
■ 波乱含みの出発
ぼくとルイの体調もなんとか戻り、ようやくキャンプに出かけることができた。年越しキャンプ以来、9か月のブランクである。20代から30代は仕事に追われてめったにキャンプへいくことができなかったが、少し余裕ができた40代からこのかた、こんなに長くキャンプから遠ざかっていた記憶はない。
ルイとのキャンプも、これが5回目となる。11日(水)から夏休みをとり、家人の仕事の関係で出発は12日からではあるが、出発前日にたっぷり準備ができるので理想的な日程のはずだった。
余裕の日程は、だが、初日からつまずく。会社で持ち上がったトラブルのため、ぼくは急きょ出社することとなり、11日は夏休みながらフルタイムでデスクに座って過ごした。12日も、ほんとうは会社にいるべきだったのかもしれないが、思い切って若い人たちにまかせ、夏休みに入った。
そんなわけで、荷物のクルマへの積み込みなどの準備は出発当日の朝となった。まず、ここでトラブった。クルマの屋根に装着するキャリーの小さな部品が脱落して見失い、結局、キャリーなしでの積み込みとなった。おかげで装備を切り詰め、ルイが乗るはずのリアシートも半分つぶして荷物を置いた。時間も30分以上ロスしてしまった。

■ 予定のキャンプ場が貸し切りとの情報
午前11時の、キャンプとしては遅い出発となったが、ウィークデイでもあり、また、だれかと待ち合わせをしているわけではないので焦りはない。車載のナビが推奨する練馬へ出て関越道を使うルートを無視して中央道の八王子ICへ向かった。
目指すは八千穂高原駒出池キャンプ場だ。わが家のホームグランドのようなキャンプ場であり、去年の7月にルイもここで2度目のキャンプを経験している。
八王子までの半分ばかり走ったところで明日から現地で合流を予定している従姉から電話があった。彼女のつれあいのO氏が八千穂駒出池キャンプ場のHPをのぞいたら14日(土)から15日(月)まで貸し切りになっているので入れないのではないかと……。うかつにもチェックしていなかった。
あの広いキャンプ場が全面貸し切りとはにわかに信じられないが、14日の予定がぶつかることになる。
すぐに近くのホームセンターの駐車場へクルマを入れ、同じ方角にある清里中央オートキャンプ場へ電話をかけた。ここも八千穂と並んで慣れ親しんだキャンプ場であり、去年2月に17歳で死んだシェラと、一昨年の9月にキャンプをした思い出深いキャンプ場でもある。あのときは、その年の7月に死んだむぎの哀しみを胸にしながらのキャンプであり、しかも、あれがシェラとの最後のキャンプとなってしまった。

■ 清里での2年ぶりのキャンプ
もし、関越道へむかっていたら、清里までおおまわりしてむかうことになっていた。それに、三連休となると、清里中央のほうが東京から近い分、混雑が予想されていたので最初から候補地にしていなかった。女房は、清里中央になってむしろ喜んでいた。近いし、設備も充実しているからだ。なによりも管理人の奥さんがとてもいい人だからだ。
清里までは買いものもせず、そのまま走って午後3時過ぎには到着した。2年ぶりでもあり、管理人のご夫婦がびっくりしたような顔で迎えてくれた。
あの犬たちが死んでしまって……と無沙汰の釈明をするぼくたちの話を奥さんは涙ぐんで聞いてくれた。似たような常連キャンパーが何人もいたのだろう。やっぱり、こちらへきてよかったとしみじみ思った。
管理人さんたちはオーナーではない。しかし、このキャンプ場はこの奥さんで成り立っているといっても過言ではない。訪れるたびに、まるで故郷へ帰ってきて、家族に再会したときのような安心感を抱かせてくれるからだ。管理人の奥さんは、いつもそんな心のこもった迎え方をしてくれる。
ご主人も純朴で寡黙な分、とかく誤解を受けやすいが、根はとても気持ちのいいナイスガイである。いまはすっかり成長してキャンプ場の手伝いをする余裕はないようだが、ふたりの可愛いお嬢さんたちもぼくたちはよく知っている。

■ うるさいルイのおかげでウエットにならずにすむ
初日のキャンプ場は電源なしサイトのテント泊がほかに1組、ロッジに1組だけだった。ぼくたちも電源なしのサイトながら、電源サイトに隣接したサイトを選んだので、見わたすかぎりだれもいない。ちょっとした物音に反応するルイとのキャンプには理想的な環境だった。
ぼくだけあとになって気づいたのだが、このサイトはシェラと最後にキャンプをした電源サイトのとなりだった。なんだか、このキャンプ場にきたのも、そして、となりのサイトを選んだのも、すべてシェラの意志が働いたような気がしてならなかった。
2年前の9月をしのんでまたしてもメソメソしてしまいかねない状況ながら、設営をはじめてすぐに騒ぎはじめたルイのおかげでウエットになどなっている余裕はなかった。キャンプデビューのときから、ルイはテントのポールが怖いらしく、ぼくが設営をはじめると狂ったように吠えはじめるのである。今回も例外ではなかった。
しかたなく、はるか遠く、そう100メートルほど先で物陰でこちらのサイトが見えない位置にしばりつけてからの設営となった。ぼくたちの姿がみえなくなればおとなしくしている。
シェラはテントをたてはじめると、「早くしてよ!」とばかり吠えてぼくを煽った。早くテントの中に入りたいからだ。ルイくらいのころから、テントの中でまったりしているのが大好きな子だった。むぎのほうは、キャンプとなるとシェラの横から離れ、テントから半身を外に出して番犬となっていた。
ルイがどんなキャンプ犬になっていくか楽しみだが、いまのところ邪魔ばかりしている。ただ、外につないだままにしておいても、テントの中に入りたがらないので、この特質だけは失わないでほしいと思う。
初日、設営が終わり、買いものに出かけてからが、次の波乱を迎えることになるが、以下は、別途エントリーをたててのレポートとしたい。