ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [4月9日(金)~4月11日(日)]と人気順位 ►韓国映画「家に帰る道」上映してくれんかねー ►「街の上で」、観てよかった、けどね・・・

2021-04-14 23:50:34 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事で紹介した作品中、個人的に「コレは観たい!」と思った作品は、「家に帰る道[秘密のジョンウォン]」です。昨年の<第15回大阪アジアン映画祭>で上映され、パク・ソンジュ監督が<来るべき才能賞>を受賞した作品です。私ヌルボ、大阪には行ったものの「ポーランドへ行った子どもたち」を優先したために見逃してしまったのは残念。この記事の最後の方でかなり詳しくストーリーを書いちゃってます。それだけでも胸に迫るものがあって・・・。ネタバレになっちゃう部分は白い字になってるので読みたい方は範囲指定をして読んでください。(右画像は「家に帰る」の一場面)

▶この1週間で観た映画は1本だけです。
 ・「街の上で」★★★★(コロナ渦で上映スケジュールが大きく狂った作品をやっと鑑賞。下北沢(懐かしい!)を舞台にした若者たちの群像劇で、なかなかおもしろかった、というか、観てよかった、というか・・・。しかし、だからと言って高評価というわけではなくて、そこらへんビミョー。いくつかの映画サイトでファンのレビューをみると、なるほどなーと共感するものも多々ある。「日頃私たちの感じている言語化できない気持ちをセリフや演出で巧みに表現している」とか「絶妙な空気感」とか「さまざまな組み合わせの2人の会話をワンカットで長回しするシーンが印象的」とか。その一方で「本作品の登場人物の若者たちは互いにプライドを傷つけ合おうとするばかりで、愛がない。共感はあるが愛がないのだ。そして共感を愛だと勘違いしている」という指摘も鋭いと思う。また私ヌルボとしては、あの「花束みたいな恋をした」同様に登場する若者たちの意識空間の狭さ(=作品世界の狭さ)がすごく気になる。「キミたちにとって一番の問題は一体何なの?」と訊いてみたい。)

▶注目の韓国映画上映情報。
「サムジンカンパニー1995」(サムジングループ英語TOEICクラス)は7月9日(金)公開。→公式サイト
「逃げた女」は6月11日公開。→公式サイト

         ★★★ NAVERの人気順位(4月13日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 復活(韓国)  9.62(116)
②(3) アイカ  9.50(14)
③(4) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本)  9.48(1,021)
④(5) モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ(韓国)  9.46(39)
⑤(6) カナの婚宴:口約  9.42(374)
⑥(7) ブータン 山の教室  9.42(158)
⑦(10) アイロ ~北欧ラップランドの小さなトナカイ~  9.36(11)
⑧(-) 復活: その証拠(韓国)  9.35(405)
⑨(新) 詩を読む時間(韓国)  9.33(12)
⑩(-) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.31(10,733)

 ⑨「詩を読む時間」が新登場です。韓国のドキュメンタリー。ソウルに住む5人は、初めて自分の不安について話をします。カメラの前で聞かせてくれる彼らの声は、まるで詩を読むようです。疲れる職場生活について薬を飲み、堪えるべきかどうか悩んでいる30代の女性。選択を考える暇もなく機械のように働いたものの解雇された労働者、20年以上安定した職場に通っていたがなぜだかわからない罪悪感でパニック障害を患った50代の男性。不安な現実よりもゲームの中の世界に安定を求める男性。自分が経験した嫌悪と差別をすべての弱者の痛みと同一視する女性。彼らはそれぞれ異なる境遇ですが、不確実で悲惨な現実の前に立ち、自分自身を見つめます・・・。原題は「시 읽는 시간」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) Mank/マンク  8.14(7)
③(3) スパイの妻(日本)  8.00(5)
④(4) 夏時間[ハラボジの家](韓国)  7.83(12)
⑤(5) ミナリ  7.58(12)
⑥(-) 逃げた女(韓国)  7.33(6)
⑦(7) アイカ  7.20(5)
⑧(-) TENET テネット  7.18(11)
⑨(8) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑩(新) ファーザー  7.13(8)

 ⑩「ファーザー」が新登場ですが、この作品については後述します。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月9日(金)~4月11日(日) ★★★
       「玆山魚譜」が「ゴジラvsコング」を抜いて1位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(2)・・玆山魚譜(韓国)・・・・・・・・・・・・・・3/31 ・・・・54,137 ・・・・・・・255,561 ・・・・・・2,250 ・・・・・・804
2(1)・・ゴジラvsコング ・・・・・・・・・・・・・3/25 ・・・・53,427 ・・・・・・・652,427 ・・・・・・6,278 ・・・・・・832
3(新)・・Mr.ノーバディ・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・45,980・・・・・・・・・67,846 ・・・・・・・・654 ・・・・・・505
4(3)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・43,541 ・・・・・1,654,373 ・・・・・15,919 ・・・・・・627
       無限列車編(日本)
5(新)・・モータルコンバット・・・・・・・・・4/08 ・・・・22,349・・・・・・・・・29,517 ・・・・・・・・308 ・・・・・・672
6(4)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・12,764 ・・・・・・・897,866 ・・・・・・8,124 ・・・・・・433
7(40)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・8,658・・・・・・・・・17,150 ・・・・・・・・150 ・・・・・・348
8(48)・・裏切りのサーカス・・・・・2012/2/29 ・・・・・4,066・・・・・・・・・94,972 ・・・・・・・・715 ・・・・・・146
9(106)・・ニューヨーク・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・3,719・・・・・・・・・・6,230・・・・・・・・・・51 ・・・・・・140
       親切なロシア料理店
10(7)・・ラーヤと龍の王国 ・・・・・・・・・・・3/04 ・・・・・3,582 ・・・・・・・316,876 ・・・・・・2,929 ・・・・・・141
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は3・5・7・9位の4作品です。
 3位「Mr.ノーバディ」はアメリカのアクション&コメディ。物語の主人公ハッチ・マンセル(ボブ・オデンカーク)は、温厚な家族一筋の男で、日々郊外にある自宅と職場の工場をバス通勤している平凡な人物で、およそ闘士、戦士といったタイプとは正反対の人間。まさに原題通りの<Nobody>=<何者でもない人>です。ある夜、2人の泥棒がそのハッチの家に侵入します。ところがこんな時でも彼は深刻な問題に発展することをおそれて積極的に自分や家族を守ろうとしませんでした。このため彼の息子ブレイク(ゲージ・マンロー)と妻のベッカ(コニー・ニールセン)はハッチに失望し、彼から離れ始めます。この事件はハッチに自信が実体のない父親と夫であることに対して憤慨させ、抑圧されたスキルを目覚めさせてしまいます・・・。韓国題は「노바디」。日本公開は6月11日です。
 5位「モータルコンバット」はアメリカのアクション&ファンタジー。<モータルコンバット>とは、元々は1992年にアメリカの会社が開発・発売した対戦型格闘ゲームで、90年代には全世界的にヒットしました。日本でも93年からスーパーファミコン、ゲームボーイ等に移植され初上陸したとのことなので、いろいろ記憶をお持ちの方も大勢いらっしゃるのでは? 私ヌルボは仕事に専心していた時期でもあり(??)全然知らなかったですが・・・。で、このシリーズは<残虐格闘ゲーム>と呼ぶべきジャンルを形成して数多くのフォロワーが生まれたとも。そしてシリーズ第一作では「脊髄ごと首を引き抜く」というショッキングな内容で「北米のみならず日本のゲーマーからも注目を浴びた」そうです。ふうん。さてこのゲームの映画化作品なのですが、1995年に同タイトルの香港を舞台にした格闘技アクション映画が公開されています。しかし本作はそれとは別のリブート作品です。物語の主人公は自らの生い立ちを知らない総合格闘技選手のコール・ヤング(ルイス・タン)。彼はある日サブ・ゼロという暗殺者に命を狙われます。コールは家族の安全が脅かされることを懸念して仲間たちと共に地球の守護者ライデン(浅野忠信)の寺院を訪れます。そして太古から続く格闘トーナメント<モータルコンバット>のことや、コールが魔界の敵たちと戦うために選ばれた戦士であることを知ります・・・。韓国題は「모탈 컴뱃」。日本公開は6月18日です。
 7位「ファーザー」は、英仏合作のドラマ。この作品も第93回アカデミー賞作品賞にノミネートされ、また主演のアンソニー・ホプキンス(83歳)が主演男優賞、その娘を演じたオリヴィア・コールマンも助演女優賞等々、同賞に計6部門もノミネートされています。(→コチラ参照。) 物語の主人公アンソニー(アンソニー・ホプキンス)はロンドンで独り暮らしをしています。彼は記憶が薄れ始めていますが、娘のアン(オリヴィア・コールマン)が介護人を手配しようとしても拒否しています。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられ、ショックを受けますが、それが事実だとすると、アンソニーの自宅に突然現れた「アンと結婚して10年以上になる」と語る見知らぬ男は一体誰なんだ? 何か魂胆があるのか?という疑念も湧いてきます。それに、自分のもう1人の最愛の娘(次女)ルーシーはどこに消えたのか?等々、現実と幻の境界が崩れていく中で最後にアンソニーがたどり着いた<真実>とは・・・。韓国題は「더 파더」。日本公開は5月14日です。
 9位「ニューヨーク 親切なロシア料理店」は、デンマーク等5ヵ国による合作のヒューマンドラマ。日本ではすでに昨年12月公開されています。韓国題は、原題「The Kindness of Strangers」を直訳して「타인의 친절(他人の親切)」。これだとどんな話か全然わからないと思いますが・・・。
 なお、8位「裏切りのサーカス」は旧作の再上映。ジョン・ル・カレのスパイ小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」(ハヤカワ文庫)の映画化作品で、韓国題も原題「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」そのままの「팅커 테일러 솔저 스파이」。なんで日本では本と違うタイトルにしたのかな? 知ってたら観に行ったのに・・・。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・12,764・・・・・・・・・897,866 ・・・・・・8,124 ・・・・・・433
2(22)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・8,658・・・・・・・・・・17,150 ・・・・・・・・150 ・・・・・・348
3(53)・・ニューヨーク・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07 ・・・・・・3,719・・・・・・・・・・・6,230・・・・・・・・・・51 ・・・・・・140
       親切なロシア料理店
4(17)・・家に帰る道・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/08 ・・・・・・2,810・・・・・・・・・・・5,277・・・・・・・・・・43・・・・・・・143
       [秘密のジョンウォン](韓国)
5(7)・・復活: その証拠(韓国) ・・・・・・・・・10/08 ・・・・・・2,185・・・・・・・・・・39,120・・・・・・・・・318・・・・・・・・19

 2・3・4位の3作品が新登場ですが、2位「ファーザー」、3位「ニューヨーク 親切なロシア料理店」については上述しました。
 4位「家に帰る道[秘密のジョンウォン]」は韓国のドラマ。原題は「비밀의 정원(秘密のジョンウォン)」で、記事冒頭に書いたように昨年の<第15回大阪アジアン映画祭>で上映された際の邦題です。スポーツセンター水泳インストラクターとして働くジョンウォン(ハン・ウヨン)と夫サンウ(チョン・ソッコ)は若いカップル。狭く古いアパート暮らしてきましたが、サンウの両親が譲ってくれた古い一戸建てに引っ越すために荷物の整理をしています。引っ越しの費用についてあれこれ計算をしているところにジョンウォンに電話がかかってきます。それは警察からの電話でした。※以下ネタバレ。黄色い字なので、読みたい方はその部分を範囲指定をしてください。刑事が言うには、10年前の事件の犯人が捕まって新たに調書を書かなければならないので警察署に来てくれとのこと。10年前とはジョンウォンが女子高生の頃。突然具合が悪くなった妹をお母さんと一緒に病院に連れて行ったのです。お母さんは妹の世話をするために病院に残り、ジョンウォンは翌朝登校をしなければならないので夜明け頃1人で家に帰るその途中、見知らぬ男に性的暴行をされてしまったのです。当時のDNAを証拠として、10年後の今犯人が逮捕されたのです。しかし、ジョンウォンにしてみれ事件後かろうじて傷を癒し、結婚して夫と暮らしているのに、平然と被害者に電話をかけてくるとは・・・と心が乱れるのも当然です。ジョンウォンが電話でちゃんと対応しなかったため、刑事は家まで訪ねて来ます。言いたくなかったのジョンウォンの秘密が捜査記録という書類として刑事によって夫に明らかにされるという不合理な状況にはスクリーンを超えて観客までも当惑させます。夫婦の平和だった結婚生活はこのように瞬時にバランスを失い、コミュニケーションが断絶したまま枯れていきます。どんな言葉でもかけたい夫サンウと何も言いたくないジョンウォンの危うい日常が淡々と続きます。その後、ジョンウォンはソウルに試験を受けにきた妹のソヒ(チョン・ダウン)を故郷の泰安に連れて行ってやるため、サンウと一緒に夜車で実家に向かいます。そして、自分の足首をつかんでいた過去の場所を訪ねて行きます。思い出したくなかった記憶と正面から向き合うジョンウォンと、自分のために姉にそんなことが起ったと自責の念を抱き意気消沈して姉に近寄ることができないソヒは、そこで過去の傷と記憶を正面から眺めます。ジョンウォンとサンウは、微かに笑みを浮かべながら泰安海岸を一緒に歩いて行きます・・・。
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