銓のそばを離れて外の世界のに行きたいと決心するのですが・・・。原題は「자산어보」です。
【「玆山魚譜」中のガンギエイ(홍어.ホンオ)。黒山島の名産で刺身は強いアンモニア臭がある(左) ジュニア向けの本もある。】
5位「ジョゼと虎と魚たち」は言うまでもなく最近公開のアニメ版の方ですが、私ヌルボはあえて、というか、<断固として>観ていません。というのは、田辺聖子の原作(1985年)や、
池脇千鶴と妻夫木聡の好演が印象に残る実写版(2003)の肝心なところまで変えられていることを事前情報で知ったからです。このアニメ版を観て感動したならそれはそれとしてケチはつけませんが・・・。韓国題は「조제, 호랑이 그리고 물고기들」です。
8位「誰もいないところ」は韓国のドラマ。イギリスから7年ぶりにソウルに戻った小説家が偶然の出会いと別れを繰り返す中での心の物語です。小説家の名はチャンソク(ヨン・ウジン)。彼はある早春、妻がいるイギリスを離れて7年ぶりにソウルに帰って来ます。彼は本当によかったという思い出があるこの季節の道を歩きつつも、「当時とはずいぶん変わった」と思います。そのように現実なのか小説なのか混然としているようなチャンソクの物語は、たまたま出会った4人の人々との話に続きます。時間を失った女性ミヨン(IU)、思い出を燃やす編集者ユジン(ユン・ヘリ)、希望を求める写真家ソンハ(キム・サンホ)、記憶を生きる女性バーテンダーのジュウン(イ・ジュヨン)。しょせん作り話である小説をなぜ読むかわからないというミヨンは、よく作り上げられた話と人々が信じているというチャンソクが書いた話に一気にのめり込みます。チャンソクの新しい小説の出版を支援する編集者ユジンは、インドネシア留学生だった冬につらい思いで別れた彼氏の話をして予想外の喪失を告白します。ソンハは久しぶりに出会ったチャンソクにいきなり神秘的な僧侶との出会いを伝えて胸に抱いている小さな白い薬箱にまつわる秘密を教えてくれました。闇が深まるソウルのとあるバーで、ノートに何か書いているチャンソクに近づいてきたジュウンは、詩を書くことが好きですと言って自分の心を解く方法について話し、チャンソクにも酒1杯で興味深い記憶を買ってくれと提案します。こうして集められた話はチャンソクが直面するすべての感情を引き出していきます・・・。原題は「아무도 없는 곳」です。
10位「ヒジュラー[海吉拉]」は、台湾の青春ラブロマンス、というか・・・。劉宛婷(姚愛甯[ヤオ・アイニン])と何希真(林意箴[ダイアン・リン])は親友同士の女子高校生。そして2人はイケメン男子の文棠生(許光漢[グレッグ・シュー])を好きになります。(中略) そして劉宛婷は文棠生と付き合い始めたたのですが、ある事故をきっかけに彼女は自分の体が<ふつう>ではないことを知り、希真や棠生の前から突然姿を消してしまいます。その後しばらく経ち、大学生になった彼らが再び宛婷と出会った時、2人はすぐには彼女とはわからず、そして名前も変わっていました・・・。韓国題は「해길랍」。日本公開は未定のようです。※タイトルの意味を説明するとほぼネタバレに近くなってしまいますが、原題の「海吉拉」はヒンディー語の単語の音訳で、<ヒジュラー>でググるとウィキペディアの項目がヒットします。それにしても、姚愛甯がよくこのむずかしい役を引き受けたと思います。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・25,345・・・・・・・・・872,959 ・・・・・・7,895・・・・・・・571
2(新)・・ヒジュラー[海吉拉] ・・・・・・・・・・・3/31 ・・・・・・4,488・・・・・・・・・・10,051 ・・・・・・・・・86・・・・・・・210
3(14)・・さらば、わが愛/覇王別姫・・2017/3/30・・・・・2,572 ・・・・・・・・108,132 ・・・・・・・・984・・・・・・・・88
4(9)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・10/08 ・・・・・・2,286・・・・・・・・・・36,495・・・・・・・・・293・・・・・・・・24
5(再)・・いまを生きる・・・・・・・・・・・・1990/5/19 ・・・・・・1,830 ・・・・・・・・・61,109 ・・・・・・・・465・・・・・・・103
2位「ヒジュラー[海吉拉]」が新登場ですが、この作品については上述しました。
旧作の2作品の韓国題は、3位「さらば、わが愛/覇王別姫」が「패왕별희 디 오리지널」となぜか<the original>が付き、5位「いまを生きる」は「죽은 시인의 사회(死んだ詩人の社会)」で、原題は「DEAD POETS SOCIETY」なので、韓国題はその直訳。
そこで諸情報を基に9月23日の記事で期待の3作(+1)を挙げました。その中の「ファイター、北からの挑戦者」は先月末に観て最新の記事冒頭にも書きました。
一番の期待作「茲山魚譜-チャサンオボ-」は近所のシネマ・ジャック&ベティで観るつもりでいたのですが、上映がかなり遅れるようなので来週シネマート新宿に観に行くことにしました。
別件ですが、nishinayuuさんのブログの映画鑑賞ノート44の中で、「愛を読む人」について「危惧した通り、原作の『朗読者』とは別物でした。やはり、「原作に感動したら映画は見ない、映画に感動したら原作は読まないのが正しい選択。」と書かれている一文に注目しました。
私もほとんど同感です。ただ、例外もごくわずかですがありそうです。興味深いネタなので近いうちに記事にしようかと思います。(・・・が、有言不実行が続いているし、いつになることか・・・。)