☆寝苦しい朝
未明から目が覚めてしまった。台風9号の接近で気圧が激しく変化したのかなんとも寝苦しい早暁だった。そのうち、激しい雨音が伝わってくる。
不安に駆られたのだろうシェラがぼくのすぐ脇にきて息を荒くしている。
「だいじょうぶだ。もうちょっと寝ような」
手を伸ばして頭をなでてやる。その手を止めると「もっとなでて」とばかり前足でぼくの手を引っかいて催促する。
朝の散歩はずぶ濡れだな――うつらうつらしながら覚悟を決めていた。
シェラとムギを連れて外へ出たのは雨が最高潮のときだった。雨のカーテンにさえぎられて、風景がかすんで見えるほどの降りだった。
ぼくもわんこたちも雨具で身体を包み、川のように雨水が流れる道路へと踏み出した。バス停に並ぶ通勤客たちの下半身は誰もがずぶ濡れになっていた。
「ひどい夏だよな……」
思わずつぶやいていた。暦はすでに旧盆の休みに入っている。楽しかるべき夏休み真っ盛りなのにこの体たらくである。学校へ通っていた当時のぼくの記憶にこんなでたらめな夏はとんとなかった。
☆雨がなんだ!
シェラもムギも雨だからといって雨具を使うことは、いつもならまずない。少々濡れてもタオルで拭いておしまいにしている。ふたりとも顔、とりわけ耳の辺りが濡れるのをとても嫌がるけど、雨そのものを嫌がるようになっては最低限の野性味まで失うことになる。
だから、散歩のときは雨などものともせずにそのまま突入している。
さすがに今朝だけは例外だった。
慣れない雨具に戸惑いつつ、そして、激しい雨に気圧(けお)されながら、それでもなんとか近所をひとまわりして泳ぐような散歩が終わった。
終わったとたん、雨脚が穏やかになった。
「これが人生さ」
ぼくは腐らなかった。
未明から目が覚めてしまった。台風9号の接近で気圧が激しく変化したのかなんとも寝苦しい早暁だった。そのうち、激しい雨音が伝わってくる。
不安に駆られたのだろうシェラがぼくのすぐ脇にきて息を荒くしている。
「だいじょうぶだ。もうちょっと寝ような」
手を伸ばして頭をなでてやる。その手を止めると「もっとなでて」とばかり前足でぼくの手を引っかいて催促する。
朝の散歩はずぶ濡れだな――うつらうつらしながら覚悟を決めていた。

ぼくもわんこたちも雨具で身体を包み、川のように雨水が流れる道路へと踏み出した。バス停に並ぶ通勤客たちの下半身は誰もがずぶ濡れになっていた。
「ひどい夏だよな……」
思わずつぶやいていた。暦はすでに旧盆の休みに入っている。楽しかるべき夏休み真っ盛りなのにこの体たらくである。学校へ通っていた当時のぼくの記憶にこんなでたらめな夏はとんとなかった。
☆雨がなんだ!
シェラもムギも雨だからといって雨具を使うことは、いつもならまずない。少々濡れてもタオルで拭いておしまいにしている。ふたりとも顔、とりわけ耳の辺りが濡れるのをとても嫌がるけど、雨そのものを嫌がるようになっては最低限の野性味まで失うことになる。
だから、散歩のときは雨などものともせずにそのまま突入している。

慣れない雨具に戸惑いつつ、そして、激しい雨に気圧(けお)されながら、それでもなんとか近所をひとまわりして泳ぐような散歩が終わった。
終わったとたん、雨脚が穏やかになった。
「これが人生さ」
ぼくは腐らなかった。