ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [1月7日(金)~1月9日(日)]と作品紹介 ▶「警官の血」に「特別手荷物(特送)」 多様な韓国の犯罪映画 ▶「壊れた鍵盤」=レバノンのもうひとつの「戦場のピアニスト」

2022-01-12 18:44:18 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の興行成績ランキングでは2位に「警官の血」、3位に「特別手荷物(特送)」と韓国映画の新作2作品がランクインしています。どちらもジャンルは犯罪物ですが、内容はずいぶん違います。昨年9月公開された「ボイス」は大がかりなボイスフィッシングつまり振り込め詐欺を扱った作品でした。韓国映画で犯罪(とアクション)はやはりいろいろ多彩だなあと思います。※「警官の血」の原作は佐々木譲の同名小説ですが・・・。
▶注目の外国映画は「壊れた鍵盤/Broken Keys」(仮)です。韓国題がなんと「전장의 피아니스트(戦場のピアニスト)」なので、「あれっ、ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」(2002)の再上映?」と思ってしまいました。実はレバノンのジミー・ケイルズ監督の作品で、英題は「Broken Keys」、「壊れた鍵盤」は私ヌルボがつけた仮題です。11年前から内戦が続いているシリアが舞台の実話に基づく作品です。詳しい内容は下の記事を見て下さい。主人公はピアニストなのですが、彼の住む部屋にイスラム過激派ISの武装グループがやって来てピアノを西欧の文物だとして銃を乱射して・・・という場面があるとか・・・。
 あまりよく知らない国や地域の映画作品はとくに観てみたいと思いますが日本公開は未定のようです。(なんとかならんか?)
 シリアだけでなく、→コチラのCNNの記事によるとアフガニスタンでは昨年8月人気フォークシンガーのファワド・アンダラビさんがタリバンによって処刑されたとか・・・。こうしたタリバンの「揺るぎなき正義」を<独善>と批判してもそれで問題が解決するわけではもちろんなく、どう考え、どうすべきなのか、実にむずかしく、もどかしい・・・。
【 右画像は韓国版のポスター。最後のシーンの演奏曲はショパンではなくベートーベンの「ワルトシュタイン」。】

    ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績1月7日(金)~1月9日(日) ★★★
          「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」 4週連続1位

【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・スパイダーマン・・・・・・・・・・・・12/15 ・・・300,459・・・・・・6,598,991 ・・・・・66,403 ・・・・1,405
       :ノー・ウェイ・ホーム
2(新)・・警官の血(韓国)・・・・・・・・・・・・・1/05 ・・・260,027・・・・・・・・374,412 ・・・・・・3,671・・・・・1,184
3(新)・・SING/シング ・・・・・・・・・・・・・1/05 ・・・203,800・・・・・・・・282,264 ・・・・・・2,592・・・・・1,250
       :ネクストステージ
4(2)・・キングスマン ・・・・・・・・・・・・・・12/22 ・・・・72,459・・・・・・・・920,952 ・・・・・・9,213・・・・・・・648
       :ファーストエージェント
5(3)・・ハッピー・ニュー・イヤー(韓国)・・12/29・・113,709 ・・・・・・225,949 ・・・・・・2,118・・・・・・・368
6(7)・・ドライブ・マイ・カー(日本)・・12/23・・・・・・・4,553 ・・・・・・・・・31,875 ・・・・・・・・298 ・・・・・・・76
7(29)・・特送(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・1/12・・・・・・・2,302 ・・・・・・・・・・6,286・・・・・・・・・・66・・・・・・・・28
8(4)・・マトリックス・・・・・・・・・・・・・・12/22・・・・・・・1,613・・・・・・・・208,523 ・・・・・・2,090・・・・・・・・47
       レザレクションズ
9(新)・・海辺の一日・・・・・・・・・・・・・・・・1/06 ・・・・・・・1,327 ・・・・・・・・・・2,086・・・・・・・・・・20・・・・・・・・42
10(8)・・ラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/29・・・・・・・1,208 ・・・・・・・・・13,654・・・・・・・・・125 ・・・・・・・46
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は2・3・7・9位の3作品です。
 2位「警官の血は韓国の犯罪&ドラマ。佐々木譲の同名小説が原作ですが、3代にわたる警察家族の物語のうち孫(本作ではミン・ジェ)の部分に絞って映画化されました。出処不明の莫大な後援金を受け取り、高級ヴィラに住み、高級ブランドスーツに身を包み、高級外車に乗って犯罪者たちを捜査してきた広域捜査隊班長ガンユン(チョ・ジヌン)のチームに、ある日骨の髄まで原則主義者の新人警官ミンジェ(チェ・ウシク)が投入されます。ガンユンが特別な捜査方式をオープンし、徐々に近づく2人が一緒に新たな麻薬事件を捜査する中、やがてガンユンはミンジェが自分の背後を掘って探るモグラ、すなわち警察の秘密捜査員であることを知ります。そしてミンジェはガンユンを取り巻く隠された警察組織の秘密に向き合うことになるのですが…。監視される警察と監視する警察の一味違ったチームワークを描いた作品です。原題は「해피 뉴 이어」です。
 3位「SING/シング:ネクストステージ」は、1つ前の記事で紹介した通り日本でも3月18日公開で、諸情報が出されているので説明は省略します。韓国題は「씽2게더(シング2ゲザー)です。
 7位「特別手荷物」(仮)は韓国の犯罪&アクション。原題は「특송(特送)」なのですが、<特送>では意味不明なので調べてみると、<速達扱い荷物>とか要するに普通とは違う方式で送られる手荷物のことのようです。本作の→予告編を見ると、最初に「郵便局では扱わない物もすべて配達すると考えればいいです」という字幕。つまり主人公のウナ(パク・ソダム)の仕事がまさにその<特送専門ドライバー>なのです。「郵便局では扱わない物・・・」あたりでかなりヤバい感じですが、どこまで現実に即しているのか?との疑問はさておき、ともかくウナはヤバそうな仕事を「なに、一種の<特送>でしょ」ということで軽く( ?)引き受けます。ところが夜の街で予想外の事故に遭ってしまいます。返送不可の手荷物の中には出処不明の300億ウォンまで。以下、手のほどこしようもない事件に巻き込まれたウナは警察と国家情報院のターゲットとなり、都心のど真ん中ですべてを賭けた追撃戦を繰り広げることになりますが・・・。パク・ソダムのクールな雰囲気が役柄に合っている感じ。
 9位「海辺の一日」は台湾のエドワード・ヤン監督による1983年最初の長編作品です。この作品については→1つ前の記事
でちょっと詳しく書きました。韓国題は「해탄적일천(海灘的一天)」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ドライブ・マイ・カー(日本) ・・・12/23・・・・・・・・・4,553・・・・・・・31,875 ・・・・・・・・・298 ・・・・・・・76
2(新)・・海辺の一日・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/06・・・・・・・・・1,327・・・・・・・・2,086・・・・・・・・・・・20・・・・・・・・42
3(2)・・ラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/29・・・・・・・・・1,208 ・・・・・・13,654・・・・・・・・・・125 ・・・・・・・46
4(新)・・フィードバック・・・・・・・・・・・・・・1/05・・・・・・・・・・・934・・・・・・・・2,874 ・・・・・・・・・・・21 ・・・・・・・35
5(新)・・壊れた鍵盤/Broken Keys・・・・1/06・・・・・・・・・・・730・・・・・・・・1,178 ・・・・・・・・・・・10・・・・・・・・27

 2・4・5位の2作品が新登場です。
 2位「海辺の一日」については紹介済みです。
 4位「フィードバック」はスペイン・アメリカ合作のクライムサスペンス。日本では20年1月にヒューマントラストシネマ渋谷の<未体験ゾーンの映画たち2020>で公開されました。詳細は→コチラ参照。韓国題は「피드백」です。
 5位「壊れた鍵盤/Broken Keys」(仮)は、レバノン・アメリカ・フランス合作の実話に基づいた戦争ドラマ。冒頭で書いたように韓国題は「전장의 피아니스트(戦場のピアニスト)」ですが、ポランスキー監督作品ではなく、ポーランドが舞台でもありません。<第73回カンヌ映画祭(2020>で初めて上映される予定でしたが映画祭がコロナ禍で中止されたため21年5月の<全州国際映画祭>が初上映となったレバノンのジミー・ケイルズ監督の作品です。
 物語の舞台は毎日銃声が響く戦場になってしまったシリア。2011年3月、シリアの独裁者アサド大統領の退陣を要求する反政府デモを皮切りにシリア内戦は始まり、スンニ派-シーア派間の宗派対立、アメリカとロシアの代理戦に飛び火しつつ10年目の今も続いています。
 そのシリアの町セカのある建物の地下。子どもからお年寄りまでさまざまな人々が暮らしています。ピアニストのカリームはそこで生活し、いつかヨーロッパに渡って思いきりピアノを演奏できる日を夢見ています。ところがイスラム過激派IS(イスラム国)が占領した都市は銃声と暴力しか残っていません。カリームは自分が最も大切にしていた母の遺品のピアノを売って演奏が思う存分できるオーストリアのウイーンに行こうとします。その船が出るのは13日後。しかしカリームが生活する宿舎にやって来た武装集団はピアノを西欧の文物だとして銃を乱射し、ピアノの鍵盤は壊れてしまいます。夢をあきらめないカリームは、その後同じモデルのピアノがあるという都市ラムザに向かいます。ピアノの部品を入手し修理して売り、遅れないように船に乗るために・・・。
 ※ジミー・ケイルズ監督は写実的に映画に盛り込むために、2014~17年ISの支配地でイラク軍との最大激戦地だったイラクのモスルとレバノンを行き来しながら撮影したとのこと。→コチラのAFPの記事によると、モスルには今も瓦礫と化した民家や由緒ある歴史的建造物等がほとんど手つかずのまま残っているようです。

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