愛する犬と暮らす

この子たちに出逢えてよかった。

抱きあっていた天真爛漫な少年たち

2013-07-22 20:51:22 | ルイとの日々
 日曜日の夕方、スーパーマーケットに併設されているフードスクエアーのテラス席にルイをつなぎ、買い物をしている家人を待っていた。ひょいと目をあげると、目の前でシェラとあまり身長の変わらない男の子がルイと抱き合っている。人間と犬というより天真爛漫な少年同士がじゃれあっているようにしか見えない。ぼくが目を離したわずかな隙のできごとだった。

 相手が子供であろうと、ルイが噛みついたりの危害を加える心配はないはずだけど、力が強いからはずみで押し倒してケガでもさせたら大変だ。正直なところ、思わずドキッとした。幸いつないだままでリードがめいっぱい伸びた先で抱き合っていたので押し倒したりもできなかったようだ。少年同士の、それはとっても心温まる光景だった。

 ルイを連れて散歩していると子供たちがやってきて触りたがる。たいてい、「触っても平気ですか?」とか「撫でてもいいですか?」と訊いてくれるが、自分の家で犬を飼っている子は怖がらずにいきなり近づいたり、腕を伸ばしてくるので気が抜けない。

 以前のシェラだったら近づいてきただけで、「寄るな!」とばかり吠えたし、見た目も怖そうで大きいから突然触りにくる子はほとんどいなかった。ただ、通りすがりにひょいと触っていく子もいて、シェラのほうが何がなんだかわからないうちに終わっているから騒ぎになることはなかった。


 むぎは、とってもフレンドリーな子だった。そして人間が大好きだった。わが家の子になってまもなく、わが家の子というよりシェラの子になってしまって、かたときもシェラから離れなかったのに、はじめて出かけたキャンプで、夜、隣近所のサイトへ遠征していって驚いた。
「あら、むぎちゃん、きてくれたの」なんて声が聞こえて、むぎがシェラから離れてひとりで行動できるのを知ったくらいだ。それもキャンプのときにかぎられたのだが……。

 だが、後年はシェラが知らない人を怖がり、威嚇するのを見て、自分もシェラのうしろに隠れてしまうようになった。とりわけ、子供を嫌うシェラを見ていて、むぎも子供を怖がった。フレンドリーなむぎはただ臆病なだけのわんこになってしまった。
 だから、ふたりはいつも自分たちだけの世界にいた。むぎがなりゆきでよそのわんことにおいを嗅ぎあったりしていると、最初から孤高にして孤絶していたシェラが心配そうに見つめ、途中でひと声吠えて警告した。むぎはあわててシェラの元へと走り寄ってホッとした表情をみせたものだった。

 写真の子は、よほど犬好きなのだろう。最初はルイと何度か抱き合っていたが、そのうちにルイがとなりにいる母親のほうへ寄っていくと、それを追いかけて、写真のようにまた抱きしめていた。かわいい少年だなと思う。
 だが、もし、ここにシェラがいたら、やっぱり激しく吠えて少年を追い払おうとしただろう。「うちのルイに何するの!」とばかり……。ルイにとってシェラのお節介は迷惑なだけでも、彼女の母性が黙っていられないだろうから。

 むろん、人間大好きの天真爛漫なルイがシェラの警告でむぎのように人間を怖がるような性格に変わってしまうとはとうてい思えない。警告を無視するルイに、きっとシェラはなんらかの教育指導をするだろう。それはルイにとっては実にうれしいスキンシップになったことだろう。