「所定労働時間みなし」は「当該所定労働時間を超えて労働するのが常に必要」となるのはダメ
テレワークの「みなし労働時間」については、16年通達<※1>が出てからより認められやすくなりました。しかし、このことにからみ、労働者からは、今まで残業して残業代が手当が出ていたのに、テレワークになった途端に残業代が出なくなったとの声があるようですが、適正なテレワークがなされることを前提とすれば、そんなことは、あり得ないと言えます。
<※1>平成16年2月5日京労発基35号 ガイドライン平成20年7月28日姫基発0728001号も参照
⇒<テレワーク「みなし労働時間」の要件>
「労基法第38条の2(1項本文) 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす。」とあり、確かに、所定労働時間(従業規則に定める一日の労働時間、ここでは法定労働時間に準じて8時間とする。)は一日8時間とすれば、8時間労働したものとされることになり、残業時間はないことになる。
しかし、頭書にあるように、コンスタントに残業しなければならないような仕事量だとしても、「8時間みなし」となってしまうのでしょうか。 同じ労基法38条の2 1項の「但し書き」では、”当該業務を遂行するためには、通常「所定労働時間」を超えて労働することが必要となる場合においては、この当該業務に通常必要とされる時間(通常必要労働時間)労働したものとみなす” となっています。
この通常必要労働時間とは、同じ業務であっても、人や時期等状況により必要な労働時間は異なりますので、事業場外労働の実際に必要とされる時間の平均的な時間とされています。一般的にいって、とびぬけてその人が効率が悪くない限り、テレワークを行うその職場において、どの人も残業しなければいかないような現場であるとすれば、労基法本文にある「所定労働時間」とみなすというのではなくて、「但し書き」である所定労働時間(説明上、法定労働時間8時間と同じ8時間が所定労働時間と仮定)を超えた「通常必要労働時間」であることになります。したがって、残業代は当然出さなければいけないことになります。
そうしないため、「所定労働時間みなし」とするには、仕事量を減らすなり、労働者を増やすなりして、平均的な労働時間にならすことしかないことになります。
しかし、この通常必要労働時間は、理論的にはその必要な時間はことばで言えても、なかなか状況によりいくらと具体的には割り出すことは困難なため、「労基法第38条の2・2項 労使協定が締結されているときは、その協定により”事業場外の業務の遂行に通常必要とする時間として定めている時間”(第2の通常必要労働時間)」されています。すなわち、この第2の「通常必要労働時間」にあっては、業務内容をよく知っている労働者と使用者の間で、どれくらいの時間が必要かを協議して決めていくこと(労使協定)ができることになっているのです。したがって、この協定があるときは、この「第2の通常必要労働時間」が労働時間となるのです。
いずれにしても、「所定労働時間みなし」はその所定労働時間で収まる労働時間の場合にいえることであって、その所定労働時間内におさまらない場合は、その労働時間は当該「通常必要労働時間」であって、残業代は出さなければならないのです。
よくある一般的な就業規則「外勤、出張その他会社外で就業する場合で、労働時間を算定しがたい場合は、所定労働時間就業したものとみなす」という規定に基づいて、テレワークも同様に所定労働時間就業したということになるという使用者がいるかもしれません。しかし、労基法38条の2の但し書きで所定労働時間が超える場合の「通常必要労働時間」の規定がある以上、その主張は通りません。就業規則が労働基準法という法律を超えることはないからです。そのため、この就業規則の規定では不十分と言わざるを得ません。確かに、規定どおり「所定労働時間」で収まる場合はそれでといいのですが・・・
それならどうするか。就業規則の中に、当該 「所定労働時間みなす」規定の他に、労基法38条の2但し書き「(第1)通常必要労働時間」の規定、さらには、必要ならば同第2項の「第2の通常必要労働時間」の規定を加えなければならず(就業規則の変更)、「第2の通常必要労働時間」のためには、労使協定も必要になってきます。<※2>
また、この就業規則の変更のためには、使用者と労働組合または労働者の過半数代表者の「意見を聴かなければならず」、少なくとも労働者側が知らなかったでは済まされないのです。労働組合又は労働者代表からちゃんと個々の労働者にも就業規則の周知を図ることが求められます。頭書にあるように、個々の労働者が知らないというのは避けなければならないのです。
<※2>さらに、通常必要時間が法定の原則一日8時間・週40時間を超えるときは監督署への届け出が必要
・参考 就業規則例
第×条 社員が、労働者時間の全部又は一部について、事業場外で労働した場合(第△条に規定するテレワークを含む。)であって、労働時間を算定することが困難な業務に従事したときは、就業規則第〇条に規定する所定労働時間を労働したものとみなす。
2 前項の事業場外の業務を遂行するために、所定労働時間を超えて労働することが必要な場合には、その業務については通常必要とされる時間労働したものとみなす。
3 労働基準法第38条の2第2項に基づく労使協定が締結された場合には、前項の事業場外に遂行に通常必要とされる時間は、労使協定で定める時間とする。
テレワークの「みなし労働時間」については、16年通達<※1>が出てからより認められやすくなりました。しかし、このことにからみ、労働者からは、今まで残業して残業代が手当が出ていたのに、テレワークになった途端に残業代が出なくなったとの声があるようですが、適正なテレワークがなされることを前提とすれば、そんなことは、あり得ないと言えます。
<※1>平成16年2月5日京労発基35号 ガイドライン平成20年7月28日姫基発0728001号も参照
⇒<テレワーク「みなし労働時間」の要件>
「労基法第38条の2(1項本文) 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす。」とあり、確かに、所定労働時間(従業規則に定める一日の労働時間、ここでは法定労働時間に準じて8時間とする。)は一日8時間とすれば、8時間労働したものとされることになり、残業時間はないことになる。
しかし、頭書にあるように、コンスタントに残業しなければならないような仕事量だとしても、「8時間みなし」となってしまうのでしょうか。 同じ労基法38条の2 1項の「但し書き」では、”当該業務を遂行するためには、通常「所定労働時間」を超えて労働することが必要となる場合においては、この当該業務に通常必要とされる時間(通常必要労働時間)労働したものとみなす” となっています。
この通常必要労働時間とは、同じ業務であっても、人や時期等状況により必要な労働時間は異なりますので、事業場外労働の実際に必要とされる時間の平均的な時間とされています。一般的にいって、とびぬけてその人が効率が悪くない限り、テレワークを行うその職場において、どの人も残業しなければいかないような現場であるとすれば、労基法本文にある「所定労働時間」とみなすというのではなくて、「但し書き」である所定労働時間(説明上、法定労働時間8時間と同じ8時間が所定労働時間と仮定)を超えた「通常必要労働時間」であることになります。したがって、残業代は当然出さなければいけないことになります。
そうしないため、「所定労働時間みなし」とするには、仕事量を減らすなり、労働者を増やすなりして、平均的な労働時間にならすことしかないことになります。
しかし、この通常必要労働時間は、理論的にはその必要な時間はことばで言えても、なかなか状況によりいくらと具体的には割り出すことは困難なため、「労基法第38条の2・2項 労使協定が締結されているときは、その協定により”事業場外の業務の遂行に通常必要とする時間として定めている時間”(第2の通常必要労働時間)」されています。すなわち、この第2の「通常必要労働時間」にあっては、業務内容をよく知っている労働者と使用者の間で、どれくらいの時間が必要かを協議して決めていくこと(労使協定)ができることになっているのです。したがって、この協定があるときは、この「第2の通常必要労働時間」が労働時間となるのです。
いずれにしても、「所定労働時間みなし」はその所定労働時間で収まる労働時間の場合にいえることであって、その所定労働時間内におさまらない場合は、その労働時間は当該「通常必要労働時間」であって、残業代は出さなければならないのです。
よくある一般的な就業規則「外勤、出張その他会社外で就業する場合で、労働時間を算定しがたい場合は、所定労働時間就業したものとみなす」という規定に基づいて、テレワークも同様に所定労働時間就業したということになるという使用者がいるかもしれません。しかし、労基法38条の2の但し書きで所定労働時間が超える場合の「通常必要労働時間」の規定がある以上、その主張は通りません。就業規則が労働基準法という法律を超えることはないからです。そのため、この就業規則の規定では不十分と言わざるを得ません。確かに、規定どおり「所定労働時間」で収まる場合はそれでといいのですが・・・
それならどうするか。就業規則の中に、当該 「所定労働時間みなす」規定の他に、労基法38条の2但し書き「(第1)通常必要労働時間」の規定、さらには、必要ならば同第2項の「第2の通常必要労働時間」の規定を加えなければならず(就業規則の変更)、「第2の通常必要労働時間」のためには、労使協定も必要になってきます。<※2>
また、この就業規則の変更のためには、使用者と労働組合または労働者の過半数代表者の「意見を聴かなければならず」、少なくとも労働者側が知らなかったでは済まされないのです。労働組合又は労働者代表からちゃんと個々の労働者にも就業規則の周知を図ることが求められます。頭書にあるように、個々の労働者が知らないというのは避けなければならないのです。
<※2>さらに、通常必要時間が法定の原則一日8時間・週40時間を超えるときは監督署への届け出が必要
・参考 就業規則例
第×条 社員が、労働者時間の全部又は一部について、事業場外で労働した場合(第△条に規定するテレワークを含む。)であって、労働時間を算定することが困難な業務に従事したときは、就業規則第〇条に規定する所定労働時間を労働したものとみなす。
2 前項の事業場外の業務を遂行するために、所定労働時間を超えて労働することが必要な場合には、その業務については通常必要とされる時間労働したものとみなす。
3 労働基準法第38条の2第2項に基づく労使協定が締結された場合には、前項の事業場外に遂行に通常必要とされる時間は、労使協定で定める時間とする。