「ゲンチのモト」くだしゃい,オトウシャマ!

2000年09月04日 | アキラ
 タカシの「オドーサーン」に関連して申し添えると,アキラはオトウサンのことをオトーシャーンという。恐らく幼児園では,先生のことをシェンシェー!と呼んでいるに違いない。

 当方,音声学あるいは発声学に関する知識などは皆無につき以下は勝手な憶測であるが,このような言い方はいわゆる幼児語の遺存(すなわち発声器官の構造的未発達)に由来するものなのだろうか。あるいは,単なる発声法における当人の積極的な独自路線選択(すなわち標準語の軽視)の結果なのだろうか。どうも何となく後者のような気がする。

 歌人の塚本邦雄がジョルジュ・ブラッサンスの「R音」の耳に響く心地よさについて昔どっかに書いていたが,アキラが父に向かって発する「オトーシャーン」という呼びかけを聴くたびに,不肖バカ親としてはそれと似たような思いで心地よい気分になる。何だか「哺乳類の親子」にでもなったような気がしてくる(ん?) 恐らくアキラ自身の側でも,そんな風な言い方自体が気持ち良いんじゃなかろうか。

 しかし一方でワタクシの理性は,イヤイヤこんなことではイケナイ。来春からはアキラも小学校に通うことになるんだから,学校で辛い目に遭わないためにも,今から少しでも「標準語」の正しい発音を会得しておかねばならない,などと凡庸な判断に傾いてしまう。

 そのような次第で,父は時折アキラに向かって「サセシスセソサソ」と言ってごらん,などと語りかける。するとアキラは「シャシェシシュシェショシャショ」と少々もつれながら反復する。sa-si-su-se-soが sha-shi-shu-she-shoになっているわけで,やはり「サ行」を標準語として正しく発声出来ない。加えて「カ行」もかなり不安定で,キリンをチリン,ケンジ君をチェンジくんなどと言っている。こちらは,ka-ki-ku-ke-koではなくてca-chi-cu-che-coになっているようだ。

 はじめにロゴスありき。その場合のロゴスとは決して「標準語」ではないはずだが,やはり文部省準拠の初等教育においては「標準」から外れた者は「ダメ」のレッテルを貼られて無理矢理矯正される運命にあるのだろう。ここはひとつ優しい先生に「あたる」ことを願うしかないか。あるいは,親の側としても少しは勉強せねばならないか。それとも単に「お遊び」気分でヴォイス・トレーニングでもすればいいだけのことかな。

 しかし一方で,日頃しばしば父の仕事場に突如闖入してきて,直立不動の姿勢で

 「ゲンチのモト」くだしゃい,オトウシャマ! ピッ! (注)

 などと大声で言うアキラがこの先見られなくなるのは,それはそれで少々淋しい気もするのだが。


          (注) 標準語に訳すと次の通り:「元気の素」下さい,お父様! ピッ!
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