菊ちゃんを旅する
Subj:菊ちゃんのことを気にしてました。
Date: 10/01/2008 3:34:05 PM
Pacific Standard Time
日本時間: 1月11日 午前8時34分
From: fuji@adagio.ocn.ne.jp
To: barclay1720@aol.com
なぜか 1月7日に戻して返信。
この前から、菊ちゃんのことを気にしてました。
先日山に久々帰ってみると、
お世話になった人が亡くなっていました。
その人は奥さんと2人きりの生活で
お二人の間にはお子さんがおりません。
私たちがいた時は良く里芋や いんげん。
冬でも作らない時期は ゆずなど
「うちでできたものだー」 と持ってきてくれました。
そのおじさんが 亡くなってました。
私の父と同じ年でした。
人にうらやましがられるような、
贅沢もせず山で暮らす知恵だけは持っていて
たくましく生きていました。
もし、環境異変で地球に食料が出回らなくなったら
まず、私はすぐ死にます。
体の大きい主人も少しして食料がないのに
絶えられず死にます。
でも、あのおじちゃんは生き延びたかもしれません。
自給自足の生活をしていましたから。
1年に1度行くか行かないか、スーパーマーケット。
そんなの必要ない人だったから。
あんな小さい体なのにとても強かったのです。
現代人のように飛行機に乗らなくても
コンピュータを使わなくても、とても強かったのです。
デンマンさんの記事で菊ちゃんのことを
興味深く読ませてもらいました。
菊ちゃんも素朴で愉快に生きていたと思います。
だから、菊ちゃんはお嫁さんにならなくても、
ずーっと幸せな人生だったと思います。
病気、突然の、それはその人の人生なのだから。
小百合より
『白無垢の菊ちゃんと山の家』より
(2008年1月13日)
デンマンさん。。。今日は菊ちゃんのことでござ~♪~ますか?
そうですよう。小百合さんも菊ちゃんのことを気にしていたほどですからね。菊ちゃんのエピソードは、すべての人とは言わないまでも、たくさんの人にとって印象に残るのですよう。
小百合さんは菊ちゃんに会ったことがあるのでござ~♪~ますか?
もちろん、小百合さんは菊ちゃんに会ったことはないのですよう。菊ちゃんは10年ほど前に40代の若さで亡くなっていますからね。
癌ですか?
癌ではありません。腎臓の病気ですよ。この記事を初めて読む人は次の記事を読めば菊ちゃんがどういう人なのか分かるはずです。
■ 『菊ちゃんと小百合さん (2007年12月8日)』
■ 『白無垢の菊ちゃんと山の家 (2008年1月13日)』
■ 『菊ちゃんと八ツ橋 (2008年4月14日)』
それで、今日は菊ちゃんの別のエピソードですか?
そうです。これまでに話したことがない面白いエピソードですよう。菊ちゃんのことなら話しきれないほどのエピソードがありますよう。とにかく、菊ちゃんはユニークな人だったですからね。。。
それで、今日はどのようなユニークなお話なのでござ~♪~ますか?
菊ちゃんは40代で亡くなる時までずっと精神年齢は7才のままでした。もちろん、本人は自分が知恵遅れだとは思っていなかったのですよう。
そうでござ~♪~ましょうか?少しは自覚していたのではないですか?
僕もずいぶんと、その事については考えてみた事があるのですよう。でもねぇ、どのように考えても、菊ちゃんが自分のことを“バカ”だと思っていとは思えないのですよう。
何かその証拠となるようなことでもあるのでござ~♪~ますか?
あるのですよ。今日はその事についてのエピソードなんですよう。
なんだか、面白そうでござ~♪~ますわ。うふふふふ。。。
卑弥子さんは「食物連鎖 (food chain)」という言葉を聞いたことがあるでしょう?
ありますわ。
「弱肉強食」の世界ですよね。英語には、そのものズバリの諺があります。つまり、“The strong prey upon the weak.” 強い者が弱い者を餌食(えじき)にする。要するに、強い者が弱い者を食べてしまうと言う訳ですよ。まさに、上の絵のように大きな魚が小さな魚を食べてしまう訳ですよ。
その事と菊ちゃんが関係あるのでござ~♪~ますか?
あるのですよう。
どのようにでござ~♪~ますか?
この「弱肉強食」がイジメにもあるのですよう。
つまり、力の強い者、喧嘩の強い者が弱い者をイジメるのですよう。僕が小学生の頃、近所の遊び仲間では、必ずイジメめられる者、バカにされる者は決まっていたものですよう。たいてい勉強ができなくて体力の無い者と相場が決まっていましたよ。だから、仲間の中では最年少の者がこのイジメにあいやすかった。
それで。。。?
このイジメにあう最年少の者も、いつも苛められたり、バカにされていたのではストレスが溜まるから、グループ以外で苛めることができる者、バカにできる者を探すのですよう。
つまり。。。つまり。。。いつも遊び仲間で苛められバカにされているグループの最年少の者が菊ちゃんをイジメ、馬鹿にするのでござ~♪~ますか?
そうなんですよう。菊ちゃんは精神年齢は7才でも僕が小学生の頃は、少なくとも18才を越えていたから、体は立派な大人ですよう。でも、知能の遅れはどうしても虐めの対象になってしまうのですよね。僕の遊び仲間の最年少でいつもバカにされていたのは小学校2年生の幸雄君でした。でも、この幸雄君は勉強はできなかったけれども腕力があるから菊ちゃんもかなわないのですよう。しかも、菊ちゃんが大人なのに知恵遅れで馬鹿だということを知っているから、仲間から苛められたりバカにされたりすると、その腹いせに菊ちゃんを苛めるのですよう。
デンマンさんは助けなかったのですか?
もちろん僕は助けたいのですよう。でも、僕はその遊び仲間のボスではなかった。その仲間にはメンバーが8人から10人ぐらい居ました。ガキ大将は小学校の6年生でした。当時、僕は小学校の3年生か4年生です。その仲間での力関係ではちょうど中ほどですよう。ボスには従わなければならないという“暗黙の掟(おきて)”がありました。
つまり、菊ちゃんを助けたくても助ける事がその掟に反するのでござ~♪~ますか?
そうなのですよ。幸雄君が菊ちゃんを苛めだすと、ボスが面白がって笑うのですよう。僕が菊ちゃんを助けようとすれば、“面白い見世物”を邪魔したと言うので、今度は僕が虐められかねない。
それでデンマンさんもガキ大将に同調して、幸雄君を止めずにただ見ていたのですか?
当時はそのようにする他になかったのですよう。子供の社会の掟は守らなければ虐めにあいましたからね。
それで、菊ちゃんは苛められるままですか?
そうなのですよ。当時、菊ちゃんは「食物連鎖の底辺 (bottom of the food chain)」に居たのですよ。つまり、最も弱い立場に居た。知能が遅れていた事と、女で腕力がなかったということで、悪ガキの遊び仲間グループの誰もが、虐めの対象にしたり、面白がって菊ちゃんを馬鹿にしたのですよう。
菊ちゃんは、どうして女の子のグループと遊ばなかったのですか?
女の子のグループって当時どう言う訳か無かった。菊ちゃんは大人には相手にされなかったから、どうしても、当時一番目だった悪ガキの仲間グループのそばに寄って来るのですよう。
それで苛められてしまうのですか?
もちろん、いつも菊ちゃんは苛められている訳じゃないのですよう。ただ、何も他にすることがなくて、退屈なときに、幸雄君がバカにされたり苛めにあう前に、菊ちゃんがそばに居れば、幸雄君が菊ちゃんを標的にするのですよう。今から思えば、弱い立場の者の生きるための知恵ですよう。つまり、自分が虐めにあう前に、より弱い者を苛める。そうやって自分を守っていたのでしょうね。
それで、菊ちゃんは苛められて、どうなるのですか?
菊ちゃんは、おとなしい素直でいい子なのですよう。苛められるようなこと、バカにされるような事は何一つしない。菊ちゃんは他に行く所がないから、面白そうに遊んでいる悪ガキたちの様子を見ているだけなのですよう。ところが、仲間の雰囲気を微妙に察して、矛先が自分に向かいそうだと思うと、幸雄君は菊ちゃんを馬鹿にし始める。
菊ちゃんは他の所に行かないのでござ~♪~ますか?
家に帰ってもつまらないのでしょうね。だから、バカにされそうだと分かっても悪ガキの仲間のそばに寄って来るのですよう。
それで、虐めって具体的にどのようにするのでござ~♪~ますか?
幸雄君は腕力があるといっても小学校2年生ですからね。殴ったり蹴ったりという暴力を振るう訳ではない。自分がバカにされたり苛められるから、矛先を菊ちゃんに向けているだけですよ。
つまり、言葉の暴力で菊ちゃんを苛めるのですか?
そうです。
菊ちゃんは言い返さないのですか?
菊ちゃんはよく言葉がしゃべれないから、言い返したりすると、さらにバカにされてしまうのですよう。
それで。。。?
菊ちゃんだって小学校2年生の幸雄君に訳の分からない事を言われて罵(ののし)られるから、面白いはずがない。
菊ちゃんのオツムの程度は、確かに小学生とあまり変わりがないのですよ。でもね、子供にはないようなすばらしい特技を持っている。前にも書いたけれど、桜の花びらだとかユリの花だとか菊の花を集めて、このような首飾りを器用に作る事ができる。子供っぽいところが多いのだけれど、それでも大人の意識を持っている。だから、小学生にバカにされると無念な気持ちでいっぱいになってしまうのですよ。
それで、菊ちゃんはどうなるのでござ~♪~ますか?
相手が小学校2年生なのだから、普通の18才の娘ならば、訳の分からない事を言って突き飛ばしたりすれば、負けずにほっぺたをひっぱたくかもしれませんよう。
菊ちゃんは暴力を振るわないのでござ~♪~ますか?
僕は菊ちゃんが小学生を殴ったのを見たことがありませんよ。決して暴力に訴えない人でしたね。とにかく、おとなしい静かな人でした。
それで、幸雄君はいつまで苛め続けるのですか?
菊ちゃんも我慢しきれなくなるのでしょうね。相手が小学生と言えども、菊ちゃんはひっぱたいたり、殴ったりしない人だから、あとはもう泣き出すしかなかったですよ。それも菊ちゃん特有のやり方で泣くのですよう。
どのように。。。?
菊ちゃんは、上の写真ではサンダルを履(は)いているけれど、僕の記憶では圧倒的に赤い鼻緒の下駄を履いていることが多かった。幸雄君が訳の分からない事を言って喚(わめ)くと、菊ちゃんだって頭にくるわけですよね。それで、どうにも我慢しきれなくなると、急にベソをかいて下駄を片方飛ばすのですよ。なぜか、片方だけですよ。両方飛ばせば、もっと面白いと思うのだけれど。。。うへへへ。。。
飛ばすって。。。?どのようにでござ~♪~ますか?
だから、下駄を履いたままで片足を蹴り上げるのですよう。
なぜ。。。?
菊ちゃんにしてみれば、頭にくるからですよう。普通の18才の娘ならば、癇癪を起こして相手の頭を殴るかも知れませんよ。でも、菊ちゃんは決して殴るような事はしなかった。つまり、我慢しきれなくなって、そのやり場のない憤懣を下駄を片方飛ばす事によって表現しているのですよう。
それで。。。片方だけなのでござ~♪~ますか?
なぜか、片方だけなのですよ。本人はマジで怒っている訳なのだけれど、それを見ている子供たちは喜びますよね。“ォ~飛んだ、飛んだア~”と言って手を叩いて喜ぶ奴まで居ますよう。それで、菊ちゃんは、さらに悔しがって泣くのですよう。子供にしてみれば、大人の女が泣くのをめったに見ないので面白い訳ですよう。
それで、デンマンさんも一緒になって笑ったのでござ~♪~ますか?
もちろん、僕だって初めの頃は面白いと思いましたよ。
一緒になって笑っていたのでござ~♪~ますわね?