☆花火がはじまった
ぼくにとってもわんこたちにとっても忙しい日曜日だった。
ようやく家に帰り着き、夕飯を食べてひと息つくひまもなく、近所で花火大会がはじまった。南でも、東でも、北側でも……。部屋の中にいると下腹に響く音で落ち着かない。
以前のシェラだったら、雷鳴に遭遇したのと同様におびえ、大騒ぎになるところだ。一方、ムギは雷にも花火にもまったく動じない。ほかに苦手とする音はあるけれど……。
シェラもある体験を境にして花火には少し免疫ができている。
その“ある体験”とは――。
3年前のゴールデンウィーク、わが家は長野・松本市の三才山にある「美鈴湖もりの国オートキャンプ場」へ出かけた。美ヶ原高原の入口に位置する標高1000メートルのキャンプ場からは松本の市街地を見下ろすことができる。夜ともなると松本の夜景が美しい。
ゴールデンウィークの期間中、松本市のそこかしこでイベントが行われているらしく、朝から音だけの花火が派手に上がった。おそらく、イベントの開始に打ち上げられるのだろう、長くは続かない。
それでもシェラにとっては地獄の責め苦に等しかった……はずなのだが、3日目ともなると、すっかり平気になっていた。
その朝、シェラは「もうどうでもいいや……」とばかり、いかにも億劫そうに寝そべったままだった。10年の桎梏から解放された瞬間でもあった。
☆怖い言葉はちゃんと知っているもんね
今夜の花火はちょっと辛い。
それだけに、以前のようにパニックにはならないけれど、やっぱり不安なのだろう。花火が終わってからもぼくの椅子のすぐ脇にきてしばし座り込んでいた。
その顔には、「やっぱり怖い」と書いてある(写真左)。
シェラにとって、夏は暑さのみならず、雷鳴もあり、花火もあり、心落ち着かない季節である。
わが家では、いまだに「かみなり」も「はなび」も禁句である。それを口にすると、シェラは息遣いが荒くなり、口からはよだれが流れだす。だから、シェラの前では、「はなび」は「たまや」、「かみなり」は「ごろ」と言い換えて話すことにしている。
言葉に対しては免疫ができないのが面白い。
ぼくにとってもわんこたちにとっても忙しい日曜日だった。
ようやく家に帰り着き、夕飯を食べてひと息つくひまもなく、近所で花火大会がはじまった。南でも、東でも、北側でも……。部屋の中にいると下腹に響く音で落ち着かない。
以前のシェラだったら、雷鳴に遭遇したのと同様におびえ、大騒ぎになるところだ。一方、ムギは雷にも花火にもまったく動じない。ほかに苦手とする音はあるけれど……。
シェラもある体験を境にして花火には少し免疫ができている。
その“ある体験”とは――。
3年前のゴールデンウィーク、わが家は長野・松本市の三才山にある「美鈴湖もりの国オートキャンプ場」へ出かけた。美ヶ原高原の入口に位置する標高1000メートルのキャンプ場からは松本の市街地を見下ろすことができる。夜ともなると松本の夜景が美しい。
ゴールデンウィークの期間中、松本市のそこかしこでイベントが行われているらしく、朝から音だけの花火が派手に上がった。おそらく、イベントの開始に打ち上げられるのだろう、長くは続かない。
それでもシェラにとっては地獄の責め苦に等しかった……はずなのだが、3日目ともなると、すっかり平気になっていた。
その朝、シェラは「もうどうでもいいや……」とばかり、いかにも億劫そうに寝そべったままだった。10年の桎梏から解放された瞬間でもあった。
☆怖い言葉はちゃんと知っているもんね
今夜の花火はちょっと辛い。
それだけに、以前のようにパニックにはならないけれど、やっぱり不安なのだろう。花火が終わってからもぼくの椅子のすぐ脇にきてしばし座り込んでいた。
その顔には、「やっぱり怖い」と書いてある(写真左)。
シェラにとって、夏は暑さのみならず、雷鳴もあり、花火もあり、心落ち着かない季節である。
わが家では、いまだに「かみなり」も「はなび」も禁句である。それを口にすると、シェラは息遣いが荒くなり、口からはよだれが流れだす。だから、シェラの前では、「はなび」は「たまや」、「かみなり」は「ごろ」と言い換えて話すことにしている。
言葉に対しては免疫ができないのが面白い。