昨日の夕方,例によって父の仕事場に突然ドカドカと闖入してきたアキラは,一人勝手に本棚を物色したり,あるいはぶら下がり健康器で好き放題に遊んだりした後,やおら父に向かって次のようなことを問うた。
「ねー,オトーサン。ぼく,どこの大学に行くか決めたいんだけど.... どんな大学があるの?」
やや,これはまた何とも唐突な。
「そりゃまあ,いろんな種類の大学があるけど... ところで,アキラは大学で何をしたいのかな?」
「えーと,工作とか,ゲームを作ったりとか....」
ヲイヲイ,この子は基本的に『大学』ってぇものをゼンゼン理解していないゾ。小学校の課外授業じゃないんだからネ。あるいは子供科学館のワークショップでもないんだからネ。それとも何かな,少し前に世間で話題になった『ものつくり大学』なんかを一応はイメージしているのかな? 確か幼児園の年長さんの頃だったと思うが,将来の夢(あるいは将来なりたいもの)を聞かれたアキラは『ゲームを作る人』などとどっかに書いていた。その時の夢と希望を未だに引きずっている,もとい,育み温めているものとみえる。しかし,ここはひとつキビシイ現実というものも少しは知らしめておかねばならない。
「でもね,アキラ。ゲームが大好きで毎日毎日ゲームばっかりやってるからって,それでゲームを作る人になれるわけじゃないよ。ゲームを作る人になるには,国語とか算数とかの勉強を今からしっかりやっておかなくちゃいけないんだよ。だって,ゲームは作文なんだし,ゲームは計算なんだからね。いいゲームってものは,しっかりした作文としっかりした計算が出来ないと作れないんだよ。」
「???」
父の少々舌足らずの言葉にアキラはどうやら煙に巻かれたものとみえ,返す言葉が見付からないようであった。そしてしばしの沈黙ののち,こんどはこんなことをボソリと言った。
「そうだ,地図の大学にいきたいな。」
あれまぁ,こりゃまた何ともタノモシイことを言ってくれるじゃないか! たとえ気紛れの一言であったとしても,父はとても嬉しいよ。そっち方面であれば,幾らでもバックアップを惜しまないゾ。
「うん,その線はいいね! とてもいいね!」
誉め言葉を返されてアキラも満更ではなさそうである。そして父子共々,つかのまシアワセの共感に満ち足りた時を過ごした。しかしここでも再び,キビシイ現実が頭をもたげてしまう(どうも性分でして)。
「でもね,アキラ。地図のことを勉強するには,家の中で地図を眺めてるばかりじゃだめだよ。それといっしょに,家の外に出て,まわりの景色を見渡して,観察して,それから,いろんなところにどんどん出掛けていって,知らない土地をたくさん歩いたりしなくちゃいけないんだよ。だって,地図は世界なんだからね。自分の目でしっかり見なければ,地図を知ることも,世界を知ることも出来ないんだよ。」
「?????」
おっとっと,またもや固まってしまったようだ。イカンイカン。どうもアキラには説教じみた言い方はしばしば逆効果となる。それは重々承知しているんだけれども,ついついポロリと口に出してしまう未熟な父である(いえ性分でして)。
それにしてもアキラ君! キミはいつになったら自転車に乗ろうという気になるのだろうかねぇ?
「ねー,オトーサン。ぼく,どこの大学に行くか決めたいんだけど.... どんな大学があるの?」
やや,これはまた何とも唐突な。
「そりゃまあ,いろんな種類の大学があるけど... ところで,アキラは大学で何をしたいのかな?」
「えーと,工作とか,ゲームを作ったりとか....」
ヲイヲイ,この子は基本的に『大学』ってぇものをゼンゼン理解していないゾ。小学校の課外授業じゃないんだからネ。あるいは子供科学館のワークショップでもないんだからネ。それとも何かな,少し前に世間で話題になった『ものつくり大学』なんかを一応はイメージしているのかな? 確か幼児園の年長さんの頃だったと思うが,将来の夢(あるいは将来なりたいもの)を聞かれたアキラは『ゲームを作る人』などとどっかに書いていた。その時の夢と希望を未だに引きずっている,もとい,育み温めているものとみえる。しかし,ここはひとつキビシイ現実というものも少しは知らしめておかねばならない。
「でもね,アキラ。ゲームが大好きで毎日毎日ゲームばっかりやってるからって,それでゲームを作る人になれるわけじゃないよ。ゲームを作る人になるには,国語とか算数とかの勉強を今からしっかりやっておかなくちゃいけないんだよ。だって,ゲームは作文なんだし,ゲームは計算なんだからね。いいゲームってものは,しっかりした作文としっかりした計算が出来ないと作れないんだよ。」
「???」
父の少々舌足らずの言葉にアキラはどうやら煙に巻かれたものとみえ,返す言葉が見付からないようであった。そしてしばしの沈黙ののち,こんどはこんなことをボソリと言った。
「そうだ,地図の大学にいきたいな。」
あれまぁ,こりゃまた何ともタノモシイことを言ってくれるじゃないか! たとえ気紛れの一言であったとしても,父はとても嬉しいよ。そっち方面であれば,幾らでもバックアップを惜しまないゾ。
「うん,その線はいいね! とてもいいね!」
誉め言葉を返されてアキラも満更ではなさそうである。そして父子共々,つかのまシアワセの共感に満ち足りた時を過ごした。しかしここでも再び,キビシイ現実が頭をもたげてしまう(どうも性分でして)。
「でもね,アキラ。地図のことを勉強するには,家の中で地図を眺めてるばかりじゃだめだよ。それといっしょに,家の外に出て,まわりの景色を見渡して,観察して,それから,いろんなところにどんどん出掛けていって,知らない土地をたくさん歩いたりしなくちゃいけないんだよ。だって,地図は世界なんだからね。自分の目でしっかり見なければ,地図を知ることも,世界を知ることも出来ないんだよ。」
「?????」
おっとっと,またもや固まってしまったようだ。イカンイカン。どうもアキラには説教じみた言い方はしばしば逆効果となる。それは重々承知しているんだけれども,ついついポロリと口に出してしまう未熟な父である(いえ性分でして)。
それにしてもアキラ君! キミはいつになったら自転車に乗ろうという気になるのだろうかねぇ?