元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

就業規則の届出・労働者意見聴収をしなかった場合には・・・<就業規則作成等7>

2011-12-26 05:02:45 | 社会保険労務士
 手続き的には労基法違反ですが・・・

 前回、就業規則の作成や変更の手続きについては、労働基準法で明確に定められているとして、1 使用者の方で就業規則(案)を作成し、2 過半数労働組合または労働者代表の意見を聴収 3 正式な就業規則を決定の上 4 過半数労働組合または労働者代表の意見書を添付して 5 労基署への届け出とともに 6 労働者に対し周知をさせる ことになっているのは、申し述べたところです。(労基法89条、90条、106条)

 しかしながら、就業規則に労働者を拘束するためには、すなわち、就業規則が効力をもつためには、(1)「合理的な労働条件が定められている就業規則」であること (2)「就業規則を労働者に周知させていた」として、合理的な内容の就業規則は、もちろんであるが、上記の手続的には、6の「労働者への周知」の措置をとれば、可能ということになります。

 では、5の労基署への届け出 2・5の労働組合の意見を聞いていない場合は、どうなるのであろうか。届け出や労働組合の意見聴収は、これを怠れば、行政取締法違反として、公法上の違反となり、労基法条の罰則の規定があり、30万以下の罰金が科されることになっています。しかしながら、就業規則は届け出をもって、労働者拘束の効力発生要件としているのではなく、労働条件を労働者へ「周知すること」によって、法律的な規範が生じるものであり、そこから従業員を拘束するものであって、ここで届け出は要件とはされていません。結局、労基法の手続き違反であって、民事上の労働者に対する効力を持たないということではありません。

 届け出については、裁判では、就業規則は「届出未済であったことは認められるけれども、無届ないし届出未了の就業規則は、刑事上の責任は別論として、これを無効しすべきではない。」(昭和24年山形地裁山形新聞事件)としています。

 また、労働組合の意見聴収については、意見をきけばいいのであって、労働組合との合意は要件とはなっておらず、もともと就業規則は使用者が一方的に作成し、変更する権限を持っているものであって、意見聴収をしていないことをもって、就業規則の効力が否定されることにはならないものです。裁判でも「適用労働者への意見聴収がなされていないというが、この手続きの欠如についても、効力発生要件ではないことはその法的性格から明らか」であるとしているところです。(昭和51年神戸地裁、関西弘済整備事件)

 しかし、実務的な手続きにおいては、単に意見を聞けばいいというものではなく、意見を聞く過程において、よりよいこなれた、労働者側との合意形成そのもの、それがなくてもそれに近いものが、築き上げられるか、そうでなければ、使用者側の意図を十分説明するなどして労働者側の理解を図ることが必要となるなど、そこにこの労基法は期待しているのではないかと考えるところです。

 いずれにしても、再度、結論的に申し上げると、就業規則の効力には影響を与えないというのは、手続きを踏まなかった場合の議論であって、あくまでも労基法の手続き違反ですので、30万円の罰金も用意されていますので、労働者とのスムーズな運営のためにも、この手続きとしての、労働者組合の意見聴収と労基署への届け出は必ず行いましょう。
  

 (参考)安西愈著 前改定労働基準法のポイント(厚友出版)
     大内伸哉著 就業規則からみた労働法(日本法令)


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