元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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有期労働契約5年超の無期転換ルールの周知<27年度労働契約等解説セミナーの無料開催=国の本腰>

2016-02-21 14:16:39 | 社会保険労務士
 新人入職時期の繰下げ⇒そのまま入職させ休職手当の支給か、内定者との合意により時期の繰下・同手当支給なしも可

 労働契約法は、雇用される「労働者」と雇用するほうの「使用者」をつなぐルールとして、平成20年3月に施行された新しい法律です。

 労働基準法があるじゃないのと言う方もいるかもしれませんが、この法律は、主に使用者に「・・・してはならない」として、使用者に義務を求めることにより、労働者の最低の労働条件等を守られせる法律です。それを担保するものとして、労働基準監督署等の行政機関があり、罰則が設けられおり、いわゆる法分野としては、どちらかというと行政法に位置する法律です。

 これに対して、労働契約法は、労働者と使用者の私的な関係の間で、契約する=労働契約に関しての法律です。もちろん、この私的な関係を規定するものとして、民法があり、雇用契約として、規定されているところではありますが、民法は、労働者、使用者とも対等な関係において契約を結ぶのが前提とされておりまして、一般に契約においては、実質的には、使用者が優位に立つことが多く、裁判等によってその解釈等が変更されてきました。

 そこで、民法に対する特別法として、新たに平成20年3月に、裁判によって確立された法理を含めて労働契約法として、条文化したものがこの法律でして、さらに平成24年月に改正法が成立し、これらを併せて、十分とはいえませんが、労働法の法律としての体裁を整えてきたところです。

 そこで、国としては、労働者、使用者双方にこの労働契約法の周知を徹底するため、平成27年度においても、無料で全国各地で「労働契約等解説セミナー」を開催。特に、同一の使用者との有期の労働契約が5年を超えて繰り返し更新された場合、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換するという「無転換ルール」により、労働者のこの申し込みの権利が平成30年4月以降、多く発生すること(この条文の施行が平成25年4月になっているため、これにより契約した有期の労働契約が5年経過するのが、ちょうど平成30年4月になる。)が予想されることから、労働者・使用者双方ともこのルールを正しく理解して、円滑な無期転換を進めなければならないためか、この混乱を避けるために、国としても本腰を入れて行っているようです。

 前置きが長くなりましたが、宮崎でも労働契約等解説セミナーが開催されましたので、私も参加させていただきました。教科書は、次のような表題で、ばりっとしたもので1冊にまとまって整理されています。

 労働契約等解説セミナー 安心して働くためのルール ~使用者と労働者の約束事=「労働契約」とは(平成27年度厚生労働者委託事業)

 次はその中から、Q&Aとして取り上げられたものです。<使用者>ありうるけど、よくあるケースでもなく、<労働者>あったら困るケースとして、実際あったらどうするのかということで、この教科書の中からそのまま掲載します。

 【入職時期の繰下げ】に関する労働相談
 使用者からのQuestion
  4月1日付けで採用を予定する者について、自宅待機させるか、入社日自体を延期したいと考えていますが、その場合に労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。


 Answer
採用内定の際に予定されていた入社日に入社させた上で、実際には就業させず自宅待機を命じた場合には、当該自宅待機は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たらない天災事変等不可抗力の場合を除き、労働基準法第26条に定める休業手当を払う必要があります。
  ここで、不可抗力とは、(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること (2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

   *注意しなければならないのは、経営障害の材料不足、輸出不振、資金難、不況であっても、
    不可抗力には該当せず、不可抗力の意味は非常に狭く解されています。

  また、採用内定の際に定められていた入社日自体を延期する措置(入社日の延期)を行う場合は、採用内定者への十分な同意を得る必要があり、これを行わないまま入社日の延期をすることはできません。
  
   *採用内定は、一般には労働契約は成立しており、働いてもらう時期が先になる
   (始期付き解約権留保付き労働契約)というだけであり、契約変更は採用内定者
    との同意が必要(労働契約法第8条)

  同意を得て入社日を変更した場合でも、採用内定者の不利益をできるだけ回避するため、延期期間はできるだけ短くするよう努めていただくことが望まれます。
 
 なお、新規学校卒業者の入職時期繰り下げを行おうとする場合は、所定の様式により、必ずハローワーク及び学校に通知することが必要になります。

 *の部分は、筆者の追加部分

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